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苦手な芸人が推しに変わった日

noteを始めた頃に書いた記事で、大学生の頃お笑いにドはまりしていた話をした。
その時の話はこちら↓

私が最初にお笑いにハマっていた時期が大体2007~2008年頃。
関西の田舎に住んでいるかつ売れっ子で関西の劇場に立つ機会がほぼなかった芸人さんが好きだったので、劇場通いができず主にテレビを見るなどで供給を満たす日々。

世の中は何度目かのお笑いブームで、「エンタの神様」や「爆笑レッドカーペット」「オンエアバトル」等全国ネットでもネタ番組が数多くあり、関西ローカルでも漫才の特番や深夜帯で若手芸人の番組をやっていて、見る事ができる番組はなるべく見るようにしていた。
しかし当時の私は某M-1チャンピオンがネタ中に言っていた「自分たちの笑いが正義だと思っている凝り固まった」考えを持っていたので、全国ネットのネタ番組を見て、とにかく東京の芸人に厳しく、関西ローカルで見知った若手芸人に甘い。漫才一つとっても、いわゆる「コント漫才」に厳しく「しゃべくり漫才」が一番だと思っている凝り固まったお笑い好きであった。
とりわけネタ番組で見た東京の芸人に対して
「どこが面白いかわからない」
「ただただ2人ともブチギレててうるさいだけのあのコンビは…苦手だ」
等々思いながらも、ネタ番組を楽しんでいた。

そんなこんなで大学生後半からアニオタ・声オタにジョブチェンジした私は前述のネタ番組が次々と終わっていった所謂「お笑い冬の時代」が到来したのも相まってお笑い熱が薄れていった。

そんな私が再びお笑い沼に出戻った経緯は上の記事にあるので割愛。
あの頃とは違い、社会人になって安定した収入を得るようになったこと。
会社勤めやメンタルの不調、結婚など色々な人生経験を経たこと。
売れっ子の芸人でもNGKを始めとする劇場に出演する機会が多いこと。
YouTubeやTwitter、インスタグラム等のSNSで気軽に情報を手に入れたり楽しんだりする機会が増えたこと。
コロナ禍がきっかけとなって配信で公演が見れるようになったこと。
などが噛み合い、また話題になったコンビをM-1の予選動画を見るなどして、みるみるうちにお笑いにのめり込んでいく。
あの頃のように東京の芸人というだけで厳しい目で見なくなったし、色んなコンビの持ち味を楽しめるようになった。

そんな中、ある日会社で昼ご飯を食べながらヒルナンデスを見ていた。
芸人と奥さんが、来年小学校に入学するお子さんのランドセル代に当てる為に節約術を実践するという企画。
節約術は主婦とは名ばかりの私でも見逃せないコンテンツでもあるので、興味津々で見ていた。
コンビ名を見て思い出す。その芸人は大学生の頃の私がブチギレてうるさいだけだと思っていたコンビの1人だった。
当たり前だけど普段の喋りは普通で、いつもブチギレてるわけではないんだな。と思いながら、奥さんに協力して節約に取り組んでおられたのが印象的で、短いお昼休みの中で節約の結果どうなったか最後まで見ることはできなかったが、何故かその事が頭の片隅に残っていた。

時は経ち、5月。THE SECONDの放送があった。
追いかけているコンビが出場しなかったことや初年度の大会で様子見していた部分もあり、積極的に追っていなかった。また仕事や用事で予選が全く見れなかったので、Twitterやネットニュースで予選の結果を知る。当日にTverで事前番組をまとめて見る程度で、あまり期待せずに放送も吹奏楽の練習で最初と途中ちょっと(超新塾VS囲碁将棋の)得点発表の前だけ車のワンセグで見て、結果を知った上で
1日め(当日の深夜):金属バットVSマシンガンズ
2日め(次の日):スピードワゴンVS三四郎
3日目(その次の日):残り
という変則的すぎるスケジュールで見る。

家に帰ってご飯を食べながら金属の漫才を見て、面白かったなぁーなどと思いながらのマシンガンズ。
かつての私が「ただただ2人ともブチギレててうるさいだけで苦手」と思っていたコンビである。
結果を知った上で見ているので、本当に決勝まで勝ち残ったのか?と若干疑いの目もあった。
変な営業や居酒屋の客に対して2人でツッコむあの頃と同じスタイル。
ただし、圧倒的に違うのはネタ以外の話の方が長いこと。
初っ端から「横の人見にくくない?大丈夫?」と観覧の方に声をかけている。
お客さんとやり取りしている感じが毎月通っている寄席を思い出す。
ネタの終わり「よし!」「帰るぞ!」と言ってはけていくのも初めて知る。
ショートネタで終わったら速攻ベルトコンベアで流されていたところしか知らなかったから、終わりのところなんて気にしたことなどなかった。
あの頃とやっていることが変わっていないのに思っていた以上に面白かった。
というのが第一の感想だった。

