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ドアを開けっぱなしで立ち去る

トイレや部屋のドアがある。急いでいる時、あるいは、なんの気なしにドアを開けっぱなしで立ち去る経験はないだろうか。

それはまるで人生のよう。高校・大学・就職・結婚。。。さまざまな門出を迎えるたびに、少しづつの言い訳を残して、名残惜しんで生きてきた。

それぞれのステージのドアを開けたまま、またすぐ戻れるように、景色が見返せるように思い出のドアを開けたまま。

しかし、たいていの場合、そのドアに戻ってくることはない。廊下を進んでいくと角を曲がり、次の用事を済ませていく。いつの間にか、ドアを開けっぱなしで離れたことすら忘れているのだ。

立つ鳥跡を濁さずというが、少しは濁るだろう。立つ鳥のほうも濁りを名残として少し気になりながら立ち去るのだ。

そしていつしかドアを開けたまま立ち去るのがクセになって、開けたドアを振り返らずに立ち去っていく。

そうやって少しずつのやり残しが、部屋と残された人の心に溜まっていく。

残された人も部屋も、少しの風通しと共に、空虚さを抱きながら前に進んでゆく。

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