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アランマーレ熱烈応援ブログ「編集長のひとりごと side アランチャ vol.13」

【Strike back-捲土重来―】

読者の皆さん、ご無沙汰しております。ここに記事を最後に書いたのは、今年の2月。2月酒田大会のレポートでした。それから半年以上、本当にさまざまなことがありました。チームの体制も変わり、尊敬してやまない森寿実子さんも引退。そしてさらに深まるコロナ禍・・・私という筆者の気持ちも少なからず落ち込んでいたのだと思います。でも、時はその流れを止めることはなく、我らがアランマーレも、着々とシーズンに向けた準備を進めてきました。そして10月末、ついにV2リーグが開幕。その会場はなんと・・・

聖地・酒田市国体記念体育館

そう。リーグ開幕戦がここ酒田市で開催されたのです。これはチーム初・・・そしてもちろん、酒田でも初の出来事であり、チーム的にも開催地的にもこれほど名誉なことはありません。これから約4か月にわたる長く厳しい戦いの火ぶたが、晩秋と呼ぶには少し暖かい陽気にめぐまれた、北の小京都で切って落とされました。今回は熱く燃えた神無月最後の2日間を酒田からレポートします。

[DAY1 10/30]

開幕戦の相手は、千葉エンゼルクロス。とても明るく、勢いに乗せてしまうと非常にやっかいなチーム。そんな難敵を相手に、アランマーレの攻撃の口火を切ったのは、伊藤摩耶選手のクイック。そこから始まる攻撃は、酒田の浜に打ち寄せる冬の波濤のごとく、次々に千葉の守備陣を攻め立てる。スタッツを見れば明らかだが、この日のアランマーレは、スタメンがバランスよく攻撃し、途中から投入される選手がことごとく監督の期待に応える理想的な展開。中でも目立ったのは、ルーキー・原田栞里選手。打ってはクロスにストレートにと自由自在。守ってはアランマーレの看板・豪華ミドル陣のお株を奪う強烈なブロック。デビュー戦からいきなり「なんでも持ってこい」の活躍で、地元酒田のファンに強烈な印象を残した。

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そして守備陣で躍動したのは、これまた新加入の溝口由利香選手。V1・姫路でプレーしていた同選手。的確なポジショニングと守備範囲の広さ、そして目にもとまらぬクイックネス・・・と、これまで酒田の砦として活躍してきた森をはじめとした名リベロたちのいいところをミックスしたようなスーパープレーを披露。カメラマン諸氏の心を一気に鷲掴みにしてしまったと思うのは私だけだろうか(笑)

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この日全選手が出場し、持ち味を大いに発揮したアランマーレは、セットカウント3-0の圧勝でシーズン初勝利、そしておそらくはVリーグ記録(と思われる)ホームゲーム11連勝で、地元初開催のリーグ開幕戦に花を添えた。

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[DAY2 10/31]

この日の対戦相手は・・・アランマーレファンが勝手に思っているだけかもしれないが、因縁の相手と言って差し支えないのではないだろうか。リガーレ仙台。同じ東北地方で活動するチームであり、今シーズンからV2に参戦したフレッシュなチーム。このチームに対し、アランマーレは今年2度も辛酸をなめさせられた。アランマーレは創設7年目のチーム。10年に満たないまでもこれまで重ねた実績と経験がある。1年で3度、新規加入のチーム、それも同じ東北のチームに敗れることは、あってはならないこと。少なからず、今日の国体記念体育館にはそんな空気が流れていた。

果たして始まった「みちのくダービー」。この日、両チームを通じて最初に得点したのは、仙台の12番・江川優貴選手。そう、あの江川選手である。かつてアランマーレの攻撃を支えた湘南の台風娘が、仙台の選手となって、酒田に里帰り。鋭く振り切った左手で、アランマーレから早くも1点をもぎ取って見せた。これ以上ないドラマチックな展開で始まってしまったこの試合だが・・・アランマーレは落ち着いていた。ミドル陣と絶好調・原田選手の得点で追いつき・追い越すと、投野・伊藤というリーグでも屈指のビッグサーバーがサーブで相手をほんろう。常に先を走る展開を作り出し、優位に試合を進めていく。

