『オーバーウォッチ2』タンクで萎えていた人はそろそろ復帰していいかもしれない

オーバーウォッチ2Overwatch2)』は『オーバーウォッチOverwatch)』の形式上の続編で、アメリカのゲーム開発会社『Blizzard Entertainment』が開発した基本無料マルチプレイヤーヒーローシューター。前作『オーバーウォッチ』を購入していればアップデートが行われた。当初はPvEに力を入れており、スキルツリーの実装が想定されていたが、実装が中止され定期開催されるおまけモードの強化版のようなストーリーモード(有料)に変更されたことに落胆した記憶がある。

『オーバーウォッチ』の情報を集めている際にふと目に入った記事がある。過去から現在まで論争が繰り広げられている問題。それは「5v5対6v6」の議論だ。2024年7月25日にblizzard公式サイトの記事「ディレクターの視点」で「6v6」から「5v5」に変更した理由に関して声明があった

要約をすると5v5へ移行する理由として、6v6フォーマットには戦闘の膠着やストレスの問題があり、特にタンクが2名いることでゲーム展開が遅くなることがあった。そこでプレイヤーの自由度やゲームのバランスを改善するために、5v5への移行が決定したという。そして大きなメリットとして挙げられているのはマッチングの待ち時間が減ったことだ。

事実として、タンクを減らしたことによりマッチング速度は以前より上がってはいるが、依然としてタンクは不人気のままとなっている。その大きな理由は「タンクの役割」だと考える。

「ダメージ」ロールが人気な理由として、純粋に敵を倒すことやフランカーとして敵のサイドをとり妨害する立ち回りなどが主な役割となる。しかし「タンク」ロールはダメージを与えるのではなく敵に圧をかけ『エリアを広げる』ことが主な役割だ。そのためタンクは重要なロールでありバランス調整の対象になりやすいのだろう。そしてなぜか人数を減らされていない「サポート」が「タンク」と同じくらいに待ち時間が短くなっていることが分かる。これが今作がコミュニティで「戦略性が減った」と言われる理由を明確にする。

以前まではコミュニティでそれぞれキャラクター毎に「メインヒーラー」と「サブヒーラー」で分けられていた。メインヒーラーは回復量の多いキャラで常に回復を行うことが仕事となり、サブヒーラーは戦闘にも積極的に参加する。そこで「6v6」から「5v5」に変わり大きく評価が変わったキャラクターが「モイラ」というキャラだ。性能は広範囲回復か1体の敵に攻撃するメインと、範囲回復か範囲攻撃ができる玉を出すスキルと、一瞬消えて無敵の高速移動が行える移動スキルを持っている。「6v6」当時は「攻撃と回復しかできないキャラ」としてトップ層では使用されないキャラで有名だった。当時は2タンク制で倒れにくく、一人減っても持ちこたえることができたので、バフやデバフ、クラウドコントロールが行えないサポートの需要が低かった。しかし「5v5」になってからは、モイラの広範囲回復と攻撃、それと生存能力の高い移動スキルに注目が集まった。スキル仕様は変わっていないにもかかわらず、トップ層も使うキャラとなったのだ。

タンクも同様に「メインタンク」や「サブタンク」と分かれていたが、ダメージにはそのような分け方はない。キャラ毎の立ち回りに違いはあれど、ダメージは過去も現在も攻撃を行うことが仕事だからだ。
上記の点をみても「5v5」では「6v6」のように戦略的に立ち回るより全員で攻撃に参加するような動きが推奨されていると分かる。だが悪い点だけではなく、ゲーム側で説明のない座学が以前より不要になったことで、新規の参加ハードルは下がっている。

別のマッチング待機時間の減少理由

他にもマッチング待機時間が減った理由として、無料化した点と『オーバーウォッチ2』に名前を変更したことだと思われる。無料化したことにより、名前は知っているが買うまでにはいたらないユーザーが触れる機会を作り『オーバーウォッチ2』と名前を変更したことで”新作”という立ち位置で宣伝を打った。これにより新規の獲得に成功した点が大きい。

タンクはなぜ不人気なのか

前述したとおりタンクはゲームメイカーとなり試合を大きく動かす存在ではあるが、純粋な撃ち合いをするロールではない。楽しみ方としては「シューター」というよりは「MOBA」系に近い感覚だ。ダメージやサポートのフォローをして押し上げることが仕事なので、自身の活躍が分かりづらい点が不人気になる原因だろう。今作では5v5で1チーム1タンクとなり、タンクがやられた時点でそのウェーブは負けがほぼ確定するというプレッシャーも相まって、さらにタンク人口は減っていくことになる。

しかしタンクにさらなる追い打ちをblizzardは行う。シーズン9で「ダメージ」ロールに「敵に攻撃を当てると回復量が20%減少する阻害」というロール・パッシブだ。特に盾を持たず機動力のないタンクは、敵に体を晒すことが難しくなり『タンク』としての役割を果たしづらくなった。これによりタンク人口減少に拍車がかかり、タンク以外の待ち時間はさらに長くなっていった。

これからのタンク

直近のアップデートにより、タンクに希望の光が見えてきた。それが「シーズン10」のミッドシーズンアップデートだ。今までのタンクはサポートとセットで動かなければすぐに倒されてしまうほど柔らかかったが、全タンクへのパッシブとしてヘッドショットダメージの軽減やアーマーの強化が行われた。

開発陣は「シーズン9」からタンクが厳しい状況にあるとの意見に同意しており、タンクが「硬さがない」とされ、サポートと一緒に行動しなければならない場面が多く、ゲームプレイに制約が生じていることを認識した。新たに「Tankiness」指標を導入し、タンクのデス数が本来の期待値と比較して多いことを示している。これによりタンクの弱さがデータでも裏付けられていると判明した。ヒーローごとの個別調整を進め、タンクの硬さを増すための調整を行い、シーズン11中盤かシーズン12に成果を反映する予定とのこと。

blizzardは失った信頼を取り戻そうとしている

以前からなにかと批判される会社で、バランス調整は一番人口の多い「ダメージ」ロールを中心に行われ、マッチングシステムも悪く、改善案を出してもプレイヤーの声を反映しない会社だとプレイヤーに思われている。フォーラムや様々なコミュニティでも、最近リリースされたスチーム版のレビュー欄でも批判的なコメントばかりを見かける。しかし現在はできるだけプレイヤー達の意見を取り入れようとしている姿勢を見せている。分かりやすいところでは『オーバーウォッチ2』からアップデートの度に書かれる「ディレクターの視点」だろう。開発側の考えを共有し、プレイヤー達と対話し、信頼を得ようとする姿勢が見て取れる。

一度失った信頼を取り戻す為には時間がかかるだろう。しかし確実に少しづつだが改善の兆しは見えつつある。一度引退した人も、少し気になっている人も、この機に現在のシーズンを少し触ってみて「現在のオーバーウォッチ」を確かめてみてほしい。

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