この時率直に「あの頃とやってること変わらないのになんで、こんなに面白く感じたんだろう」と思い、いくつか理由を考えてみた。
・同じネタでも2、30代の若者が言っているとトゲトゲしさがあるが、40代のおじさんが言っているとマイルドに聞こえる。(「自分が一番この大会の趣旨に合っている」と言っていたくらいなので自虐も相まって余計にキツさを感じない)
・レッドカーペットはショートネタなので、時間内に納める為に早口になり、結果余計にうるさく感じる。
・人生経験の少ない大学生は、世の中の不満的なあるあるが理解しづらい。
・漫才師は年をとると面白くなる。という昔聞いた話。
などなど思いながら出番後のトークを聞いていたら
「この人、年のわりにめっちゃ若いな」と目が留まった。
テレビに写っているビジュ爆発したイケおじとヒルナンデスで奥さんと節約していた芸人がイコールになったのはこのあたりだった。

あの頃のマイナスイメージが完全に無くなり、次はどんな感じで来るのか期待しながらの準決勝。
喋りだしが「どうも。不倫はしていないマシンガンズです」
みんな「あの事」って言ってオブラートに包んでいたのにwwwwww
出番前に話題になった「あの事」もそこからのTwitterをエゴサして出てきた自分たちの悪口も空き時間の間に使えそうなネタ探して、ワードを入れるなんてすげえなと率直に思った。自分たちの悪口に対してツッコむ。最終的にヤフー知恵袋をプリントアウトしてきて、質問と答えにツッコむ。
これもあの頃見たぞwwwと思いつつ大いに笑った。
そして、今もなおヤフー知恵袋にネタの元となった質問と回答が残っていることにも笑った。

決勝進出した際「もうネタがない」と言っていて、「そんな事賞レースで言う芸人なかなかいないぞ(笑)」と思っていた。
今でもネタがある2本よりもネタがない決勝の漫才が一番好きだったりする。
「ネタがないのにここに立っている我々のメンタルすごくないですか?」
「時間まだあるからもう少し続けよう」
「今のダメだったな」
「お前も調子悪いな」
「優勝させてくれよ」「悪りぃな」
など賞金と優勝の名誉がかかった中で正直によくこんな事言えるなと腹を抱えて笑った。
片方がネタを振って、片方が落とす。落とす一言が外れがない。ネタは確かに少ないけど、思ったこと喋ってあれだけウケてるってすごくないか??
あと、マシンガンズといえばの手を上げてツッコむやつ。
用意したネタじゃないところでも手を上げるタイミングがあまりズレていない。
阿吽の呼吸。ベテランの技術。を感じる。
このコンビをあまりよく知らないのとバチバチに調整していないが故に何が飛び出してくるかわからないワクワク感や賞レースであることを感じさせない2人のやりとり、テレビ越しに伝わる熱量。感想で皆さんがJAZZのセッションと例えるのに合点がいく。
劇場通いを続けて、生で見る漫才はテレビで見るより数倍も面白く、ライブ感がたまらないことを知っているからこそ、終わった後マシンガンズのネタを生で見たい!と単純に思った。
あの熱量を直に浴びたい。
本ネタよりもそれ以外の部分が多い=全く同じネタは二度と見られないだろうなと感じたから。
点数が出た時の「点数低くないっすか?」に笑いつつ、おいしい準優勝になったんじゃないか?と今後が楽しみになっていた。

こうして3日かけて苦手な芸人が気になる芸人に昇格していった。

録画を見終わってから、大会の余韻を楽しむ為に感想などをTwitterで見ていると、番組の感想はもちろん、私と同じことを思った視聴者が他にもおり、その中にはイケおじのパーソナルカラーを予測する人もいた。
この頃からトレンドに名前が上がっているのを目にするようになった。

ラヴィットのファンでもあるので、ラヴィットの出演。しかも好きな曜日である水曜日に出演されたことに嬉しく思った。
「不発」とイジられていたが、私が思っている以上に卒なく食レポなどをこなされていた。
ただし、ラッピーに無茶振りされたり、プレゼントキーワードを出したり、ビリビリ椅子に座ったりが無かったので、次回の出演はそれが見られますように。

そしてラヴィットの出演日の夜。Twitterがざわついていた。
概ね「インスタのストーリーがヤバい」と言う内容だった。
ストーリーのリンクを貼っているツイートからリンクに飛んだ時に自分は顔ファンだと開き直ることを決意した。
速攻でTwitterとインスタをフォローした。
ネタを見てすごいなぁと思っていたはずなのに、顔ファンになるなど…と自分でも思ったが、自分のストライクゾーンど真ん中の塩顔男子が伏し目で写真に写っていたのだから好きになるのは当然のことじゃないか…と言い訳をしてしまう。

