心にある座標 マカピーな日々#0587
マカピーです。
ダーバンでのある午後、いつもと違うタクシーの運転手が来たことがありました。
マカピーが仕事で必要な工具を購入しながら帰宅する予定でした。運転手にその店の見積書にある住所を読み上げながら「ほらこの○○通りの96番地」とその個所を指さすと、彼は見積書を手に取って「そうか、○○通りの96番地」って繰り返して見積書を返してくれました。
その店には幾度か来たので道順はある程度分かっていたのですが、この運転手は裏通りを行くので、途中でよっぽど目的地を確認したくなりました。そこをぐっとこらえていると、ほーら、ちゃんと○○通りに出たのでした!
右折して目的の店がすぐそこに見えたので、マカピーは「おお、ドンピシャすぐそこにあるよ!」って言うと運転手が「え、どこだい?」って聞くので「ほら、3軒先の青い看板の出ている店だよ!」
運転手はゆっくりと店の前に止まって、マカピーの顔を見ました。
「ありがとう。ここでちょっと待ってください。すぐ買い物を済ませて戻りますから」
マカピーはその買い物から直帰して自宅に戻ったのですが、家の前で降りようとすると「あれ、運賃は?」って聞かれたのです。
「ほら、月極支払いだから記録にサインするだけなんだ。おや、メーターを倒していたんだ。ごめん最初に言ってなかったね」
運転手はゴソゴソと伝票を出したので、マカピーが「そうそう、それそれ」と言うと、彼はマカピーをじっと見てこう言ったのでした。
「この伝票に先ほどの場所も書いてサインしてください」
マカピーはハッとして、理解したのでした。
そうか、この運転手は字が読めなかったんだ。
マカピーは、伝票に出発地点、行き先、そして自宅までの地名を書き入れて彼に手渡して「ありがとう。気を付けて運転してください」と別れました。
「文盲」っていう言葉は、日本にいたら死語と思えますが、いろいろな国で直面することがあります。
運転手といえば、カンボジアで忘れられない思い出がありました。
それは、2000年ころの事です。友達家族が来たので借り上げたミニバスの運転手でした。
その運転手は英語が喋れたのですが、プノンペン市内の観光場所を行くのに奇妙な行動をとるのでした。
客人家族は初めてのプノンペンですから何も感じないようでしたが、マカピーは自分でも車を運転していたので、土地勘もありましたからおかしいと思ったのです。
更にマカピー妻が「この運転手ちょっとおかしくない?」ってマカピーに聞いてきました。
「そうなんだ、ずいぶん遠回りするんだよ!どうしてかな?」「借り上げで走行距離で料金が変わらないと思うけど、どうして毎回独立記念塔まで来るの?」「うん、それなんだ。さっきの角を曲がれば次のお店に行くのにずっと近いってのはボクだってわかるのに、妙だなあ」
そこで到着した後で、マカピーは手に持っていた観光地図を見せて「ほら、ここに来るのに、ここのルートをとればずっと早かったと思うんだよね」と指し示すと、彼は地図をのぞき込んだ後でマカピーを見ました。
そして「いいんです。どこでも場所を言ってくれれば、ボクはモニュメント(独立記念塔)に戻ってたらそこに行けます。それでいいでしょう?」
訴えるような目を思い出し、今回のダーバンのドライバーと同じに思えたのでした。
そうか、この運転手の座標軸はモニュメントだったんだ!
実は地図を読む能力というのは幼いころに教育で習得していないと、大人になってからでは身につかないといわれています。
例えば、目的地を訪ねそれを白紙に描いてもらうことがありますが、高学歴の欧米人でも大概の人は、なぜかしら現在地を真ん中にしてしまいそこから道路を伸ばすので、最後にはゴチャゴチャと描き入れるので縮尺が全くあてにならない地図となります。
日本の教育ですごいなあって思うのは、「自分の家から学校までの道のりを地図にしてみましょう」なんていう課題を経験しているので、ほとんどの方が実際の地図に近い感覚で描くことができているからです。
途上国の村落開発などでは、参加者に村や地区の土地利用図を描いてもらうことがあります。それは村人の共通認識を促すためです。
ところがマカピーの経験では、最初からこれがまともに描けることはありませんでした。
それは自分の生活圏のとらえ方が各自それぞれ違うからです。自分の家と畑までの認識や境界線についてはわかりますが学校や保健所の位置などがあやふやだったりします。
つまり一人一人が自分の地図を持っているようなものだったのです。
おそらく現代社会では教育を受けた若者がいるのでそうしたことが、次第に少なくなっているかと思います。
教育が普及すれば文盲率も低下して行くでしょうけど、もしも現在仕事をしている人が「運転するのに道路表示が読めなければ危険だ!」と仕事を辞めさせられたり、仕事に就けなくなってしまうことはあると思うのです。
マカピーはロバート・デニーロとジェーン・フォンダの「アイリスへの手紙」という映画を思い出しました。
マカピーでした。
最後までお読みいただき感謝します。文盲でも才能ある人はいます!
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