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雨に笑う人たち。マカピーな日々 #0066

マカピーです。

雨の中でも冗談を言いながら和気あいあい活動する人たちがいました。

ベトナム中部、ラオス国境に近い山岳地帯で地すべりの調査に同行した時の事でした。日本とベトナムの研究者の混成チームでしたが日本側は大学教授など年配者が多くベトナム人側は若者でいろいろ学ぶ立場でした。

雨季の中の調査で、朝からかなり強い降りの朝でした。マカピーは「まあ、今日は停滞(作業中止)だろうな」と高をくくっていたら朝食時に皆で今日の作戦会議が始まったのでした。

ヤベー、やるのこの雨の中?

マカピーの装備は全天候型でない、革製トレッキングシューズでした。傘はありましたがゴアテックスのカッパは持っていません。でも、ここでマカピーが弱音を吐いてどうする!(黙って成り行きを見ていました)

マカピーは内心の不安とは裏腹に平然を装ってフィールド調査に出かけました。ある河川流域へ車で到着したのは砕石現場でした。でもそれが火山岩である玄武岩だったので教授たちはこのあたりに火山があったのか確認したのですが地元のベトナム側もよくわかりませんでした。

しばらく行くと雨脚が強くなり、足元はドロドロ。靴の中に水がしみ込んで気持ち悪くなりましたが、地質を調査しさらに土壌のサンプリングなども行いまいした。

マカピーは専門家ではありませんので、教授から「どうぞ宿で待っていていいですよ」と言われたのですが、チームの一員として「行きます!」と手伝いを願い出たのでした。

でも調査中に、かねがね思っていたことを日本人専門家の一人に尋ねました。

「皆さん、この雨の中、本当に楽しそうにやってますよね。雨が好きなんですか?」「別に雨が好きと言う訳ではないですけど、この仕事を何十年もやっていると天候ってあまり関係ないんですよね」「そうなんですか?」「晴れたら今度はものすごく暑くなったりして、ベストの条件を望んでいたらフィールド調査できないんです」「やけっぱち?」「最初の頃はやっぱり雨降りは嫌だなあって思いましたよ。でも今はそれほど苦にならなくなりました」「他の皆さんも当然のような態度ですけど?」「僕らが嫌だなって態度だったら、それが自然にみんなに伝わってしまうから気を付けています」

マカピーはプロの心構えは違うなあと思いました。たまたまの調査ではありません。毎月のようにフィールド調査を繰り返すプロには平常心が求められます。もちろん安全の確保も気に留めながらそれを実行するのは並大抵ではありません。

ヤブ漕ぎといわれる下草が繁茂する中を行動するのは疲れます。ヒルやハチなどの虫にやられることもあります。調査地が地すべり危険地帯であることもありますから、被災するリスクもあります。そもそも都会でない人里離れた辺鄙な場所での調査も多いのです。

「それでもやるのは、楽しいからですか?」「うーん、どうかなあ。やっぱり面白いんだよね、この仕事」「自然が相手だと人里離れたこんなところの仕事ってドロドロ、グチャグチャしているって知らない人が多いですよね」「僕は知らないけど、結局どの仕事だってきっと大変だろうと思うよ。でも自分はこの道でよかったなあって。やっぱり毎回違うものが見られるフィールド調査が好きなんだね」

しばらくすると雨に煙っていた視界が開け、がけが見えて来ました。

何とそこは玄武岩の節理がきれいにみられる見事なロックガーデンのような場所でした。最初の砕石場の岩はここから採取されていたのでした。

地元の採石があったにもかかわらず、土地地形図にはこの火山の跡は記入されていませんでした。調査団はこの地に火山があったことだけでなくその美しさに歓喜しながらこの地形をマッピングしながら調査をしていました。まったく変な人たちだなあ。

何か面白いことに出会えるという予感が雨の中でも彼らをフィールド調査に出かけさせる原動力なのかなあ?マカピーは変な集団との行動を一緒にすることで雨でも楽しめるコツが少しわかりました。

マカピーでした。


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