嶋田青磁

夏を愛する詩人。文学の院生。書物、ファッション、映画、自己の探究について。

嶋田青磁

夏を愛する詩人。文学の院生。書物、ファッション、映画、自己の探究について。

マガジン

記事一覧

文系院生と罪悪感

 大学院生は、つくづく特殊な立場にある。やるべきことは山のようにあるものの、(恐ろしい事実だが)意外と手を抜けば「やり過ごせて」しまう。人文系あるいは自分の大学…

嶋田青磁
3か月前
27

痩身とコンサータ(近況2)

ごきげんよう。 先日、同じタイトルで書いた記事の続報になります。 ほぼ自分用の記録ですので、読みづらい部分もあるかと思いますがよろしくお願いします。 今回書きたい…

嶋田青磁
3か月前
17

うつ、コンサータなどについて(近況)

 8月頭にコロナになってから、本当に久しぶりに「鬱」という言葉が頭をよぎるようになったので、記録としてここに近況を残しておこうと思います。  あまり明るい話題では…

嶋田青磁
8か月前
32

ドールとおそろいコーデをするということ

 前に、わたしはこのnoteで『わたしだけのお人形がほしい』というちょっとしたドールお迎え体験記を書いた。このときはファーストドールであるリアンについてしか扱わなか…

嶋田青磁
2年前
49

わたしだけのお人形がほしい

ああ、わたしだけのお人形がほしい。 夢に見るほどほしい。 お洋服を着せかえて、髪を撫でて、いつも一緒にいられる分身が。 ***  ドールという存在への憧憬が溢れ…

嶋田青磁
2年前
39

大人になれない僕の少年論

 はっと辺りを見回すと、むかし一緒にじゃれあっていたような女友達は皆、大人になっていた。就職し、お金をもらい、パートナーと暮らす。あるいは、独立。何より明らかな…

嶋田青磁
3年前
51

香りの儀式

 誰かに会う日、一人で過ごす日。 洗面台の棚には、壜に入った二つの「選択」が並んでいる。その日をどんな一日にするか決めたら、二つのうちどちらかを選んで、手首、と…

嶋田青磁
3年前
35

青ざめたやさしさ、そしてASDのこと

わたしは、長年にわたって自分の“やさしさ”がコンプレックスだった。これがあるために出来ないことが多すぎるし、表現の幅も自ずと狭くなってしまうから。 それに、や…

嶋田青磁
3年前
39

少女性を愛せない

わたしにとっての「少女性」は、必ずしも愛すべきものではない。むしろ、嫌悪の対象である。 そう気づいたのは24、5歳くらいで、遅い自我の目醒めと同時期だった。以前の自…

嶋田青磁
3年前
34

記憶

嶋田青磁
4年前
12

短詩

嶋田青磁
4年前
8

憧憬

La nostalgie 濃紺のみなもに 銀の絨毯が敷かれたみちを おまへの手をとり 駆けてゆきたかった 裳裾を垂らしたやうな 細く白い雲、澄みゆく大気 耳もとで囁かれるの…

嶋田青磁
4年前
8

ロマンチスト

嶋田青磁
4年前
9

フレア

月明かりさへ霞ませる 燦然たる光は 橙色をして ぼくの心臓を震わす 光はあまりに眩しく 肋骨のすき間を洩れ 辺り一帯に 恒星のリュクスを 撒き散らすやうだ 八月の夜の…

嶋田青磁
4年前
10

ニコラ・ド・スタール、調和の果てに

近頃の息苦しさは梅雨の煮詰まったような空気のせいだろうか。 何だか息をするたびにごろごろとした夾雑物が肺に取り込まれ、そのまま大きな花に生長してしまいそうな季節…

嶋田青磁
4年前
35

白波をかすめる海鳥の風切り羽
夕立ちの最初のひと粒
心地よい疲労から眠りへ沈むとき
≒美の在り処

嶋田青磁
4年前
3
文系院生と罪悪感

文系院生と罪悪感

 大学院生は、つくづく特殊な立場にある。やるべきことは山のようにあるものの、(恐ろしい事実だが)意外と手を抜けば「やり過ごせて」しまう。人文系あるいは自分の大学だけかもしれないが、学部と違って授業数も少ないし、たまにある発表の機会をどうにか乗り越えさえすればいい。ラボという概念はなく、教授もほとんどが放任主義である。ゆえに虚無に陥りやすく、もともと何かに興味を抱きやすいので、専攻とは関係ない分野を

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痩身とコンサータ(近況2)

痩身とコンサータ(近況2)

ごきげんよう。
先日、同じタイトルで書いた記事の続報になります。
ほぼ自分用の記録ですので、読みづらい部分もあるかと思いますがよろしくお願いします。

今回書きたいことは、

・コンサータの副作用(食欲減退)
・コンサータの効果について
・体重減少の危機

など。

 あれからコンサータによる食欲減退がひどく、体重の減少が無視できないところまで来たので、11月頃から量を減らしていました。
 忙しい

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うつ、コンサータなどについて(近況)

うつ、コンサータなどについて(近況)

