見出し画像

「本町しもたや」ができるまで

こんにちは。まちごと屋広報の久志です。前回からしばらく間が空いてしまいましたが、今回は本町通りにある「本町しもたや」について、まちごと屋メンバーに話を伺ってきました。


「本町しもたや」という場所

2018年2月、高崎市本町にソーシャルリビングを配した場所「本町しもたや」がオープンしました。まちごと屋としては「MOTOKONYA」に次ぐ、休眠していた建物を自主運営で活用していくプロジェクトです。

このソーシャルリビングの仕組みというのは、「休眠していた建物を居心地のいい場所に設えて、街のみんなが会員となりシェアして使っていこう」という考え方です。

しもたや2階のリビングスペースには、北欧家具が並び、シックなブルーグレーの壁とあたたかな日差しが気持ちの良い、落ち着いた雰囲気の空間が広がっています。ここでは会員の皆さんが24時間、自由に、思い思いの過ごし方をすることができます。

しもたやリビング

1階にはコーヒースタンドがあり、かつて大正時代に建てられた薬局の建物の佇まいを残した心地よい古さを感じられます。

オフィスや住居をシェアすることはすでにいろんな形で広がっていますが、”リビング”をシェアするというのはまだまだ馴染みのない考え方。しかも高崎という地方都市でこういったスペースをつくるのはおそらく前例のないことです。一体どんな発想や考えから生まれてきたのでしょう。まちごと屋代表、大澤に話を伺ってみました。

ーー今日は「本町しもたや」について、どういう考え方でこの場所ができていったのか、教えてください。どうぞよろしくおねがいします。

大澤 よろしくおねがいします!

ひとつの建物との出会いから

ーー 早速ですが、「しもたや」はいったいどういったきっかけでつくられていったのでしょう…?外から見たら一見普通のコーヒースタンドですが、2階にはソーシャルリビングという変わった空間になっています。この場所がつくられていった経緯を教えてください。

大澤 まずは建物との出会いが大きかったんです。本町通りを歩いていたときに、通りすがりにチラッと見えた調剤室が素敵で。普段はカーテンが閉まっていたので、中が見えなかったんです。たまたま近所に住む持ち主さんが片付けをしていたので話をしてみると、この場所の行く末を決めかねているということでした。

 その後まちごと屋でも新たな建物の使い手を探すお手伝いをしていたのですがなかなか実を結ばず。。あるとき、他のところから持ち込まれたお話で、建物の解体を前提に他の人の手にわたってしまうかもしれない、という可能性が出てきたんです。それで、この素晴らしい建物がなくなってしまう前に、私たちの手で引き継いでいこう、という気持ちが先行して、半ば勢いで土地建物の購入を持ち主さんに申し出てしまいました。

ーー 勢いで! 

大澤 この建物を失いたくないという気持ちで大きな決断をしました。後から「どう使っていくか」を考え始めたので、その時はとても苦労しましたね。。取得を決めてから、どういう仕組みで利益を生み出し、持続可能な場所にするか、事業計画が固まるまで半年かかりました。産みの苦しみを味わいました、、、。また、金融機関の融資を受けて進める事業だったので、まちごと屋の今後を左右するプロジェクトとして、この期間は役員・スタッフが、かなりの熱量と集中でプロジェクトに力を注いでいました。リアルでもリモートでも、毎日のようにみっちり議論していた気がします(笑)

「持続的で、ひらかれた場所」を目指して

ーー 建物をどう使うか、が先にあったのですね。議論はかなり白熱したようですが、どのような案がでていたのでしょうか。

大澤 まずは持続的な場所であること、そして1階はモトコンヤのように多くの人に来てもらえる、ひらかれた場所でありたいという考え方がベースにありました。そうすると飲食店という案も上がってきて。でも僕たちには飲食店を運営する力はないし、、モトコンヤのときのように誰かに「店番」してもらえないかなあと話していました。

(「店番」… モトコンヤでは、日ごとに替わる各出店者に施設自体の「店番」の役割もお願いをしていた。その分運営面のコストを下げ出店料の金額に還元。アイデアと信頼による緩やかな運営のしくみはモトコンヤの特徴として注目された。)

ーー持続的で、ひらかれた場所、、。やはりモトコンヤのイメージは大きかったのですね。

大澤 はい。それで店番のイメージの延長から、1階のテナントにはしっかり関係を築ける人を時間をかけて探して、2階は自分たちでシェアリビングを運営しよう、ということになりました。

ーー 1階には伊東屋珈琲さんが入っていますね。

大澤 はい、そんな時、桐生の伊東屋珈琲さんが高崎にも出店を考えているということをお聞きし、運命的なタイミングでご紹介していただきました。伊東屋さんは本当に多くのファンがいるお店ですし、桐生の店舗も古き良き建物をリノベーションした素敵な雰囲気だったので、思い描く場所の雰囲気や世界観を共有できると思っていました。高崎店の雰囲気も抜群でしょ?

ーー 薬箱の引き出しのあるカウンターが印象的でかつての雰囲気を感じられますし、奥のたたみの空間も落ち着きますね…。随所にこだわりが感じられますが、つくっていく中で、いちばん大事にしていたことはなんでしょうか

大澤 コストですかね…笑 作り上げたい空間と限られた予算のバランスに苦心しました。金銭面、、つまらない回答ですが。

ーー でも大事なことですね。

シェアリビングを作りたい人のロールモデルに

大澤 同じようなスペースをつくりたい、と考えている人たちのロールモデルになれたら、という思いも持っています。ですがなにぶん予算がなかったので(笑)、工事はプロにお願いするところのほかに、DIYで自分たちで頑張ろうというところも多く、素人なのでなかなか進まなかった時期は苦しかったですね。工具の使い方もほとんど知らなかったから。

ーー このような形のスペースを作りたいと考えている人は地方に限らずいろんな地域にいるように思います。建築的な面も、素人にはなかなか難しいと思うのですが、どのようにフォローしていったのでしょうか。

大澤 FLOW建築事務所の佐藤さんに、この本町しもたやプロジェクトが始動するタイミングでまちごと屋への参画をお願いしました。もともと親交があり、よくアドバイスをもらっていたので、これを機に。リノベーションの陣頭指揮をとっていただいたのですが、予算の限られた中で、この異例の取り組みに快く力を貸してくださったのは本当にありがたかったです。佐藤さんがいなかったら本町しもたやは完成しなかった、といっても過言ではないです。今も佐藤さんに訊くことばかりです。笑

これからの「しもたや」

ーー 「しもたや」はまちごと屋にとっていろんな意味で大きなターニングポイントだったのですね。この2年弱、運営をしていく中でわかってきたことも多いと思いますが、今後の方針はありますか?

大澤 実際運営をしていく中で、しもたやの仕組みやあり方に、大きな可能性を感じるようになりました。今後はこのしもたやの仕組みを街のあちこちへ広げていきたいと考えています。

ーー 「しもたや」のような場所が増えていく…?街の中にそれぞれの居場所や過ごし方が増えていくと思うと、街のあちこちに灯りが灯っていくような、そんなイメージが膨らみます。

大澤 会員さんはもちろんですが、不動産オーナーさんの理解も必要なので、僕たちの思いをしっかりと丁寧に伝えて、共感していただける仲間を増やしていくことも大事だと思っています。そこにまちごと屋らしさを発揮していければと。

ーー 無機質でない、丁寧なコミュニケーションから生まれるものに「まちごと屋らしさ」が出ているのだろうなと思います。これからの「しもたや」の展開が楽しみです!

次回はまちごと屋の考える「しもたや町内会」とはどういったものなのか、伺っていきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?