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「特定非営利活動法人あめんど」恒松勇さん KON-KON! おじゃまします(5)

まちスポ大津スタッフが今聞きたい人にインタビューをする“とびだす!KON-KONおじゃまします”!2022年度から開始した活動の、取材先第5号を掲載します。
2022年11月18日(金)から12月3日(土)まちづくりスポット大津でフードドライブを実施しました。今回のインタビューは、フードドライブで集まった食品等の寄付先としてお声がけをさせていただいたNPO法人あめんどの恒松勇さんに、活動をはじめられた経緯や今後取り組みたいと思われていることについてお話を伺いました。(以下、敬称略)
※2022年11月11日にお話を伺いました。


あめんどのはじまりとあゆみ

まちスポ:今回、まちスポ大津のフードドライブで集まったものをお渡しするにあたって、HP等を拝見しましたが、様々な事業をされていますね。
恒松:はい。今、色々広がっていますが、あめんどの活動は全て、目の前にいるその人に対して何ができるか、からスタートします。出会ってしまったら、何とか助けられたらと思ってしまうのです。これまでの事業もそこから生まれてきました。

インタビュー風景 恒松さん(左)


まちスポ:なるほど。すごく大切な視点ですね。活動をはじめられたきっかけを教えていただけますか。
恒松:2004年に、あめんど保育園(認可外保育園)を開所しました。その時にしかない親と子の関わり合いの時間を、大切に過ごせるよう手づくりの保育園をつくりたかったのです。2005年にはフリースクールも併設して子どもたちは外国人を含め30人程集まりました。母国に帰る予定のある子どもたちには、学習内容と到達目標をカスタマイズしていました。子どもたちの中には発達障害の子もいて、後の活動につながっていきました。
2011年にNPO法人格を取得し、NPO法人あめんどとなり、学校になじみにくい子どもの居場所を用意してきました。その中で、不登校にはいじめや貧困、発達障害など様々な要因を抱えている子どもたちがいて、彼らが地域の関わりの中で育っていけばいいなと思いました。親も子どもについて学ぶ、子どももみんなで学ぶ、親子の学び舎として今に至っています。
私個人と家族の状況としては、海外在住時に子育てを経験し、日本に戻ったのは娘がちょうど小学1年生の時でした。海外での生活になじんでいた娘は「みんなと一緒でないとだめ」という日本の小学校のルールや生活に窮屈さを感じ、「海外のような自分で自由に選択できるスクールに行きたい」と自ら不登校を選択しました。子どもの能力は、物理的、精神的、そして人的環境の3つの安心を土台に培われていくと思います。私は、娘が選んだ道を応援しようと思いました。そしてフリースクールをつくり、娘は小学3年生から、フリースクールで学び始めました。

ワイライトステイの受け入れも

恒松:あめんどの事業としてはその後、大津市で若者の居場所づくりをされているNPO法人こどもソーシャルワークセンター(以下、CSW)が子どもの夜間の居場所づくり事業トワイライトステイをスタートされ、代表幸重さんは、事業の拠点を増やしたいと話しておられました。当法人代表がCSWに見学に行ったところ、「出会ってしまった。見て見ぬふりはできない」と。あめんどでもその活動を始めました。これらの出会いによって、子どもたちの生活と私たちの活動とは相互に働き合い広がってきました。
トワイライトステイでは、大津市担当課と連携し、貧困や虐待の環境にある子どもを受け入れ、安心して過ごせる場所を提供してきました。現在は、フリースクール、子どもの居場所づくり事業(昼の部・夜の部)、若者就労準備支援をうまく組み合わせて居場所づくりの工夫をしています。

夜の子どもの居場所づくり活動の様子

元々、私たちの活動は制度のはざまにある子どもを支援するために始まりました。制度にない、制度では届かない分野の支援に対して、利用できる資源を生かして用いる柔軟な姿勢と仕組みがあったらいいなと思います。

