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なぜなぜ分析のススメ


はじめに

少し前に勤務先で運用時の作業ミスによるインシデントが発生し、その原因を調査するために久しぶりになぜなぜ分析のフレームワークを用いて少し懐かしくなったので、整理がてら紹介いたします。

なぜなぜ分析とは

概要

「なぜなぜ分析」とは、発生した問題の根本原因を探る分析手法です。発生した原因に対して複数回の「なぜ」を繰り返すことで、その真因を探り出して対処することを目的として行われます。
トヨタ自動車が始めたことで有名ですが、工場以外でも定常的な運用が行われている現場であれば大抵の職場で利用できるフレームワークとなっています。

実施方法

フォーマットは会社などによってそれぞれ異なりますが、自分は過去に行なっていた記憶をもとに以下のようなものを作ってみました。基本的にはこのシートに内容を記載していき、原因の追求を行なっていきます。
そして本シートを作成する際のポイントとしては、必ず上位者や経験者を含めて複数名で実施してください。一人で記入すると、原因を深掘りする際に見当違いの方向に進んでいっても、それに気づくことが難しくなってしまいます。

まずは、発生した事象を記載します。今回は割とよくあるであろう「退職処理のアカウント削除中に、誤って消してはいけないアカウントを消してしまった」という事象が発生したこととします。このタイミングで、発生日と分析日を入力します。

次に、その事象に対して1回目の「なぜ」を記入します。
例えば、今回は「『tanaka-**』のアカウントが2つあり、誤った方を削除してしまったため」と「削除後に消したアカウント名が正しいか確認していなかったため」という原因をあらい出せたとします。

続いて、2回目の「なぜ」を記入します。
この際、真因からズレた方向に向かわないようハンドリングすることが非常に重要となります。例えば、「tanakaが複数いるのがいけない」という真因に進んでしまうと、対策としては「tanakaさんを入社させない」とか「アカウントを重複させないようにランダムな英数字にする」といった対策になります。不可能ですね。
今回は、それぞれのなぜに対して以下の様な「なぜ」を記載しました。

あとは似た要領でひたすらなぜを繰り返していきます。ちなみに、なぜに対するなぜは、1つだけでなくとも構いません。逆に、原因として複数の要素をまとめて記載すると抽象的なものになりやすいため、1つの要素ごとに分割して掘り下げて行った方がうまくいきやすいです。
また、フォーマットでは5回繰り返すようになっていますが、必ずしも5回記載する必要はないかなと自分は思っています。ちょっとめくどくさくなったので今回は3回目のなぜで一旦打ち止めとして、「原因」にそれを転記していきます。
また、これらの原因に対して判定を記入します。判定というのは、この原因は何かしらの対処が必要なものかどうか、という観点で「OK/NG」を記載します。これがNGとなった場合、対処策を検討します。

判定NGとなったものについて対処策を検討していきます。この際大切になるのが、必ずその対処策に対して「誰が」「いつまでにやる」のかを決めることです。「なんとなく原因と対処策は決めたけど、じゃあ時間が空いた時にでもやりますか」だと大体において再発するので、断固たる決意で決めましょう。大変ですが。

ここまで記載できたら、あとは対処策をそれぞれで実施しつつ、必ず再度場を設けて実施状況などを確認しあいます。最終的に全ての対処が完了し、「完了日」を記入できたら終了とします。

注意点

上記のやり方はあくまで自分が過去にやっていた内容を思い出しながら作り直したものなので、正式なものとは微妙に異なっている可能性あります。まずその点はご注意ください。
それ以外での注意点として、よく挙げられている点を以下に記載します。

  • 個人攻撃にしない
    今回の発生した問題において、「誰々さんが手順を漏らしたのが悪い」「手順を読み飛ばすくせがあるのが悪い」「注意力を養うこと」といったように、個人に対する問題点や改善点を指摘するのは正しくありません。個人に対する責任追求の場ではないことを全員で合意したうえで、組織として仕組みや問題の本質に目を向けて分析にあたってください。

  • 結論ありきで考えない
    今回の問題において、「作業実施時はWチェックするという手順にしよう」といった結論をあらかじめ考えておき、それに向かってなぜを繰り返した場合、本質的な問題を見落としてしまう場合があります。結論の一つとしてあると考えているのはいいですが、必ず発生した事象から深掘りして検討するようにしてください。

  • 問題は具体的に捉える
    発生した事象を抽象的に書きすぎると原因の深掘りが難しくなるため、発生した事象・問題点は具体的に記載するようにしましょう。今回の例もあまり具体的に書けてはいないのでもう少し具体的に書くと、「退職者であるtanaka-abさんのADアカウントの削除中に、誤ってtanaka-adさんのADアカウントを削除してしまい、ユーザからの申告があるまで気づかなかったことで業務影響を与えてしまった」といったところでしょうか。

おわりに

なぜなぜ分析はインシデント発生時の原因調査と対策の検討において100%有効なものだとは思っていませんが、私の場合はそれこそ過去に嫌になるほどやった(自分が起こしたミスなので自業自得ですが)ので、何かしらの問題が発生したときに、その原因を調査するまでの道のりが(ある程度は)最短経路で走れるようになれたのかなと思ってます。
一人ではできないのでハードル高くはありますが、こういったフレームワークもあるよということを認識頂ければ幸いです。

参考情報
[第1回]なぜなぜ分析はミスの表現力が命 頭に「絵」が浮かぶ文を書こう


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