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【本人訴訟シリーズ】本人訴訟で未払い残業代を請求する

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未払い残業代問題を取り上げます。自分だけの力で労働審判を起こしてブラック企業から未払い残業代を取り戻す!そのための実務的なノウハウや労働審判手続申立書など書面の作成について解説し…
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2019年4月の記事一覧

初めて東京地裁に行く

今回は少し趣向を変えて、私が労働審判手続きを実際に申立てた東京地方裁判所についての話をしたいと思います。 地下鉄日比谷線の霞が関駅で下車、A1出口から徒歩1分で東京地裁の正面玄関です。官庁街のど真ん中。近くには、農林水産省、経済産業省などがあります。東京地裁の建物はテレビで見たことがあります。正門のところでは、よく団体が拡声器で叫んだりビラを配ったりしています。私が最初に東京地裁を訪れた時は、何かの団体の代表者がある判決に不満を持っているようで、裁判官らしき人を非難している

労働審判を申立てる際の書面

今回は、労働審判の申立てに必要とされる書面について解説していきたいと思います。 申立人(労働者)が、相手方(雇用主/会社)に対して、地方裁判所に労働審判手続き(本人訴訟)を申立てる。この時、作成・提出しなければならないものは基本的には次の4点です;①労働審判手続申立書、②書証、③証拠説明書、④資格証明書。他に、裁判所から「争点整理表」の作成・提出を指示される場合もあります。詳しくは改めて解説しますので、今回はそれぞれがどんなものかだけを簡単に述べておきます。 まず、労働審

労働審判の目的はあくまで和解すること

労働審判は労働に関する紛争を早期に解決するための制度。100%満足できるものではないにせよ、申立人・相手方双方が「これなら納得せざるを得ない」と思う金額ラインを、原則3回以内の期日に探るものです。 例えば、大雑把には、このようなケースです。申立人は、未払い残業代を100万円請求。相手方は、申立人は管理監督者(「管理監督者性」については、改めて解説します)の地位にあったのでそもそも残業が不存在と主張。労働審判委員会による審理・調整の結果、申立人は30%譲歩した70万円で納得。

労働審判or民事訴訟、どちらを選択?

前回は労働審判のメリットとリスクについて解説しました。では、労働者が会社と未払い残業代などの紛争を抱えてしまって、それを本人訴訟で解決しようとする場合、民事訴訟と労働審判のどちらを選択すべきなのでしょうか? 証拠にもとづいて事実を一つ一つ認定し、法的な勝ち負け、白黒をはっきりさせるのが民事訴訟。そのかわり、判決がでるまでに相当の時間がかかります。対して、労働審判は事件の解決自体を重視し、3ヶ月程度で終わります。申立て費用もリーズナブル。しかし、早期解決が優先されるために、申

労働審判を選択するメリットとリスク

前回までのコラムで、労働審判についておおまかにはご理解いただけたでしょうか?今回は、法律や訴訟のことをあまり知らない労働者が本人訴訟を起こすにあたって、民事訴訟ではなく労働審判を選択するメリットとリスクについて書いていきます。 労働審判には民事訴訟と比較していくつかのメリットがあります。原則3回以内の期日で終わるので、解決まで時間が短い。訴訟の提起に比べて収入印紙代と郵便切手代が安いので、費用面でお得。時間とお金。確かに、これらはメリットと言ってよいでしょう。しかし、私は、

労働審判の管轄と審理方法

今回は、労働審判の管轄と審理の進行について述べていきす。少し長文となりますが、ぜひ最後まで読んでいただければ幸いです。 まず、管轄の話。多種多数の裁判所があるなか、どこの裁判所に申立てをするかの定めを「管轄」と言います。労働審判の管轄は労働審判法第2条に定められていますが、次の3つのケースがあります。 第一に、相手方たる会社の本社や支店・営業所など事業所の住所を管轄する地方裁判所です。第二に、申立人が実際に勤務している事業所の住所を管轄する地方裁判所です。すでに退職した方

労働審判と民事訴訟の違いとは?

