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赤とんぼに涙。 マカピーな日々#0077

マカピーです。

日本の曲に涙したことがあります。

学校を一年休学して米国での農業実習の締めくくりはカナダの農業視察でした。サンフランシスコでオリエンテーションを受けた後、一年間バラバラになって全米の実習農家や施設に散らばった連中がまたバンフ国立公園で有名なカルガリーに集合したのでした。

カルガリーの小さな町に入植したタイガー後藤さんという方の計らいで一泊ホームステイがあり三々五々分かれる前に町のホールで歓迎会を開いてくれたのでした。タイガーはもちろんニックネームですが、この地で沢山の友達を持つ方で町民が総出で私たちを歓迎してくれたのでした。

タイガーは移住して農業をしにカナダに来て苦労の末この町でマッシュルーム農場を経営して町の名物にした方です。しかもベトナム人難民を受け入れ、いつかリタイアしたら彼らの国へ行って仕事をするんだとおっしゃってましたが、リタイア間もなく他界されベトナム行きは叶いませんでした。

私はタイガーのファンになって、毎年家族の写真をつけた賀状を送っていましたがタイガーからはいつも達筆で長い励ましのお手紙をちょうだいしていました。

しばらく返事がないといぶかっていたのですが、ウズベキスタンで郵便物を受け取るとタイガーの奥様から、タイガーが永眠した事を知らせる手紙でした。タイガーは私からの各国からの便りを楽しみにしていたとあり、その手紙を握ってマカピーは涙が止まりませんでした。

話はカナダでの歓迎パーティーに戻ります。食事が終わると余興があり、実習生側も何かやることになりました。

ウィスコンシンの酪農へ入っていたスズキがステージに立ち、ポケットから小さなハーモニカを出したのです。へー演奏できるんだ!?と驚いたのですが、習いたての1年生の様な穴を一つ一つ選んで吹くような調子だったので何の余興になるのかと皆が笑ったのでした。

スズキは雑音にかまわず一生懸命口元に力を入れて奏でます。笑っていた実習生たちにも何の曲かわかりました。「赤とんぼ」でした。

雑音が消えました。

すると背後で「バカヤロー、ダメだー、やめてくれ」と声が上がりました。まあ、いいじゃないかと振り返ると、そうヤジを飛ばした実習生がボロボロ泣いているのです。あれれ?

すると、鼻をすすり上げる姿があっという間に伝播してしまい、マカピーも涙を流がしていました。それぞれの1年間の実習での思い出がこの曲でよみがえり、早く日本に帰りたいなあと思えたからだと思います。

この事態に、町民の人たちも最初は驚いたようですが、曲が終わると一斉にスタンディングオベーションとなりました。

実習生はTrainee(トレイニー)だから「トロイネー」って呼ばれないようにしっかりやるようにって時々ニュースレターをくれる仲間がいました。今年のレコード大賞は寺尾聡の「ルビーの指環」と書かれていたこともあり、はて?どんな曲なんだろうかと想像したのを思い出します。

なんででしょうね、海外でコーラスに入ってなんか日本の歌をやってくれって言われたので、マカピーの奥さんと一緒に「ふるさと」を歌ったら感極まってしまって歌えなくなったこともあります。

どうやらマカピーは涙もろいのです。





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