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マカピーな日々 #0040 不思議な猫能力

マカピーです。

マカピーは子供の頃、家で飼っていた「マル」と呼ばれた猫と犬の「ジョン」が大好きでした。敷地の隣が県道だったのでジョンもその後任?の犬はどれもロープに繋がれているのでしたが、たまに放してあげると猛烈な勢いで前の畑をグルーッと走り回って嬉しそうでした。

それはマカピーの3-4歳ころの記憶です。家の前の畑には菜の花が満開のころミツバチが飛び交い甘い香りが思い出されます。いつも見上げるばかりで周囲にある全てのものが自分より大きい世界でした。

ジョンはその後ジステンパーと思われる病気で死んでしまいます。熱がひどくて、雨の日に雨だれの下に横たわっているジョンの姿が目に焼き付いてしばらくは夜になるとジョンの事を思い出して涙を流していました。

一方マルの記憶は小学生2年生ころの思い出です。ちょうど家の農業が本格的に養鶏にシフトするころに飼っていたネコです。父は経費節減のために、初生ヒナを購入してきてそれを加温しながら飼育していました。手先が器用だった父は育雛器(いくすうき)の加温装置まで、更には鶏舎自体も全て手作りでこなす人でした。

メスだったマルはある日寒い朝の日にマカピーの寝床の足元に5匹の赤ちゃんネコを連れてきていました。足元がモゴモゴするので「???」布団をめくりあげると目の開いていない子猫がいたのにはびっくりしました。マルはマカピーが夜寝る時も一緒だったので、安全と知って子猫を連れてきたのでしょう。

マルは時々居間で家族がテレビを見ていると、獲ってきたネズミをガリガリ食べるのを見せつけたのでした。生臭さが漂うのと畳が汚れるので「マルったらだめだよー。あっちで食べてよ」とひと悶着起こるのが常でした。

養蚕が盛んな頃はネコは繭の中の蛹を食い荒らすネズミ被害から守る役目があり重宝していたようですが、養鶏となると立場が逆転してしまうのでした。そうですネコがトリを襲うのです。

ある時マルはネズミでなく鳥を咥えていました。敏捷な動きでスズメやツバメをつかまえてその手柄を家族に見せつけるのでした。ところが最悪のものを咥えてきたときは家族が凍り付きました。

ヒヨコでした。どうやったものなのか育雛器からヒヨコを奪ってきたのです。「悪い癖がつくといけない」父はマルを捕まえるとこっぴどく頭を叩き続けました。マルは暴れて逃げて行きしばらくおとなしくしていました。

マルは子猫たちを連れて二階の養蚕部屋にいたのですが、パタパタと音がするので行ってみると子猫たちが戯れています。しかし薄暗い中をよく見るとその間に黄色いものがいるのです。生きたヒヨコに子猫が襲い掛かっていたのでした。

それをマルは満足そうに少し離れた所から寝そべって子猫たちのハンティング能力を観察しているのでした。この状況からわかるのは、マルは甘噛みして咥えてきた生きたヒヨコで子猫たちに狩りの練習をさせているという事実です。

「マル、駄目だよー。こんなことしたらこの家で一緒にいられなくなってしまうよ!」マカピーはぐったりとしたヒヨコを奪い取ると父に見つからないように畑の隅に埋めて分からないようにしたのでした。

しかしほどなくマルの度重なる犯行が父の知る所となり、マルを捨てる事になりました。卵を産む鶏のヒナを殺してしまう害獣は飼えない運命です。子猫は飼う事にして父は車で「殺すには忍びなかったのでマルを10㎞程離れた町はずれに捨ててきた」と残念そうに言いました。

ところがそれから2週間ほどしたある日、マルが家に帰ってきたのです。体は汚れているばかりか痩せてボロボロでしたが、見まごう事なきマルです。マカピーは感激で涙が止まりませんでした。それにしてもいったいどうやってマルはここにたどり着いたのでしょう?途中には利根川があります。交通量のある橋を渡ったのでしょうか?それとも流れを泳ぎ切ったのでしょうか?子猫に会いたい一心で動物の本能が帰巣させたのでしょうか? 今でもそれは謎です。

残念なことに、その後マルはやはりヒナを襲う癖が治らず、今度は子猫とともに更に遠くの町はずれに連れて行かれて放たれると、二度と戻ってくることはありませんでした。

それ以来生家ではネコを飼う事はなかったのですが、先日生家を訪ねると兄夫婦が改造した母屋の二階で子猫を飼い始めたと言っていました。自分たちの子供が巣立ってしまったので代わりなのでしょうか?すでに去勢もすんで扉を設けて階下には行かないようにしているそうです。

そうです、生家では養蚕も養鶏も廃業してしまっているので、タブーも消えてネコが飼える環境になったのでした。

マカピーでした。


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