見出し画像

#6 Universe

 先日、父親と数年ぶりにキャンプに行った。空前のソロキャンプブームに乗っかって親子キャンプをしたわけだ。弾力性のある快適な簡易ベッドや、重厚な大容量バッテリー、布の切り方によって火の形が変化するオイルランタンなど、外とは思えないほどの幸せな空間を作ってくれた。一点だけ減点するとしたら、地元のスーパーがあまりにも貧弱で、当初予定していた本わさびで刺身を食べるということが叶わなかったくらいだ。

 朝の9時には出発し、昼の12時にはサイトに着いた。一刻も早くカラカラな喉を潤すためのクラシックビールを飲むために、父との息の合った連係プレーで、最高の空間づくりを演出した。無事、その後のビールで私たちは昇天した。

 待望の一品目はホットサンドメーカーで作るチーズカレーパン。めちゃくちゃ美味かった。これでも昇天した。そして、今回のキャンプのサブメインの燻製をした。ラインナップはカマンベールチーズとタコ。タコは燻製に合わないだろうとさほど期待をしていなかったが、それを裏切るくらいの美味さだった。タコごめんね、でもタコのおかげでまた昇天したよ。

 お酒のすすみと共に日も進みすっかり夜になっていた。そんなときに唐突に聴きたくなった曲が、Official髭男dismのUniverseである。

「未来がどうとか理想がどうとか ブランコに揺られふと考えてた まぶたの裏浮かんだハテナ 僕は僕をどう思ってるんだろう」

 サークル長とゼミ長を務めている現在、集団のトップに立つことに慣れ、他人よりもどこか秀でていると錯覚してしまうことに恐怖を感じている。それが大学卒業後、就職して社会に揉まれることによる今との落差を自分は受け止めるのかも心配になっている。

 そんなことを普段恥ずかしくて言えないが、お酒の力を借りて父に相談することができた。

 父の回答はとてもシンプルだった。

『そんなことを考えられるだけで充分だと』

自分に自惚れず、リスクヘッジできていればいいのだろう。

まだ、父の言っていることを100%理解することはできてはいないと思う。
ただ、謙虚さも大切なのではないかとも思った。

人々は褒められると決まって、

「いえいえそんなことないですよ」と言う
それが日本人らしいとでも言うのか

しかし私はそれに多少の違和感を抱いている
努力した結果、褒められたんだからもっと喜べよと。その謙虚な姿勢が皮肉じみて見えてしまうのである

しかし父と話してるとそれも少し違うかもと思った

謙虚さとは目的ではなく結果で、
懸命に取り組む中でそれの奥深さを知り、自分を見つめ直し、それに至らない自分と照らし合わせて、結果皮肉のない謙虚な姿勢になるのかなと思った。

完璧な人なんていなくて、不合理なことばかり蔓延るこの世の中で、自分の理想とする存在を設定することは容易なことではないかもしれないが、少なくとも今時点では父には敵わない。そう簡単に越えられる壁ではないかもしれないし、一生をかけて越えられる算段は今のところない。ただ、そんな父に少しでも認められる存在になりたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?