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「人生の大半を園生と過ごしてきた」勤続40年のスタッフたちが語る重症心身障害児(者)介護施設「一二三学園(ひふみがくえん)で働く魅力

まちだ丘の上病院に併設されている重症心身障害児(者)介護施設「一二三学園(ひふみがくえん)」。前編では、1960年に一二三学園が生まれ、今のかたちになるまでの歴史をお伝えしました。

この一二三学園の大きな特徴は、人生における長い時間をここで過ごしてきた園生(学園では入所者の方々のことを「園生」と呼んでいます)やスタッフがいること。

なかには、10歳の時に入所されて、56年間一二三学園で暮らしていらっしゃった方もいます。また、本日話を聞く学園長の北島は今年で勤続42年目、栄養士・書記の丸古は勤続46年目、介護士の菊名は勤続20年目と、スタッフもここで長い時間を過ごしてきました。

単なる入所者とスタッフという関係性を超え、ともに暮らし、ともに生きてきたスタッフと園生。

後編では園生に寄り添い続けてきたスタッフに、一二三学園で働く魅力ややりがい、日々の生活で大切にしていることについて語ってもらいました。

「よく食べ、よく出し、よく眠る」日々の暮らしを大切に

一二三学園では、日々の生活のなかである方針を大切にしていると言います。それは、気持ちよく食べ、気持ちよく排泄し、気持ちよく眠ること。そこに込められた想いについて、学園長の北島はこう語ります。

北島「たいしたことないように見えるかもしれませんが、結局はこの3つは『生きる』ことにつながっている。おなかがすかないと食べられないですし、食べられないと排泄も難しい。ある程度活動しなければ、気持ちよく寝れないですから。

園生には体が不自由で、お話をしたり、手足を動かしたりすることが難しい方もいらっしゃいます。だから、華やかな行事を毎日のように行うのはなかなか難しいんですね。でも、日々の暮らしを丁寧に送っていけば、それは豊かに生きることにつながると思っています」

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一二三学園 学園長 北島

利用者の方の日々の「生きる」を支える──。その方針に支えられ、おだやかであたたかい時間が流れる一二三学園での日常を介護士の菊名はこう表現します。

菊名「実習生がくると『一二三学園の職員は何でも喜びますね』って笑われるんです。おしっこがでたと喜び、うんちがでたって喜び、よく寝れたねって喜ぶって(笑)

でも、日々の生活がそうやって気持ちよくできるって、本来すごく素敵なことだと思うんです。利用者の方もよく寝れたり、よく食べれたり、そして排泄がうまくできると、どことなく誇らしげで。それを見て「すごいですね」と伝えると、笑顔を返してくれるんです。そんな姿を見ていると私たちも嬉しいですね」

みんなで時間を、そして人生を共有する場所でありたい

もうひとつ、一二三学園で大切にされてきたことがあります。それは「みんなで時間、そして人生をともに過ごす」こと。

北島「一二三学園では、みんなで一つのテーブルを囲んでごはんを食べています。開設当初からずっとそう。昔はね、みんなが食べ終わるまで立ち上がらずに、ほかの人を見ながら待っていて。本当に穏やかな時間だったなと思います。今は、交代制なのでみんなが食べ終わるのを待つのは難しいですが、みんなでテーブルを囲んで、同じ時間を過ごす。これは今でも大切にしています」

多くの時間を過ごすからこそ、園生一人ひとりの変化にも気づきやすくなるのではないかと菊名は言います。

菊名「一二三学園は職員も園生も少なくて。だからアットホームな雰囲気ですし、一人ひとりと過ごす時間もとても長いんですね。だから小さな変化でもすぐ気付けるんだと思います。自分の意志を言葉で伝えるのが難しい園生の方もいますが、それでも『今日は少し顔色ちがうね』『表情がちがうね』ってスタッフ同士で声をかけあって。過ごす時間が長い分、職員同士、そして職員と園生一人ひとりの結びつきはすごく濃いと感じています」

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副主任・介護士 菊名

仕事を「している」のではなく「させてもらっている」感覚

次に、多くの時間を一緒に過ごしてきた園生はスタッフにとってどのような存在なのかを聞いてみました。

北島「園生と一緒にいると『癒やされるなあ』と感じることが多いんです。ここにくると落ち着くんですよね。居場所があると思えるというか。私がここで仕事をしているのではなくて、園生の方に仕事を『させてもらっている』感覚です。

