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【本人訴訟シリーズ】本人訴訟で未払い残業代を請求する

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未払い残業代問題を取り上げます。自分だけの力で労働審判を起こしてブラック企業から未払い残業代を取り戻す!そのための実務的なノウハウや労働審判手続申立書など書面の作成について解説し…
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2019年5月の記事一覧

労働審判手続申立書の書き方~その5~

まず復習から。第19回noteで解説したように、割増賃金(残業代)を算出するための計算式は、      割増賃金(残業代)=基礎賃金×割増率×所定外労働時間 です。基礎賃金はいわゆる時給。割増率の最低ラインは労働基準法第37条1項に基づいて1.25(会社によっては、就業規則や賃金規程で割増率を1.30など高めに設定しているところもあるかもしれません。)。所定外労働時間は残業をした時間。例えば、時給が1310円として、ある月に残業を合計20時間したとします。であれば、その月の

労働審判手続申立書の書き方~その4~

第16回のnoteでは、「第2 申立ての理由」の構成を示した上で、「1.当事者」について解説しました。続けて、同じく「第2 申立ての理由」の「2.所定労働時間、及び基礎賃金」「3.残業の実績」「4.未払い残業代の請求」について書いていきたいと思います。 まず、私が使用した申立書の当該箇所を書き出します。 ================================== 2.所定労働時間、及び基礎賃金 (1)所定労働時間 申立人の所定就業時間は午前9時から午後6時とされ、

賃金請求権の消滅時効は2年!

今回も、前回と同じくちょっと休憩して、労働審判手続申立書の書き方から少し離れたいと思います。今回は、賃金請求権の消滅時効についてです。 まず、賃金とは、労働基準法第11条によれば、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」とされています。給料、残業代、アルバイト料、時給、日給、報酬など名称はともかく、正社員・契約社員・アルバイト・パートタイマーなどといった立場に関係なくいかなる人(労働者)にも、その提供した労務の対

雇主に対するペナルティとしての付加金

第14回、第15回、第16回のコラムでは、労働審判手続申立書の書き方について、私が実際に使用した書面を書き出しながら解説してきました。続いて、立証活動の中核である申立書の「申立ての理由」欄の解説に入っていきたいと思います。 でも、その前に、今回はちょっと休憩して、これまでも何回か出てきている「付加金」について解説しておこうと思います。 付加金は、残業代を支払ってもらっていない従業員・労働者にとって、いわば「切れ味鋭い懐刀」のようなものです。確かに切れ味は鋭そう。でも、あく

労働審判手続申立書の書き方~その3~

前回のnoteでは、私が実際に作成・使用した労働審判手続申立書を使って、「当事者」「請求の価額」「申立ての趣旨」について解説しました。これから「申立ての理由」について述べていきたいと思います。この「申立ての理由」の部分こそ、立証活動そのもの。ここには労働審判(ないし民事訴訟)で「未払い残業代を請求する」ノウハウが詰まっています。ぜひ学んでいただければと思います。 私の労働審判手続申立書を事例にして解説をすすめる前に、「申立ての趣旨」の通りに未払い残業代を請求するに際して、ま

労働審判手続申立書の書き方~その2~

前回のnoteでは、労働審判手続申立書には「当事者」「申立ての趣旨」「申立ての理由」を含めなければならないこと、および「申立ての理由」では「証拠」をもとに「争点」毎の「事実関係」を明確にしなければならないことを述べました。今回から、未払い残業代を請求するために実際に申立てた労働審判事件を事例として、申立書の具体的な記述について解説します。 以下の記述は、私 街中利公が実際に作成・使用した申立書の最初のページ。「当事者」と「申立ての趣旨」の部分です。 なお、実際に本人訴訟で

労働審判手続申立書の書き方~その1~

前々回のnoteでは、労働審判手続きを申立てる際の書面について簡単に述べました。今回から数回にわたって、書面のなかでも最も重要な労働審判手続申立書(以下「申立書」といいます)の書き方について解説したいと思います。 労働審判法第5条・労働審判規則第9条によれば、申立人が作成・提出する申立書には少なくとも次が記載されていなければなりません。 第一に、当事者。「申立人」と「相手方」の名前、住所(書面の送達先住所)、連絡先をそれぞれ記述します。「申立人」名の右側に認印を押印してく