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「ひなしゅしゅ」KON-KON! おじゃまします(4)

まちスポ大津スタッフが今聞きたい人にインタビューをする“とびだす!KON-KONおじゃまします”!2022年度から開始した活動の、取材先第3号を掲載します。
10月8日ハッシュタグ大津京シェアスペースで“外に出ることを助ける服”の販売と展示イベントがありました。今回は、イベントを主催された、「ひなしゅしゅ」の松崎雛乃さんに、外に出ることを助ける服 って?活動の原動力は?などについてお話を伺いました。(以下、敬称略)
※2022年9月27日にお話を伺いました。


活動をはじめられたきっかけは?

松崎:食料品松崎:京都芸術大学空間演出デザイン学科ファッションデザインコースに通っていた3回生の頃、先生に、「世の中には服があふれている。それなのになぜ自分は服を作るのか、その意味を考えて作らないと、服は無駄になってしまう」と言われました。その時に考えたことが、“服でひきこもった人を助けたい”でした。

ぬいぐるみを組み込んだ洋服を考案した松崎さん

私は17歳の時から3年間ひきこもった時期がありました。その時、服がきっかけで外に出ることができたのです。ひきこもる前までの私は周りの目を気にするタイプで、服も周囲からの意見に合わせて選んでいました。
でも、ひきこもっている時期は周囲の目を気にすることもないので、本当に自分が着たい服を通販で選び、買ってみました。その服を着た時にはじめて、「好きな服を着た自分を見てほしい!」と思いました。そこから少しずつ外に出るようになりました。
まちスポ:自分が本当に着たい服を着て、外に出たいと思ったことがひなしゅしゅの活動のはじまりなのですね。
松崎:そうです。こういうことがしたい!というのが見つかると、自己肯定感もあがっていきました。

活動について教えてください

まちスポ:ご自身の経験が活動に繋がっていることがよく伝わってきました。では現在の活動について教えてください。
松崎:今は、“外に出ることを助ける服”を制作し、販売、展示イベントを開催しています。“外に出ることを助ける服”とは、外で不安になった時、ポケットに手を突っ込むふりをしてこっそりぬいぐるみと手をつなぐことができる洋服のことです。今はパーカーとワンピースの2種類を制作しています。ぬいぐるみ部分はひきこもり当事者の方や生きづらさを抱える若者が制作をしているものを販売し、利益は当事者の方にお渡ししています。

いろいろな形のぬいぐるみがあります

外にでるきっかけ、就労のきっかけ、社会参加のきっかけ、自分も誰かの役に立つという当たり前のことに気づくきかっけ、様々なきっかけを持っているのが“外に出ることを助ける服”です。
まちスポ:いろんな思いが込められた服だと改めて感じました。

活動をどんな方に届けたいですか

まちスポ:どんな方に着てもらいたいですか?
松崎:ひきこもっている状態っていろんな段階があるのですが、“外に出ることを助ける服”は、服を選ぶのもしんどい、お風呂に入るのもしんどい、という方がこれ一枚着たらOKと思えるような服を作ろうと考えていました。なので、自分で服を選べるようになったら、自分が好きな服を着たらOK、そう思っています。

デザインができあがるまで

まちスポ:デザインも松崎さんが考えられたのですか?
松崎:もともとぬいぐるみが好きだったので、服とぬいぐるみの親和性は感じていました。“外に出ることを助ける服”は、今はパーカーのポケットの中にぬいぐるみが隠れていますが、初めは見えていました。どんなデザインだとより手に取りやすいか、当事者の方の声を聞く前のことです。ここでまた大学在学時の先生の言葉に気づきをもらうのですが、「自分が経験しているからといって、それは全員の総意ではない」と言われたことがあります。
ひきこもりの原因は様々ですが、やはりせっかく作るのであれば、当事者の声がいかされたものがよいと思い、ネットで検索をして大津市社会福祉協議会(社協)とつながりました。
そこから社協の方に相談し、アンケートを作成して、手触りやデザイン等簡単な項目で当事者の方にアンケートを取りました。回答から、デザイン性の高いものや奇抜なものより動きやすさが重要なこと、手汗をかく人がいるのでぬいぐるみはよく汗を吸うタオル地がよいこと、パーカーの色は何でも合わせやすいグレーが使いやすいこと等、声を反映したデザインが決まっていきました。
また、販売をスタートすると購入者の9割が女性だったので、下に履くものを選ばなくてもよいように、ワンピースも作ることになりました。

ポケットの中にぬいぐるみが隠れている

今後について考えていること

白井:当事者の声がしっかりと反映されている服なのですね。思いを形にするために、ひとつひとつ丁寧に取り組まれていることが伝わってきました。活動を続ける中で感じておられることや今後について考えていることはありますか?
松崎:今もぬいぐるみの作り手としてひきこもり当事者の方に関わってもらっているのですが、いずれはひなしゅしゅの活動全てに多くの人に関わってもらいたいと思っています。作り手、販売する人、展示会の運営など。その方が私も助かるし、ひきこもった経験がプラスになることを感じてもらいたいと思っています。お客さんとの関わりや服の商品化では、当事者の視点が絶対にいかされると思うので。
関わり方も、ちょっと参加してみる、展示会でしっかり販売してみるなど、色んな段階があったらいいなと思っています。ひなしゅしゅの活動を通して、好きなものを好きといえるようになってほしいと思います。
私は、自分が活動を続けることで“服と福祉”をつなげ、服がアリならこれもいけるんじゃない?という支援の可能性を広げたいと思っています。支援は選択肢を増やすことだと思います。そして選択肢は、新しいものを生み出さなくてもそこにあるものやすでに持っているものがきっかけで増やすことができると思います。
自分で選択して踏み出すスタートラインに立つことを、私は応援したいと思っています。
まちスポ:服と福祉をつなげ、支援の選択肢として考えられているところがとても素敵です。他のキーワードで支援の選択肢が出てきてほしいですね。
10月8日(土)にはハッシュタグ大津京シェアスペースで展示会と販売を実施されました。この場所でされた思いを伺えますか。

トートバックなども展示された

松崎:ハッシュタグ大津京のシェアスペースは、展示会がしたいと探しているときにたまたま見つけました。そのコンセプトが、私が思い描いていたものとぴったりで、すぐに予約を取りました。展示会の機会を通じて、ブランチ大津京に買い物に来た人など、“外に出ることを助ける服”に今まで接点がなかった方に興味をもってもらえたら嬉しいです。

2022年9月27日にお話を伺いました。
※写真提供 ひなしゅしゅ 松崎雛乃さん
 

👉Keyword!ひきこもり支援の現状とは?

ひきこもりに特化した専門的な相談窓口として、各都道府県及び指定都市に「ひきこもり地域支援センター」の整備が進み、令和4年度からは、新たなメニューとして、ひきこもり支援の核となる相談支援・居場所づくり・ネットワークづくりを一体的に実施する「ひきこもり支援ステーション事業」が開始されています。

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