そんなことを思って働いているうちに、いつのまにか勤続40年を越えていました(笑)。幸せに働かせてもらって、ありがたいことですね」

また、菊名も北島と同じく園生と一緒にいると「癒やされる」「心があたたかくなる」感覚があると話します。

菊名「北島園長が言っていた『癒やされる』という感覚は私もすごくよくわかります。園生の方は明確に言葉でお話をされるわけではありませんが『あ、今心が通じた!』という瞬間があるんですよね。笑ってくれたり、表情がくるくると変わる時。ほっとするというか、心があたたかくなるんです。毎日、一二三学園に来て園生のみなさんに「おはよう」と挨拶をする。そうすると顔をみてわらってくれたり、こっちむいてくれたり。何かプライベートでいらいらすることがあっても、それだけでスッと消えてしまうくらい。何年つとめていても同じ感覚でいられるのはありがたいですね」

10歳で入所。56年間一二三学園で生きてきたある園生との思い出

実は、先日ある園生の方が一二三学園で亡くなったのだと言います。10歳のときに入所されて以来、56年間という長い時間を一二三学園で過ごされてきた方です。

北島「体の変形があり、ここ10年ほどは鼻からの経管栄養を行なっていました。でも、不満などをいわず、あるがままに受け入れる方で、みんなから愛されていました。今でも、他の園生が「〜〜ちゃんはどこにいるの?」と恋しがるほど、学園のなかで大きな存在でした」

そんな大きな存在を先日失い「心に大きな穴があいたような気がする」と話しながらも、北島は「最期の瞬間は園生や他のスタッフにとって穏やかで大切な時間になった」と振り返ります。

北島「最期まで園生やスタッフのみんなと一緒に時間を過ごしたんです。みんなでその方の部屋に集まって話しかけ、体に触れて。最後のお別れをしました。

『知らないうちにどこかに行ってしまった』ではなく、人生の最期の時間を園生とスタッフみんなで共有できたのは、これまで一緒にすごす時間を何よりも大切にしてきた一二三学園らしい時間だった思います。彼にとっても、そしてまわりのひとにとってもかけがえのない時間になったように思います」

さらに、50年近く彼と暮らしてきた丸古は、ともに過ごしてきた時間を思い出しつつこんなエピソードを教えてくれました。

丸古「以前、彼が好きな歌手のコンサートに一緒に行きました。コンサートに行っている間もすごく楽しそうでしたが、帰ってから1ヶ月も2ヶ月も『あのときは楽しかったね』『あの歌は良かったね』と二人でお話をしたんですね。そんな時間を共有できるのは私にとってもすごく楽しい時間でしたね」

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栄養士・介護士 丸古

その園生の方が60歳になったとき。既に体力が落ちており、なかなか動きがとれない状態だったそう。そこでスタッフが「還暦のお祝いが彼にとってよい時間になるように」と考えた結果、彼が好きな歌手を病院に招き、院内コンサートを開くことになりました。

菊名「あの時は、すごくいい顔されてましたよね」
北島「ほんとうに。そんな彼の様子を見て、私たちにとっても思い出に残る時間になりましたよね」

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このように単なる「入所者とスタッフ」という枠組みを超え、ともに暮らし、生きてきたスタッフと園生たち。現在のまちだ丘の上病院のクレド「あたたかな医療」「共に生きる医療」は、一二三学園から脈々と受け継がれてきた姿勢なのかもしれません。

これからも一二三学園では、園生のみなさんの「生きる」を支え、あたたかな医療を届けていきたいと思います。

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重症心身障害者(児)の入所施設「一二三学園」でケアクルー(支援員)として働く方を募集しています。もし、ここまで読んで一二三学園で働くことに興味をもってくださったかたは、ぜひこちらの募集要項をご覧ください。まずはコーヒーでも飲みながら気軽にお話しましょう。

園生の身の回りのお世話から食事・入浴介助など、園生が快適に生活をしていくため、様々なケアやサポートを行う仕事になります。

また、「応募フォームからはちょっとハードルが高いけど、質問だけでもしたい」という方はこちらに相談メールくださいね。どんな内容でも大丈夫です。

まちだ丘の上病院 人事課 加納
✉:office6@machida-hospital.com
(こんな顔してます)

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お読みいただき、ありがとうございました。

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