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阪神タイガース、第1回希望選択選手

今年もドラフトで呼ばれなかった。
呼ばれる、はずはないのだけど。

あの時、アルプス席からの大きな拍手に、泣いた。
試合後のあいさつ。
青空で見えない星に向かって、心の中で叫んだ。

「楽しかったね」

初めての彼氏は、野球少年だった。
野球部エース。
いつも大きな声を出していて
ハスキーな声が好きだった。

彼はよく言っていた。
「甲子園に行って、阪神に入ってプロ野球選手になる」

彼は14歳で亡くなった。
棺に便箋15枚の手紙を入れた。
そして決めた。
「私が代わりに甲子園に行く」

この高校は女子マネージャーを募集していなかった。
それでも入学式の日から練習に通った。
通っただけで入部したわけではない。
勝手に掃除をして、一から野球を学んだ。

彼が見逃し三振が嫌いなことは知っていた。
だから、だから全力でやりきろうと思っていた。

怒られてばかりで、
帰り道は泣いて自転車をこいだ。

入部を認められたのは、1年生の12月。
入学式から書いた反省ノートは、その時点で2冊。
甲子園に来るまで15冊にもなった。

甲子園の全試合、「交際1カ月記念日」にもらったサイズの合わない指輪を胸ポケットに入れた。
決勝はベンチに座らず、最前列に立ってスコアをつけた。
ホームを踏んで戻ってきた彼の親友に手を伸ばすと、ハイタッチしてくれた。
一緒に戦える気がして、うれしかった。

・・・・・・・

昨日のドラフト会議
「阪神タイガース、第1回希望選択選手」
彼の名前が呼ばれた気がした。

折り返しの人生を少しでも素敵に。 アップルコブラーというスイーツが好きです! それを手に入れるためのものも好きです。。。