爺ちゃんとミノルの会話(1)

(1)
 
 
「一人でも仙人とはこれいかに?」
「誰?あ!お爺ちゃん」
「一人でも仙人とはこれいかに?」
「なんだよ(笑)」
「無理問答だ、お前のとんちを使ってみな」
「一人でも千人とはどういうことかでしょ?」
「そうじゃ」
「簡単だよ(笑)仙人でも住人というがごとし」
「お~やるじゃないか(笑)」
 
 
「お爺ちゃんどうしたの?」
「たまにはミノルに会いに行こうと思っての」
「お爺ちゃんは元気そうだね」
「しばらく仙人をしていたから元気になったよ」
「仙人って?」
「仙人は冗談じゃけど、しばらく自然の中におったんよ」
「相変わらず方言丸出しだね(笑)」
「これでも頑張って標準語をしゃべっちょるんじゃがの(笑)」
「これで?(爆笑)」
 
 
「ところで学校はどうじゃ?」
「いまのところ普通通りよ」
「いまのところって?」
「新型コロナの感染がおさまっているからね」
「新型コロナって何じゃ?」
「お爺ちゃんは知らないんだ」
 
 
 
(2)
 
 
「山ごもりしちょったからの」
「新型のインフルエンザが世界中に蔓延したの」
「で?コロナって何じゃ?」
「ウィルスの形が太陽のコロナに似ているって聞いたよ」
「そうなんか~」
 
 
「それでね感染者が多い所は緊急事態宣言が出てるんだよ」
「東京は感染者が多いんじゃろうの~」
「都会は人が多いからね」
「山の中で暮らすと関係ないから安全じゃな」
「そうだね」
「山の中でも気がかりがあるんじゃが」
「なに?」
「入道雲が頻繁に通っていくんじゃ」
「積乱雲という雲だね」
「ミノルなにか知っちょるか?」
「それは線状降水帯だって」
「せんじょうこうすいたい?そりゃあ何じゃ?」
「チョット待ってねスマホで検索するから」
「便利になったもんじゃの~(笑)」
 
 
「次々と発生した雨雲が・・・」
「それ以上読まんでもええ。意味はわかった」
「原因は温暖化だってテレビで言ってたよ」
「気候変動やら異常気象は前から言っちょったからの~」
 
 
 
(3)
 
 
「雨も気温も極端だって言ってたね」
「山も保水力を超えて雨が降ると山が壊れるの~」
「どうすれば良いんだろう?」
「個人がどうにもならんじゃろう」
 
 
「学校でも地球温暖化を止める方法を考えたよ」
「ほ~どんなことを考えたんじゃ?」
「二酸化炭素の発生を少なくすることなんだって」
「温暖化の原因の一つが二酸化炭素じゃからの~」
「それでね無駄なゴミを出さないとか節電するとかするの」
「そんなことで温暖化は止まるんかいの~」
「それを言ったらダメだよ。出来ることから始めなきゃ」
「ゴメンゴメン地球規模の問題が解決できる気がせんのんじゃ」
「僕も想像できるけどね(笑)」
 
 
「政府は何か対策は考えているんか?」
「2030年までに温暖化ガスを13年度の46%にするんだって」
「へ~そんなことじゃ気候変動はおさまらんじゃろう」
「じゃあどうすれば良いの?」
 
 
 
(4)
 
 
「温暖化の原因が何なのかがわかりゃあええんじゃ」
「人間の生き方が問題だって聞いたことがあるよ」
「人間の生き方は社会のシステムで決まるんじゃ」
「社会のシステムって?」
「そりゃあ経済活動のことなんじゃ」
「経済活動って?」
「インターネットで検索してみな」
「わかった」
 
 
「え~とね、経済学用語の一つで、人間の社会生活において金銭や物資の交換を行うということによって生活を成り立たせていくという部分のことを言うだって」
「それが原因なんじゃ」
「だって僕たちは経済があるから生活できているんでしょ?」
「それが大きな間違いなんじゃ」
「何が間違ってるの?」
「山の中で暮らしているとの~、自然の恵みで生きちょるのがわかるんよ」
「自然の恵みだけじゃ生きれないよ」
「ええか?家も車もテレビも服も食べる物も飲み物もどうやって出来ちょるかわかるか?」
「そりゃあ人間が働いて作ったからでしょ?」
 
 
 
(5)
 
 
「じゃあ聞くがそれらの材料はどこから持ってくる?」
「地球の資源だよ」
「地球さんからの恵みじゃろうが」
「うん」
「地球さんにお金を払う必要があるか?」
「そうだね人間しかお金は使わないよね」
「人間の都合で自然を利用して自然のリズムを壊してしもうたんじゃ」
「そういうことか」
 
