手縫いへのこだわり
現在販売している作品は全て手縫いによる仕立てになっています。
その理由や、ミシン縫いとの違いについて。
なぜ手縫いにこだわるのか
本当のところ、一番の理由はミシンがないから。
布用の家庭用ミシンはありますが、革をちゃんと売り物として縫うには革に対応したミシンが必要で、中古でも20万円もする高価な機材。
ミシンなくて手縫いを選ばざるを得ない!で片付けてしまうとここで話が終わってしまうので(汗)
こだわりや手縫いならではの特徴などに触れてみます。
手縫いのメリット
縫い目がきれい
これは製作者の腕次第というところになりますが、まっすぐ縫う、曲線をきれいに縫うには意外と高い技術力を要します。
手縫いの場合、いきなり針を刺すのではなく、あらかじめ縫い穴を空けます。
(布と違って、人力では1ミリ程度の厚さでもなかなか針を刺せません。)
フォークみたいな道具をハンマーで叩き、穴を空けてから針を刺していきます。隣の穴とのつながりはもちろん、まっすぐ刺さらないと貫通した裏側の穴が繋がらずガタガタに。
まっすぐな縫い穴を空けるためにはまっすぐなガイド線を引く必要がありますし、穴空けに関しても、この菱目打ちという道具を刺す深さを一定にして穴のサイズを揃える、縫う際に1目1目糸を引き締める強さを一定にする。
このようなポイントを全てクリアすると、ミシンに負けないような、ミシンを上回る丁寧な縫い目が仕上がるのです。
ハードルを上げましたが、慣れです。根気よく続けられる人であればこのレベルまで来れます。
糸が違う
私が作るものは全て麻糸を使用しています。革製品はエイジングを楽しみながら使っていくものなので、糸も合わせてエイジングして欲しいなと思っています。
一般的にはミシンですと強度もある化繊のポリエステル製の糸が使われます。太いものでは麻糸も使われることがあるようですが、ミシンのパワーに負けて切れてしまいます。
麻糸は天然素材で毛羽立ちが多いため、縫う際にはロウ引きという蝋に糸を擦り付けてコーティングを行なってから縫います。この一手間により強度を上げたり、糸の緩み防止にも一役買っています。
強度が高い
ミシン縫いとの一番の違いはここです。
ミシンでは上糸・下糸と分かれていますが、手縫いでは1本の糸の両側に針をつけて、縫い目1目ずつ糸が上と下、交互に交差して縫い目を構成していきます。そのため、1箇所ほつれて切れたとしても、すぐにバラバラになることはありません。ミシンの場合ですと1箇所切れると上糸と下糸が分離してしまい、全体の糸が解けることがあります。
洋服などで、ひょっこり出た糸を引っ張ったらどんどんほつれが広がった!という経験があると思います。(ないですかね?)
もっとも、ミシン糸もかなり丈夫なのでそう簡単には切れませんのでご安心を。
たのしい🙂
なんだかんだ、たのしいんです。それが続く秘訣。
お気に入りの音楽を聴きながら、お気に入りのコーヒーを飲みながら、無心で縫っているといつの間にか終わっています。
手縫のデメリット
時間がかかる
これですよ。
想像してみてください。家庭科の授業。
針に糸を通す作業。あれが財布1つ作る中で40〜50回発生します。嫌でしょ?
糸通しくらいは慣れてしまえば手元を見なくても一瞬で通せますが、縫う作業はどうしても時間がかかるもの。
縫いの1単位は
上の糸を下に通す→同じ穴から下の糸を上に通す→両側の糸を均等に引っ張って縫い目を締める という工程。
こだわりとして3mm目(1つの縫い目が3ミリ)を基本的に採用するので、1センチ縫うにはこれを3回とちょっと。小さい財布でも下手すると通算で100センチ以上縫っています。単純計算で縫い目がおよそ330個、つまりは660回くらいは針をチクチクやるわけです。
なので、ミシンを使えるなら使いたいな、と思うことはあります。
機械って便利なんです。歩くか車乗るか、どっちがいいかっていう話。
田舎暮らしなので、100m先のコンビニ行くのにすら車使いますもんね。
価格が上がってしまう
市販品をみると、ハンドメイドって高く感じますよね。
理由は大ロットで仕入れができない分で原材料費が高いというのも一因ではありますが、大部分は作成時間がかかってしまうこと。
いくら熟練の職人でもミシンより早く縫える人はいませんから、ミシン縫いより時間をかけて制作されます。その分の人件費を追加させてもらっています。
私なんかは仕事が早くないため、馬鹿正直に時給として掛け算で計算すると相場とかけ離れたものになってしまうので、いただく利益としては地方のコンビニバイト以下の時給ということも。商売が下手なのが課題です。
ただ、かかっている時間が違う分、価格競争は行いません。量産品と比較して「高い!」と思ったら量産品を買うべきです。
そう聞くと「革職人の手仕事一点物」といった感じでハードルが上がってしまいがちですが、なるべくそうならないよう、手の届く範囲で気軽にお使いいただける商品をご用意しています。