しかし、前日ほどの空気の軽さはそこにはなく、仙台は隙を見せると即座に食いついてくる粘り強さを見せ続け、アランマーレは常に重いプレッシャーを感じながら得点を重ねていく。そんな空気を切り裂いたのは、ナイジェリアからやってきた、チーム初の外国出身選手。最近は漢字の勉強にもいそしんでいるというチーム最年少のティーンネージャー。そう、メソマチ選手である。180センチを超える長身と、前方向に若干流れながらのジャンプから体重を乗せて打ち下ろす強烈なスパイク。フロアレベルで見ていた方ならわかると思うが、2階から打ち下ろされるかのような角度のあるスパイクが、仙台のコートを次々にえぐって、相手に行きそうになる流れを何度も断ち切ってくれた。

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いや、マジでこの日のメソマチ選手の活躍は大きかった。そして、いいところで活躍したといえば、宮本菜月新主将。メソマチ選手と交代で出てきては、相手に行きかけた流れを、時に強烈なスパイクとブロックで引き戻してくれた。主将という常にプレッシャーのかかる立場にいながら、いつもチームのことを考え、自分の役割を考え続けてそれを具現化する。名主将・森の跡を継ぐことの大変さは推し量るに余りあるが、結果となって現れた時の彼女の笑顔はとてもまぶしいと感じた。

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そして、最後にはやはり、この選手のことを述べなければならないだろう。

その選手は、昨シーズンの最終戦、昇格の可能性が残る群銀戦で獅子奮迅の活躍を見せ、多くの得点を重ねて、最後に負傷。立ち上がれるはずのない負傷にも関わらず、再び立ち上がってトスを呼び、そのオーラに押されるように上がったトスを見上げて、飛び上がることができなかった。これは私の心に今も残る風景である。翼に傷を負った、アランマーレのエース。

その選手の名は、木村友里。

木村は、2021-22シーズンの開幕戦、スターティングメンバ―として、国体記念体育館のコートに立っていた。痛めた右足を庇うそぶりも見せず、2日間、献身的にレセプションをこなし、何度も何度も空高く舞い上がっては、時にブロックアウト、時にフェイントと、本来のクレバーな・・・別の言い方をすれば泥臭いプレーで、チームのために得点を重ねた。私はカメラマンとして今週末何十枚も彼女の写真を撮ったが、メモリーカードの中に、今の木村の気持ちが表れているのではないかと思える一枚を見つけた。

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仙台のブロックの真ん中をまさに「ブチ抜く」強烈な一撃。そして何より、木村の鬼気迫る表情に、勝利への・・・いや「バレーボールをプレーする」ということへの強い渇望と執念を感じざるを得なかった。2日間を通して、大事なところではことごとく決め切ってくれたエース。佐藤綾、江川優貴という、アランマーレ歴代のパワースパイカーとはまた違う「エースのプレー」を体現して見せてくれた・・・そんな気がした。

アランマーレは、常に接戦でありながらも要所を締めて、この日もセットカウント3-0で見事勝利。連勝で開幕戦を走り抜けることができた。そして驚異のホームゲーム12連勝。これまでも強敵と対戦するたびに潰えるのではと思ってきたこの記録だが、実際にアランマーレのファンとしてこの場に身を置くと「なんか勝てるんじゃね?」と思えてしまう・・・そんな不思議な雰囲気が国体記念体育館にはある。それを作り出しているのは、チームの勝利への思いはもちろん、ファン・市民の「何としても勝たせたい」という応援の気持ちであるのは多分間違いないだろう。今シーズン、国体での試合は最後だが、天童、鶴岡と連勝記録を伸ばし続けてほしいものである。

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再びコートに舞い戻った木村友里。彼女はシーズンの始まりに当たり、チームのメディアでシーズンの抱負をこう述べている。

「捲土重来(けんどちょうらい)」

捲土重来(を期す)とは、一度負けたものが、再び勢いを取り戻して巻き返すことのたとえ。木村にとって負けとは、文字通り昇格を逃したことだったのか、はたまた負傷してしまったことなのか・・・それはわからない。でも、始まっているのは確かである。何が始まったのかって?

捲土重来=Strike back with regaining lost grounds

[Strike back]とは、反抗・反撃のこと。昨シーズン失ったもの、そして彼女たちが欲してやまないものを持つ者たちへの大いなる反抗の狼煙が、V2女子最北の地・酒田から、今上げられたのだ。

待ってろ、V1。行こうぜ、アランマーレ。

大丈夫さ、絶対たどり着ける。君たちにはオレたちファンがついている。


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