モテ始めてTwitterのトレンドに名前が出てくるようになったイケおじは自撮りを投稿し始め、いつしか#自撮りおじさんの創始者になっていた。
相方のイケメンムーブにあきれていたのに、いつの間にか自撮りを撮り始め、自撮りおじさんのハッシュタグを開発したのは落とす一言に外しがなく、これまた年齢の割にたまご肌の持ち主であるビジュ爆おじさんの相棒だった。

自撮りおじさんがバズりだした時期くらいにネガポジを聞き始めた。
ポッドキャストでアーカイブが残っていたのが1年前からで追いかけやすいのもありがたかった。興味をもったコンビのラジオを見つけたときに放送回数が1000を超えるのを見て速攻諦めた経験があったので、60回はそれより大分マシだぞと思い聞いていると、ガハハハハと豪快な笑いがやたら聞こえてくる。お互いの話で笑いつつ、意見が合わなかったりしても相手を下げていないから、こちらが思っている以上にコンビ仲がよさそうな雰囲気を感じた。
おじさんの身も蓋もないトークもさることながら、ラジオのコーナー的なものがなく、世間話とリスナーからのふつおただけで30分話し続けていることにもびっくりした。
また「モテたい」だの「キスがしたい」だの「不倫がしたい」だの正直すぎるかつ自分たちが1年後注目されるようになるなど全く思っていない等身大のおじさんのトークは聞いていて楽しい。
あの漫才をやってのける要素はこんなところから来ているのかとも思いながら、アーカイブを再生していくうちに顔ファンから箱推しに変わっていった。

マシンガンズにハマったことは自分の中でも青天の霹靂だった。
今まで好きな芸人は、大阪吉本出身の方ばかりだった。
大阪吉本の対義語?である東京のいわゆる他事務所の芸人にハマる日が来るなどお笑い好きになった時には思いもよらなかった。
だから、ラジオに出演しますとなっても調べたら関西ではエリアフリーを使わないと聞けない。ネタのライブに出演しますと見ても平日の夜。有給を取っても新幹線の終電には間に合わないし、夜行バスに乗る体力もない。
関東ローカルの番組に出演する情報を見たら珍しくTverでの配信がない番組だった…。
お笑い好きには最高の環境である関西住みであることを初めて歯痒く感じる。
また、吹奏楽の練習でネガポジの生配信がリアタイできなかったり、練習の予定が入るかもしれないからと「乱れ打ち」は応募すらできなかった。
20年以上続けている趣味を初めて恨んだ。

また、数年ぶりにTwitterで自分から呟いたり、ファンの方のつぶやきにいいねしたり、自分から同士をフォローをするようになったことにも我ながらびっくりしている。
タグ祭りに乗っかったツイートをいっぱい見てくださったり、イイねをいただいたりして、承認欲求を満たしたい気持ちがあったことにもびっくりした。

そんなこんなでファンになって2ヶ月が経つ。最初はいつまでこの熱が続くのか。半年後くらいに飽きちゃうんじゃないかとか思っていた。ズブズブに沼にハマっている今も心のどこかで思ってしまう。
ただ、2ヶ月間色々と追いかけて思ったのが
「このおじさん達思っている以上に沼が深い」
予選の結果発表で最初はうるさかったのに、勝って静かになったところとか。
出番前舞台袖で「これに勝ったらモテるぞ!」と言ってたところとか。
予選で甲高い笑い声を聞いて「鳥だ!」って言って見えない鳥を探し始めたこととか。
不倫したいと言いながら、家族思いな面が垣間見えたり、忙しい中で奥さんと夜散歩して写真を撮ってもらっているところとか。
人気が落ちたとしても「あの時のファンどこに行ったんだよ!」とネタにしそうで、どっちに転んでもおいしくできそうなところが強い。
お二人がこの先どこまで行けるのか見届けたい。と若手芸人に対して思うようなことをベテラン芸人に対して思うようになった。
とにかくあの漫才は生で体感したいなぁと思うので、自分の予定とお金と体力を考えて無理のない範囲で見に行きたい。

そんな中2008年に発売されたベストネタライブのDVDが再販されるとのこと。
2008年の私は「2人でブチギレててうるさいだけで苦手」と思っていたのに。あの頃の自分に「その芸人が15年後自分の好きな芸人になっていて、生写真を買ってデコるようになるよ」と言ったらどんな反応をするだろうか。
手元に届くのはもう少し先になるが、きっと2023年の私は15年前好きじゃなかったネタを見て大爆笑していると思う。
ネタは変わらないけど、私もお二人も15年経って色々あって変わっていったことがバチバチに今ハマった。
そのことに心を掴まれたのだから。

本当に人生って何が起こるかわからない。

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