 
「人間に生活のリズムがあるように地球にもリズムがあるんじゃ」
「そうなの?」
「山の中で暮らすとそれがようわかるんじゃ」
「それで山の天気がおかしいって言ったんだね」
「そうなんじゃ。それでも温暖化の原因がわかっても経済活動はなかなかやめられんじゃろうの~」
「無理だと思うよ」
 
 
「これ以上温暖化が進まんような対策は必要じゃがの。もっと大切なことがあるんじゃ」
「なにが大切なの?」
「学校では教えてくれんのか?」
「温暖化が原因で異常気象や気候変動はすぐにはおさまらんのじゃ」
「どうして?」
 
 
 
(6)
 
 
「自然というのはの~、悪うなるのは早いけど良くなることには時間がかかるんじゃ」
「人間の病気みたいなもの?」
「ほ~例えがええの(笑)」
「そう?(笑)」
「大雨や洪水で田畑が壊れることもあるから食糧不足は覚悟をしたほうがええの」
「世界中で水不足になったら食糧不足になるって言ってたよ」
「異常気象というのは不思議なもんじゃの~」
 
 
「食品ロスも無くそうって言ってたね」
「食べ物を無駄にしてはいけんのは誰もが知っているはずじゃ」
「それなのにいっぱい捨てているんだって」
「なぜ捨てなきゃいけないかわかるか?」
「いっぱい作り過ぎるから?」
「それもあるの~」
「他にもあるの?」
「お店の売れ残りが多いんじゃないのか?」
 
 
「テレビで見たよ売れ残りを集めて処分しているって」
「売れ残りがゼロになったらすごいと思わんか?」
「そんなこと出来るの?」
「その日のうちにすべて無料で配るんじゃ」
「タダで配るの?お爺ちゃんらしい発想だね(笑)」
 
 
 
(7)
 
 
「そんなことをしたらお店で買うのをやめる人が多くなるよ」
「そりゃあ困ったもんだ(笑)」
「無料になるまで我慢するよ(笑)」
「お店も儲からないと困るからの~、じゃあどうすりゃあええかわかるか?」
「わかんないよ」
 
 
「わしがいま思いついた案じゃがの、先日買い物をした人だけ同じ金額の物をタダで上げるというのはどうじゃ」
「それならタダで配るより良いかもね(笑)」
「売れ残りの廃棄処分は激減すると思うけどの~」
「そういえばリサイクルセンターの建設が増えるって聞いたよ」
「そりゃあどんなんじゃ?」
「あらゆる製品や食料の廃棄するものを集める所だって」
「なんとなくわかる」
 
 
「え?わかるの?」
「循環システムって知っちょるか?」
「なんとなく」
「資源を無駄なく使おうってことなんよ」
「なるほどね~」
「リサイクルセンターってパソコンで検索してみてくれんか?」
「わかった、チョット待ってね」
「近ごろは子どもでもパソコンを使うんじゃからすごいの~」
 
 
 
(8)
 
 
「出たよ大規模リサイクルセンターというのがおもしろそう」
「大規模リサイクルセンター」
https://plaza.rakuten.co.jp/chienowa/5033/
 
 
「ほ~♪なかなかよく出来たシステムじゃのう」
「これなら資源が無駄にならないみたいだね」
「こういうのが今の社会に出来れば良いんじゃがのう」
「出来るんじゃないの?」
「これが出来たら経済活動に支障が起きるじゃろう」
「どうして?」
「資本主義社会じゃあ儲けにならんことはせんじゃろうが」
「でも良いことはやって欲しいよ」
「そうじゃのう、儲ける必要のない社会ならええんじゃがのう」
 
 
「仙人みたいな暮らしをしている爺ちゃんが考えそうな話だね(笑)」
「温暖化の原因は経済活動じゃからの。経済活動はお金を流通することなんじゃ」
「それで儲かる必要のない社会が良いってことだね」
「みんなが必要とするものを必要な量だけ作って循環させりゃあ良いんじゃ」
「何となくわかったよ」
 
 
 
(9)
 
 
「ねえ、お爺ちゃん山の中で暮らしていて寂しくないの?」
「ほ~しばらく考えたことがないの~。ところで寂しいってなんじゃ?」
「寂しいって知らないの?」
「寂しいという意味は知っちょるがの~、寂しいと思うことがわからんのじゃ」
「僕は友だちといる時は楽しいよ。一人ぽっちでいる時は寂しいね」
「そっか~、一人でゲームをしている時はどうじゃ?」
 
 
「寂しくないかも」
「そうじゃろう?楽しい時間は寂しゅうはないじゃろうが」
「そうだね(笑)」
「お爺ちゃんも楽しい時間が寂しくないんじゃ」
「山の中では楽しいの?」
 