 8月頭にコロナになってから、本当に久しぶりに「鬱」という言葉が頭をよぎるようになったので、記録としてここに近況を残しておこうと思います。
 あまり明るい話題ではないので、よかったら少し心に余裕があるときに見てください。

 まず、8月に入ってすぐに初めてコロナにかかりました。経路は不明。38〜39度の熱が3日ほど続いたあと、微熱が1週間くらいありました。味覚は問題なかったのですが、嗅覚は発症から

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ドールとおそろいコーデをするということ

ドールとおそろいコーデをするということ

 前に、わたしはこのnoteで『わたしだけのお人形がほしい』というちょっとしたドールお迎え体験記を書いた。このときはファーストドールであるリアンについてしか扱わなかったので、今回は二番目にお迎えしたドールのことを、その運命的な出会いとともに振り返ってみようと思う。そして、「おそろいコーデ」をキーワードに、わたしとドールの関係性についても、少しだけ深く考えてみたい。

 たしか今年の3月頃。どうして

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わたしだけのお人形がほしい

わたしだけのお人形がほしい

ああ、わたしだけのお人形がほしい。
夢に見るほどほしい。

お洋服を着せかえて、髪を撫でて、いつも一緒にいられる分身が。

***

 ドールという存在への憧憬が溢れてとまらない。どういうわけか、前々から抱いていたこの憧れが、ここ最近、どくどくと脈打ってわたしを駆り立てる。それも、リカちゃん人形のようなものではなく、「球体関節人形」といわれる類いのものがほしい。あんまり考えすぎるので、ついに夢にま

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大人になれない僕の少年論

大人になれない僕の少年論

 はっと辺りを見回すと、むかし一緒にじゃれあっていたような女友達は皆、大人になっていた。就職し、お金をもらい、パートナーと暮らす。あるいは、独立。何より明らかなのは、「成人女性」としての自覚があること。ぼく(あえてこの一人称を使う)にとってその概念は、ぼやけた抽象画のようであり、遠くに浮かぶシャボン玉のように不確かで掴めないままである。けれども、何となく直感として、ぼくの未来にはいずれその言葉が意

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香りの儀式

香りの儀式

 誰かに会う日、一人で過ごす日。
洗面台の棚には、壜に入った二つの「選択」が並んでいる。その日をどんな一日にするか決めたら、二つのうちどちらかを選んで、手首、ときには首筋にふりかける。これが、毎朝わたしが秘かに行う、小さな儀式である。

 人と会う予定がある日、わたしは決まってメゾン・フランシスクルジャンの「ジェントル フルイディティ ゴールド」をつける。

香りの中でもわたしが一、二番目に好きな

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青ざめたやさしさ、そしてASDのこと

青ざめたやさしさ、そしてASDのこと

わたしは、長年にわたって自分の“やさしさ”がコンプレックスだった。これがあるために出来ないことが多すぎるし、表現の幅も自ずと狭くなってしまうから。
それに、やさしさは社会一般の印象として“女性らしさ”に繋がる。だから、わたしのやさしさが露呈したとき、多くの人は「女の子らしくて素敵だね」と褒めてくれた。その度にわたしは、どうしようもなく悔しい気持ちで大人を見上げるしかなかった。このやさしさが「女

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少女性を愛せない

少女性を愛せない

わたしにとっての「少女性」は、必ずしも愛すべきものではない。むしろ、嫌悪の対象である。
そう気づいたのは24、5歳くらいで、遅い自我の目醒めと同時期だった。以前の自分はどちらかといえば少女趣味に近い「女の子らしい」服装を好んでいたので、この発見は意外でありショックでもあった。いかに少女らしく振る舞えるかを美徳としていたのに、自らその聖像を破壊してしまったのである。
きっかけは、今でもよく分からない

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憧憬

憧憬

La nostalgie

濃紺のみなもに
銀の絨毯が敷かれたみちを
おまへの手をとり
駆けてゆきたかった

裳裾を垂らしたやうな
細く白い雲、澄みゆく大気

耳もとで囁かれるのは
すべてが 残酷な結末である
#詩 #散文詩 #文学

フレア

フレア

月明かりさへ霞ませる
燦然たる光は
橙色をして
ぼくの心臓を震わす

光はあまりに眩しく
肋骨のすき間を洩れ
辺り一帯に
恒星のリュクスを
撒き散らすやうだ

八月の夜の静寂に
燃え盛る星が叫ぶ

ぼくは此処にゐて
それから
恋をしてゐると
#詩 #散文詩 #文学 #8月31日の夜に #夏

ニコラ・ド・スタール、調和の果てに

ニコラ・ド・スタール、調和の果てに

近頃の息苦しさは梅雨の煮詰まったような空気のせいだろうか。
何だか息をするたびにごろごろとした夾雑物が肺に取り込まれ、そのまま大きな花に生長してしまいそうな季節である。

先日、初めてニコラ・ド・スタール(1914-1955)という画家を知った。
日本ではあまり知名度はないが、作品のどれもが力強さと繊細さをあわせ持つ、未だかつて見たことのない抽象画だった。

わたしは部屋に「飾れる絵」と「飾れな

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白波をかすめる海鳥の風切り羽
夕立ちの最初のひと粒
心地よい疲労から眠りへ沈むとき
≒美の在り処