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6歳息子、「漠然とした不安」を知る

6歳の息子の保育園で、最近お化けが流行っている。

「ろくろ首は昔からいるお化けなんだよね」
「ガイコツは外国のお化け」
「一つ目小僧も怖いけど、○○は人を捕まえて、切るんだよ!」
とか、色々説明してくれるので、
ゲゲゲの鬼太郎のアニメを観せてみた。

「もう一回みたい」とそこそこ食いつき、
3日くらい連続で観た日の夜。
寝る前の布団の中で、
「僕はもうゲゲゲの鬼太郎は観ない」
といきなり言い出した。
理由は、「夜寝る時に思い出して怖いから」だそうだ。
本人には悪いけれど、何とも可愛い理由じゃないか、と思っていたら、
そのままお化けの話をふってきた。

「お化けって本当にいるの?」
その聞き方が、彼なりの真剣ぽさがあったので
どう答えようが少し迷った。
私はめちゃくちゃなビビりで、大人になった今でも、
明るくてもひとけのないトイレとか、
ほんの少し古い感じのマンションのエレベーターとか、
怖くて仕方がない。
お化けを信じているのかいないのかは自分でもよくわからないけど、
でも、殺人犯に出くわすとかデカい蛇が出るとかと同じくらいの割合で
お化け的なものを恐れている。
そしてそんな自分が嫌で嫌でしょうがないので、
息子にはそんなビビりに育ってほしくないと、心から願っている。

「お化けって本当にいるの?」
の真剣な質問に、
「お化けなんていないよ」と答えたい。
けれども、息子が悪いことをした時の戒めの1つとして、
「そんな事してたらお化けに連れていかれるよ!」
が使えるかもしれない…と一瞬考えてしまい、
「お母さんは見たことないし、いないとは思うけど…。
でも知らないだけでいるのかなぁ…?わかんないなぁ」
と、ごにょごにょ答えてしまった。

その後もしばらくは振ってくるお化けトークに応えていたけれど
何となく、寝る時にお化けの事を考えてしまって
怖い気持ちになる、寝付けなくなる、感じなんだろうなぁとわかった。
寝る時は楽しい事を考えなよ、
「今日公園楽しかったな」とか「日曜日のお出かけ楽しみだな」とかね、
と提案しても、どうにも怖い考えがよぎってしまうようだ。

うちの息子は、夜の寝付きがよくて、
4・5歳の頃から添い寝は卒業していた。
「おやすみ」と布団に送り出したら、大人はリビングに戻り、
数十分して寝室に見に行くとちゃんと寝ている。
「一緒に寝たい」と言ってきた時は限りなく添い寝をしたけれど
ふざけた延長だったり、こちらがまだ忙しい時など
「1人で寝れるでしょ」と断ったことも何度もある。

これに関して、とても反省している。
元々ワガママを言うタイプの子ではなく、
私の機嫌を伺ったり、
状況に応じて正しい答えを出そうと考えるタイプの息子。
(あぁ書いていて本当に自己嫌悪。
幼子に気を遣わせる事を覚えさせた私の子育てよ。)
言わないだけで、本当は毎日一緒に寝たかったかもしれない。
むしろ、本人も自覚はないかもしれない中でも
なんとなく物寂しい思いで寝付いていたのかもしれない。

少し前にそんな反省を痛感させられる時期があり、
それ以来は、できるだけ、できるだけ添い寝をしている。

そんな中の、夜にお化けを思い出し怖い発言。
いじらしいし、そんな怖い思いのまま寝付くのなんてかわいそうだし、
毎日一緒に寝ているここ最近。
布団に入ったら手を繋いで、
目をつむったまま少し話をして、
中々長引くと、「もうお口閉じて寝るよ」と言って、
返事を曖昧にする。
そんな添い寝をしているここ最近。

また、息子の方から「夜寝る時怖い」と言ってきた。
寝室はリビングとふすま一枚で、
テレビの音や笑い声も聞こえるし明かりも漏れている。
なんなら寝室も豆電球をつけている。
大人の私からしたら、気配を感じまくるし、全然怖くないじゃん?
と思うけれど。

彼曰く、「窓のところからお化けが入ってくるかもしれない」。

しかし、これすごく理解できてしまって。
自分も子供の頃、いくら隣のリビングに人がいるとわかっていても、
窓からお化けが入ってきて、
誰にも気づかずに私を連れ去るかもしれない。
窓から怖い怖い顔で、こちらを覗いているかもしれない。
想像しだすと止まらない。
そりゃ怖いよね。
隣に大人がいないと怖いよね。
息子もきっと同じような想像をしているんだろうな。

でもそれに加えて、
なんだか怖がっているのはお化けだけじゃないような意見が。
「僕、大きくなったらお母さんにあんまり会えなくなるの?」
「僕が30歳になったらお母さんは何歳?」
「僕はお母さんとずっと一緒にいたい」
そんなことを言い出した。

若干、私の気を引き留めるための発言かな、とか
こう言えばお母さん喜ぶかなの意図がある発言かな、とも
思ったけれど、
それよりもやはり真剣な話口調だったので、真剣な話なんだと思った。

多分、多分だけれど、
お母さんがいつか死んじゃうとか、
いつか自分はお母さんと離れて暮らすことになるとか、
どこかでそんな話を聞いてきて、
自分が大きくなる事・今の当たり前の毎日がいつか変化する事、
ぼんやり暗い部屋で横になると
漠然とした不安が、
自分でも「不安」という感情に気づいていないだろうけれど
心のざわざわした悲しさ、怖さ、
そういった感情に、今なっているのかな、と予想した。

その気持ちも、わかる。わかるよ。わかるよ。
私が自身のことで覚えているのは、
小学校低学年の頃だろうか。
今、当たり前のようにある自分とか人間とか世界とかが、
そもそも何も無かったら。
人も動物も何一つなくて、きっと時間という概念もなくて、
宇宙と呼べるのか、真っ暗な空間か何か、
が、ただじっとそこにある、
それを認識する人もいない訳だから、ただただの、無。
もしかしたらそうだったかもしれないのに、
なんで人がいるんだろう、時間があるのだろう、
それって何なのだろう。
…という、めちゃくちゃ哲学の入口みたいな思考を
全然陳腐で低ー-いレベルだけれど考えてしまって、
怖くて怖くて眠れなかった思い出がある。

寝る前の時間って、色々考えてしまうのは何でだろう。
暗いから?
一日の出来事や思考を頭で整理しようとするから?
体がリラックスするから?
わからないけれど、夜寝る前の漠然とした不安感。
それを6歳の息子が、説明できなくても
何となく感じているのじゃないかな、と思った話。

あぁ、部屋くちゃくちゃのままだな。
お笑いの録画観たかったな。
スマホであれ調べたいな。
…添い寝をすることでできない事は山ほどあるけれど、
隣で手を握って、
この子が少しでも不安が和ぐように、
悲しくない怖くない気持ちで寝付けれるように、
楽しい夢が見れるように。
寝顔を見ながら、愛しくて涙が出そうになる夜でした。



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