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【ZEEBRAを木村昴が語る】「ZEEBRA『The New Beginning』中編。日本語RAPを代表する名曲『Street Dreams』について!」【HIPHOP HOORAY VOL.29 ヤングジャンプ公式】

『ヒプノシスマイク』で山田一郎役も務める声優界一の“ガチなヘッズ”な木村昴の日本語RAP連載!

好良瓶太郎のリリックへの影響という点からスタートした『The New Beginning』編、語り止まらず前中後編3連続企題に!

木村 昴 きむら すばる:1990年6月29日生まれ。ドイツ出身。『ドラえもん』ジャイアン/剛田武役、『輪るピングドラム』高倉冠葉役等を担当。『ヒプノシスマイク』ではイケブクロ・ ディビジョン代表Buster Bros!!!を率いる山田一郎役。天才劇団バカバッカを主宰。ラッパーとしても『フリースタイルダンジョン』にも出演していたラッパー・掌幻と“掌幻と昴”として活動中。

※本記事は週刊ヤングジャンプ2021年24号に掲載された内容をnote用に一部改変して収録しました。

ZEEBRA『The New Beginning』中編。日本語RAPを代表する名曲『Street Dreams』について!

僕の作詞家名義である好良瓶太郎に大きな影響を与えた、ZEEBRAさんのアルバム『The New Beginning』の中でも、『Street Dreams』は名曲という表現では収まりきらない、日本語ラップ史上に燦然と輝くクラシック!

『Street Dreams』:こちらは『Street Dreams』マキシシングルジャケット。ビシッと決まった横顔が印象的。

——最近ではMCバトルの決勝やウィニングラップでも使われることが多いので、そこで知る人も多いでしょうね。

そういう大一番こそ似合うドラマティックな曲なんです。この曲は“あれは1990”っていう歌詞があるように、ZEEBRAさんがまだキングギドラとしてデビューする以前、アメリカで生活されてた時の回想で曲が始まるんですが……僕も生まれたのが1990年!

——そこに縁を感じると(笑)。

勝手だし超個人的ですけど、エモポイントです(笑)。でも俺が産声をあげた時に、ZEEBRAさんは“マイク握りたくて”“ブラサー達かき分けて”“何だこの変なジャパニーズ”って思われながらもアメリ力で戦ってたんですよね

——しかも“ただのパンピー”だったわけで。

自分が何者でもなかったってところから物語が始まるのは、Eminemの『Lose Yourself』にもつながりますね。だけど、この曲がリリースされた2005年になると“テレビにラジオ新聞も/世界が動く俺が韻踏むと”って、
ZEEBRAさんは超ビッグな存在になってる。しかも、そうなったのは“何だって本気でやりゃ叶う/成さねばならぬ/だから成せばなる”という努力の賜物だったと。この言葉に通じるのは、ジャイアンの“お前のモノは俺のモノ、俺のモノは俺のモノ”ってことだと思うんですよ

——まさかジャイアニズムがここに(笑)!?

変な例えだったかもしれない(笑)。でも“俺は成し遂げた!”っていう言葉であると同時に、“俺が出来たんだからお前も出来る!”って意味も込められてると思うんですよね。ただ、こういう言葉って世の中では綺麗事みたいに言われるじゃないですか

——特にこの時期のヒップホップは“親に感謝ばっかり”みたいに揶揄されることも多くて。

そういう風潮に対して“きれいごとだとか言うな/マジでうるせえ/俺のこの人生で証明するぜ”って完璧にアンサーする構造も最高なんです。続く“ヒップホップドリーム”“日本人”というライミングは、こう踏めること自体に誇らしさを感じるし、この“日本人”はZEEBRAさん自身であると同時に、僕のような日本語ラップを聴いてるリスナーにも向かってる。その人たちに“みんな声上げな!”って鼓舞する様は、まさにZEEBRAさんのキング感が為せる技っていう

——ジブさんだからこその説得力ですよね。

このフレーズを聴くと“じゃあ自分は何が出来るんだ?”って燃えるんですよね。それは“じゃあ俺もヒップホップドリームを!”でも良いし、“俺はどんな夢が掴めるのかな”ってそれぞれ違うだろうし、その普遍性もこの曲の魅力なんですよね。だけど、人には色んな事情があるから、夢半ばでそれを諦めざるを得ない人もいるわけで。でも、その人達に向かっても“夢もって生きてくんねぇ? 粋がって”って呼びかけて、去っていった人たちにも頑張ってくれってエールを送る。もうこのリリック、器の広さバスタブか!と(笑)。そして最後は“次の人生ってどんな風?”

——自分のヒストリー語りが未来どころか来世に(笑)。

そう! 神の視点ですよ(笑)。もちろんこのヴァースは別の道に進んでいった人たちに向けての言葉なんですけど、僕流の解釈では来世にも感じるんですよね。生まれ変わってもリアルな音楽を聴いていたい、っていう決意を表現してるというか。そういう夢を見る力とエネルギーをとてつもないレベルで与えてくれる曲ですよね……って、一曲で一回分使ってしまった(笑)!次回もう一回だけ『The New Beginning』の話をさせてください!

最後までお読みいただきありがとうございました!
次回もお楽しみに!

撮影◎門嶋淳矢
取材・文◎高木“JET”晋一郎

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