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インドの富豪の話 マカピーな日々#0413

マカピーです。

「あれ、何の話だったっけなあ?」と記憶の片隅に引っかかったヒントを、ヨイショヨイショと手繰り寄せると、以前どこかで知ったインドの富豪の話でした。

そこで気になってストーリーを書き起こしてみたら、こんな話でしたので紹介します。

(どなたか似たお話を知ってても、以下はマカピーの創作という事でヨロシク)

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『インドの富豪』

「私」がたまたま知り合いとなり、幾日か彼と一緒に過ごすことになったカルカッタの老富豪のもとには、毎日のように誰かが訪れるのでした。

今日も男が訪ねてきたのを、使用人が富豪に取り次ぎました。

使用人:「ご主人様、入院費に困っている方が来られています。如何されますか?」

富豪:「わかった。こちらに来てもらってください」

富豪:「こんにちは、さてどうされましたか?」

訪問者:「子供が病気で入院しなくてはなりません。しかし私は貧乏でその入院費が払えません。必ずやお返ししますのでお貸しいただけませんか?」

富豪:「分かりました。直ぐに準備しましょう」

訪問者:「このご恩は忘れません。必ずや働いて金をつくって持って参ります!」

富豪:「そのお金を返金していただかなくても結構です。そのかわりお願いがあるんです」

訪問者:「出来る事でしたら何でもします!」

富豪:「それは、あなたが今のあなたの様に困っている人がいたら私と同じようにしてあげて欲しいんです」

訪問者:「しかし私は貧乏で他の人の面倒なんて、とても見られませんよ」

富豪:「今すぐでなくていいのです。それに今お願いした事も忘れてしまってもかまいません」

訪問者:「まあ、その程度だったら出来そうです。ありがとうございます」

男の客が帰りしばらくすると、また使用人が別の訪問者の到来を告げました。

使用人:「ご主人様、子どもに運動靴を買ってやりたいというご婦人が見えています」

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そうやって老富豪が無償の施しを続けている姿に興味がわいた私は、ある日 の夕食後のチャイ(紅茶)を飲みながらその事を彼に尋ねました。

すると、老富豪は次のような彼が若いころの出来事を私に語ってくれたんです。

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彼は列車で半日ほどかかる地方の村から大都会カルカッタに来て彼の父親の治療薬を買い求めとんぼ返りするつもりでしたが、スリにやられたのか持ち金を全部紛失してしまったのでした。

雑踏の中を探し回りましたが見つかるはずもなく、夕方になり途方に暮れていると一人の男が近づいてきました。

男:「お若いの、なにか探し物かな? 相当疲れている様子だけど」

若者:「見知らぬカルカッタに到着したとたん金を紛失してしまいました。村に帰る汽車賃もないので途方に暮れていたんです」

男:「可哀そうに、そりゃ大変だったな。残念だが俺も金がないので工面してやれないんだ、悪く思うなよ」

若者:「いえいえ、こうして声をかけてくれただけでも感謝します。気持ちが少し晴れました。ありがとうございます」

男:「オッとそうだった。あそこに行って見たらいいかも知れんなあ。うまくその人に会えたら何とかなるかも。お若いの、この道をずーっと10分ばかり歩くと右側にでっかいお屋敷が見えてくる。そこでお前さんの願い事を言って見なよ、うまくしたら願いが叶うかもしれんよ」

若者:「そうですか、他に当てもありませんから、行って見ます。ありがとうございました」

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そう言って若者は教えられた屋敷の前まで来て門番に取次ぎを頼みました。高飛車に「門前払い」を食らうかと思ったら門番は言葉丁寧に「しばらくそこでお待ちください」と彼の訪問を取次に屋敷内に行き、やがて戻ってきました。

門番は「ご主人様がお会いになります。私がご一緒しますから中にお入りなさい」と門扉を開けて、彼に付いて来るように若者に言いました。

大理石の長い廊下の先にホールがあり、富豪らしい姿の老人が若者を笑顔で出迎えました。

富豪:「こんばんは。何かお困りとの事ですが、どうしましたか?」

若者:「実は今朝カルカッタ駅に到着したのですが、その直後に財布を紛失してしまい父の治療薬を買って帰ることも村に帰る汽車賃もなくなってしまい困っているのです」

富豪:「それは災難でしたね。その薬とはどれくらいするものですか?」

若者:「田舎では手に入らない高価なもので、おそらく○○ルピーほどだと思います」

富豪:「分かりました。もう心配いりません、そのお金を私が準備しましょう。ところであなたはお腹が減っていませんか?」

若者:「は?そうだ。今気づいたけど、カルカッタの町を一日中歩いていて今朝から何も食べてませんでした」

富豪:「では、私と一緒に夕食を食べてくれませんか?それに夜も更け薬局は閉まっていて明日の朝にならないと開店しません。今晩はここに泊まり、明日一番に薬を手に入れたらすぐに駅に行き村に戻りなさい。あなたが帰宅しないので、ご家族の皆が心配しているでしょう」

若者は食事をとり部屋に案内され水浴びをして戻ると、一日の疲れであっという間に寝入ってしまい、翌朝執事に朝食の知らせを告げられるまでぐっすり眠ることが出来ました。

若者が着替えてホールに行くと朝食の準備ができていて老富豪がいつものようにニコニコと待っていました。

富豪:「おはようございます。よく眠れましたか?」

若者:「おはようございます。実は今朝起きた時、昨日あったことは夢かと思いましたが、こうしてまたあなたとお会いでき本当だったと分かりました」

富豪:「では、朝食を終えたら薬局へ行き御父上の薬を手に入れたら真っ直ぐ駅に行き、そのまま村に帰りなさい」

若者:「見も知らずの私に、このように至れり尽くせりのほどこしをしていただき心より感謝します。ありがとうございました。このご恩は一生忘れません。そして必ずや一生懸命働いてここに返金に戻ってきますのでしばらくお待ちください」

富豪:「それには及ばんよ」

若者:「え?」

富豪:「私には残りの人生に必要な富を持っています。それは君にあげよう、返金の必要はない。そのかわり私の願いを聞いてもらいたいのだよ」

若者:「ここで働けというのであれば、直ぐに戻ってきます!」

富豪:「おそらく今後は君と会う事は無いだろう。それで私の願いというのは、君が将来に困った人にであったら助けてあげて欲しいっていうことなんだ。約束しなくてもいい、ただ私の願いを聞いてもらったからそれでおしまい。な、なにも困らないだろう?」

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老富豪はそう語ると私にクスっと片目をつむったのでした。

マカピーでした。

最後までお読みいただき感謝します。恩返しは連鎖します!


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