今回は、労働審判と民事訴訟の相違点について述べていきます。 まず、費用面での違いです。訴訟にかかる費用については、【本人訴訟で未払い残業代を請求する(3)】で解説しました。民事訴訟なら「訴訟費用+実費+弁護士費用」となるところ、労働審判では「申立て費用+実費+弁護士費用」となります。そして、労働審判を本人訴訟で申立てる時の費用は「申立て費用+実費」のみ。 とりわけ、民事訴訟の「訴訟費用」と労働審判の「申立て費用」。両方ともに、基本的には「収入印紙代+郵便切手代」の合計と考

労働トラブルを実情に即して迅速、適正、実効的に解決する労働審判

今回から数回にわたって、労働審判という制度について説明したいと思います。 裁判所のサイトによれば、労働審判手続(労働審判)とは「解雇や給料の不払など、事業主と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブルを、その実情に即し、迅速、適正かつ実効的に解決することを目的」とするものです。労働審判法で規定され、平成18年から施行された制度です。 労働審判は、裁判所がはいる点、紛争を解決する点などにおいて、一見すると「民事訴訟の労働事件版」とも思えます。しかし、労働審判は民事訴訟と

本人訴訟は不利なのか?-最も大切なのは事実を立証すること

本人訴訟は不利なのか。読者の皆さまはどのように思われますか? 原告たる労働者が本人訴訟を起こす一方で被告たる会社に代理人弁護士が付けば、「原告たる労働者本人 VS. 被告代理人弁護士」という構図になってしまいます。労働者には弁護士は付かないのですから、訴訟の経験と法律の知識についての原告・被告間の差は圧倒的かつ一目瞭然でしょう。前コラム【本人訴訟で未払い残業代を請求する(4)】で書いた通り、労働者には「必要な弁論ができないために、本来持っている権利にもかかわらず、その保護が

本人訴訟のデメリットは必要な弁論ができないリスクがあること

今回は本人訴訟のデメリットについてお話しします。 提訴の手続きがわからない、争点がわからない、どのような証拠を用意すればよいかわからない、法的な主張ができない、法律や判例を知らない、裁判官や被告代理人弁護士の言っている意味がわからない、主張や反論が感情的で争点に関係ないものになるかもしれない、事実関係や法的な主張を訴状や書面でうまく表現できない。まず、こういったテクニカルな問題が起こってくるでしょう。そうすると、必要な弁論ができないために、本来持っている権利にもかかわらず、

本人訴訟のメリットは費用を節約できること

今回は本人訴訟のメリットについて書きたいと思います。一番わかりやすいメリットは、やはり、費用を節約できることです。 ここで、民事訴訟にかかる費用の説明をしておきましょう。民事訴訟にかかる費用は「訴訟費用+実費+弁護士費用」の合計です。 第一に訴訟費用。訴訟費用とは提訴にあたっての収入印紙代のことです。例えば、被告へ請求する額が300万円なら、2万円の収入印紙が必要です。そして、予納する郵便切手が6千円分。原告が郵便局で収入印紙と郵便切手を購入、印紙は訴状の正本に貼って、切

本人訴訟って特別?

今回は本人訴訟について書きたいと思います。 民事訴訟では、弁護士を代理人に選任しないまま、原告でも被告でも当事者みずからが第一審から最高裁まで裁判を受けることができます。これを本人訴訟といいます。日本の民事訴訟法は弁護士強制主義を採用していませんので、本人訴訟が可能なのです。 本人訴訟も弁護士を代理人に付けた訴訟もどちらも同じ訴訟です。本人訴訟だからと言って裁判所の対応が変わることはありません。ネットで、「裁判官は、弁護士が代理人として付く側の主張を採用する傾向にある」と

本人訴訟のすすめ!

労働者なら、法律で定められた一日の労働時間は8時間。8時間を超えて仕事をすると、超過分は時間外労働になります。時間外労働をすると、労働基準法にしたがって割増賃金(残業代)が支払われなければなりません。 しかし、残業代がきちんと支払われているかと言えば、多くの会社ではけっしてそうではないかもしれません。時間外労働をしたことを会社に申告できない・・。申告しても会社が払ってくれない・・。固定残業代のみ支払われている・・。課長職なので残業代をもらう権利がない・・。未払い残業代の発生