お寿司屋さんでのわくわく体験

まちスポ:お寿司屋と連携した取り組みもされていますね。
恒松:はい。「すしっこクラブ」は、普段ひとりでご飯を食べることの多い子どもたちが、職人が作るお寿司を食べながら会話を楽しむ時間となっています。すしっこクラブをしてもらっているお寿司屋さんに初めて食事に行ったとき、大将から課題のある子どもたちに自分ができることしたいと相談を受けて、5時間話し込みました。
大将は子どもとの関わり方がうまく、料理にも力を入れて下さってとても有難いのですが、そうすると一人当たりの単価もどんどん上がります。そこで子ども食堂還元メニューの手巻き寿司を販売し、売上の一部をすしっこクラブの活動にあてて運営しています。

屋外ではみんなでバドミントン!

課題に感じていることは?

まちスポ:最近気になっていることや課題に感じていることはありますか?
恒松:事業運営では、送迎の問題は難しいです。徒歩や親の送迎で来る子どもたちはいいのですが、遠方や自転車に乗れない等の事情を抱える子どももいます。トワイライトステイは終了時間が遅いので送迎が必要になるのですが、人手が取られて活動が手薄になってしまいます。
また、支援者の若手不足も問題です。今、有給スタッフが1名いますが、こういう仕事がしたいという若者に対して生活や将来が保障された働き方ではないと感じています。
そして、長年不登校を経験している子どもの学習支援をどうすればよいのか悩んでいます。ある意味、学習意欲や積み重ねの面から塾が勉強を教えるより難しいと思っています。彼らが中2,3年生になるとほとんど全ての児童が高校進学を希望します。塾では学習を指導しますが、私たちは、学習を含む生活面、その子の将来に焦点を当てて指導します。
塾に比べて学習支援は安く評価されている、子どもたちの現状を変える学習支援の価値が見えていないことに課題を感じています。
まちスポ:支援者の役割や学習支援の意義が明確になると、社会的な位置づけも確立されてきますが、現状まだ見えづらい部分ですね。では、今後について考えられていることはありますか?

あめんどのこれからについて

恒松:「一人前シェアリング」という名前で3つやりたいことがあります。1つ目は、“3個1就労”という働き方です。ひきこもりの若者は1人では1人前に働くことが難しく就労待機となる場合があります。社会的には、0.3人前の働きができる1人でも1人前で働くことができないと0とカウントされてしまうのです。“3個1就労”は、0.3人前×3人を一組として3人ユニットで働くという方法です。給与は0.3人分ですが、働いてお金を稼ぐことは本人たちの自信にもつながります。
2つ目は「商品化ラボ」の仕組みをつくりたいと思っています。世の中には絵が得意な人はたくさんいます。自分自身が出て行けなくても作品を世に作品を送り出して自分を表現できます。その作品を商品化することで彼らの自己肯定感を高めることができると思います。そのためには彼らをプロモートできる協力者が必要です。
3つ目は、利用者たちによる“ボードゲームカフェ”の経営です。自分たちが出ていくのではなく人々を招き入れて少しずつ社会と関わっていく居場所です。

年に1度は堂山(大津市田上)に登ります

社会について考えた時、音楽やアート、飲食業が前面に出て、福祉的な活動はBGMとして当たり前に社会全体と溶け込んだ様子をイメージしたいです。楽しいイベント活動に引き締まったスパイスを加え、コクと深みを増す、doingの背後にあるbeingとして役割があるのではないかと。
まちスポ:今日は盛りだくさんの貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。これからの取り組みについて、素敵な考え方だと思います。まちスポ大津と連携できそうなことがありそうですね。今後ともよろしくお願いします!

駄菓子屋パトロールで地域と繋がる活動をしています

2022年11月11日にお話を伺いました。
※写真提供 NPO法人あめんど
 

👉Keyword!フリースクールとは?

既成の学校教育制度の外にあり、子どもの自由・自主性・個人差などに配慮し、児童・生徒中心の教育を行う学校形態の総称。フリースクルールの定義は多義的で、広義には、不登校の児童・生徒を受け入れるさまざまな機関・団体も含まれます。
各学校と連携して、フリースクールへの登校を出席として扱うケースもあります。

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