 
「山の中だけじゃないど、自分が健康でいろんなことが出来ることが楽しんじゃ」
「何でだろう?」
「それはな・・・そのうちわかるじゃろう(笑)」
「教えてよ(笑)」
「いっぱい勉強していっぱい経験してそれをどうやったら楽しめるか知恵を出すんじゃ」
「ふんふん・・勉強しなきゃいけないんだね」
「知識は道具なんじゃ、いっぱい道具を持っちょるといろんなことが出来るんじゃ」
 
 
 
(10)
 
 
「そっか~いろんなことが出来るって楽しいよね」
「それだけじゃないぞ。とくに山の中は命がいっぱいなんじゃ」
「命がいっぱいって?」
「すべてが生きちょるんじゃ」
「動物や昆虫とか?」
「それだけじゃないぞ、木も草も川も鳥もすべてじゃ」
「みんな生きてるんだね」
「そうなんじゃ。わかったか?」
「うん」
「学校で勉強する意味がすこしわかったか?」
「うん、勉強もチョット頑張ってみる」
「チョットだけか?(笑)」
 
 
「なあミノルよ。今年は小学生最後の年じゃろう?」
「うん、そうだよ」
「近ごろの小学生の夢は何だ?」
「僕の友だちはプロ野球とかお医者さんとかいるよ」
「ほ~良いことじゃないか」
「社会の役に立ちたいと思ってる友だちは多いよ」
「ほ~感心じゃのう。ほんでミノルはどうなんじゃ?」
「僕?サラリーマンが良いよ」
「なんでじゃ?」
「あまり頑張らなくても毎月給料がもらえるから」
「ハハハハ現実的じゃのう」
 
 
 
(11)
 
 
「友だちの中には給食費が払えない子がいるんだよ」
「そっか~。国が守ってくれるとは言え辛いの~」
「だからね、やりたい仕事よりお金に困らない仕事が良いと思ったんだ」
「そりゃあ辛いの~」
「だからね、楽をして簡単にお金が儲かる仕事を選ぶ子もいるよ」
「どんな仕事を考えているんじゃ?」
「それはね株で儲けるとか、ブログを作って広告を載せるの。売り上げの何パーセントか貰えるんだって」
 
 
「ほ~近ごろは株以外にもいろいろあるんじゃのう」
「テレビゲームを作ったり戦ったりして儲ける方法もあるよ」
「お金儲けっていろいろあるんじゃのう」
「だから僕は毎月キチンとお金がもらえる仕事をしたいんだ」
「社会に必要とされる会社じゃったら社会貢献にもなるからの~」
「でしょ?」
 
 
「ミノルは会社員以外にやりたい仕事は無いんか?」
「本当はね、宇宙飛行士なんだ」
「そりゃあまたでっかい話じゃのう(笑)」
「でも無理だと思うよ」
「何でじゃ?」
 
 
 
(12)
 
 
「高所恐怖症だから(笑)」
「そっか~、そうじゃろうの、お爺ちゃんも同じじゃ(笑)」
「お爺ちゃんもそうなの(笑)」
「そう言やあ星空が好きじゃったの~」
「うん、お爺ちゃんの撮った天体写真を見るのも好きだったよ」
「そっか~、嬉しいのう」
 
 
「ミノルこんなことを考えたことはないか?」
「こんなことって?」
「お金を稼がんでも好きな仕事をしたいって」
「それは趣味のことじゃないの?」
 
 
「趣味は仕事じゃないからの」
「好きなことは仕事にならないってお父さんが言ってたよ」
「仕事はお金を稼ぐこと好きなことは趣味でやること。それが普通じゃからの~」
「だから友だちは好きなことでお金を稼ぐ仕事を選ぶんだね」
「そうじゃの~。お金を稼がんでも生活できる社会なら誰もが好きな仕事を選ぶんじゃがの」
「そんな夢のような社会が出来たら良いな」
 
 
「それに近い社会は出来るぞ」
「ホント?」
「みんなが作ろうと思えばがじゃが(笑)」
「それってどんな社会なの?」
 
 
 
(13)
 
 
「パソコンで調べてみな」
「わかった、何を検索すればいいの?」
「ベーシックインカムと書いて検索してみろ」
「所得補償制度の一つですべての国民に一定額の生活費を支給する制度だって」
「簡単に言うとそういうことじゃのう」
「これってお爺ちゃんがもらっている年金のようなものだね」
「そうなんじゃ。すべての国民が生活できるお金を保障する制度なんじゃ」
 
 
「それなら安心して好きな仕事が出来るんだね」
「だから誰もが働くことが楽しくなるんじゃ」
 
 
「そんなに良いことならベーシックインカムをやれば良いのに」
「それがの~反対する者が多いんじゃ」
「どうして反対するの?」
「財源が無いだの、働く人が居なくなるだの、資源が無駄に使われるんじゃないかとかの」
「お爺ちゃんの話なら働くことが楽しくなるんじゃないの?」
「今の世の中は働くことは辛いことだと思い込んでいるからの~」
「だから遊んで暮らしたいって思っているんだね」
 
 
 
(14)
 
 
「宝くじが当たったら仕事を辞めて遊んで暮らしたいと思う人は多いじゃろうが」
「そんな話はよく聞くよね(笑)」
「日本には勤労の義務があることを忘れての(笑)」
「働くことは楽しいことだと思ってもらうにはどうすればいいんだろう?」
「そうじゃの~やっぱりベーシックインカムがええの~」
「さっき反対意見が多いって言ってたじゃないの」
 
 
「最初は金額を少なく支給して働いて生活費を稼ぐんじゃ」
「それなら残業もしなくて良いし好きな仕事を選べるね」
「そういうことじゃ」
 
 
「それから先どうなるの?」
「ベーシックインカムの支給額を増やしていくと本当に必要な仕事だけ残るんじゃ」
「本当に必要な仕事って?」
「お金儲けの仕事じゃのうてみんなが楽しゅう働ける仕事と生活に必要な仕事じゃな」
「そうすればストレスなんか無くなるかもしれないね」
「働く仕事が少のうなりゃあ一人当たりの労働時間も少のうなるじゃろう」
 
 
 
(15)
 
 
「どのくらい働けばいいんだろうね」
「一日4時間も働けば充分じゃろう」
「それなら遊ぶ時間も増えて働くのが辛くないね」
「お前もお父さんと遊ぶ時間が多いとええじゃろう(笑)」
「うん」
 
 
「ねえお爺ちゃんお爺ちゃんは誰の山の中にいるの?」
「ご先祖さんからの預かり物じゃ」
「預かり物って?」
「わしの物じゃないっちゅうことなんじゃ」
「じゃあ誰の物?」
「地球の物(爆笑)」
「そりゃあそうだろうけど(笑)」
「なんでそんなことを聞くんじゃ?」
「テレビで見たけどね自然を大切にしょうって大人は言うけど不法投棄が多いんだよ」
「そりゃあ昔からある問題じゃのう」
 
 
「だからね、山を持っている人の責任じゃないかって思ったの」
「昔から思ったことなんじゃがの。所有権という権利が邪魔をするんじゃ」
「所有権って?」
「わからんにゃあ検索してみ」
「え~とね、法令の制限内で自由にその所有物の使用、収益および処分をする権利だって」
 
 
 
(16)
 
 
「そうじゃろう。所有物を自由に使ってもええってことじゃろう?」
「うん」
「じゃあ使用権というのを検索してみ」
「わかった。え~とね・・・長い文章だよ(笑)」
「じゃあわかりやすい所だけ読んでみ」
「え~とね、通常使用権はもう少し弱い権利で商標権者に使用を許容してもらったにすぎず、独占的使用までは認められないって」
 
 
「これを読んで何がわかったか?」
「物を売ったり買ったりする時は所有権がいるけど使うだけだったら使用権で良いと思った」
「そうか、そこまでわかったか。すごいの~」
「それでお爺ちゃんはさっき預かり物って言ったんだね?」
「そうなんじゃ。わしが生きている間だけ使わせてもらっているんじゃ。そしてお前たちのために管理しているってことなんじゃ」
「そうなの?それなら大切に使うってことなんだね」
「所有権があるから自分の土地にゴミを捨てたりゴミ屋敷なんかが増えるんじゃ」
 
 
 
(17)
 
 
「だから所有権をなくして使用権だけで良いって言うことなんだね?」
「そうなんじゃ。使用権だけなら借りた物じゃから大切に使うじゃろう。使わんようになったら誰かに使ってもらえばええんじゃ」
「それならみんなが大切に使うよね」
 
 
「ねえお爺ちゃん山の中にいて大雨が降ったとき避難したことあるの?」
「そういやあ有線で避難の話を聞いたことはあるけど避難したことはないの~」
「危なくないの?」
「お爺ちゃんの所は山崩れは心配ないんじゃ。それより都会が怖いの~」
「そうだよ。地震も怖いけど大雨の時の洪水が怖いよね」
「都会の避難場所は今でも公民館とか学校じゃろうの」
「そうみたいだね。僕は避難ってしたことないよ」
「公民館とか学校は居心地が悪いからの~」
「近ごろはプライバシーが守られるんだって」
 
 
「もっと良いところはないもんかの~」
「僕ならゲームセンターが避難場所なら行きたいよ」
「そりゃあええアイデアじゃないか(笑)」
「お爺ちゃんならどんなところが良いと思う?」
 
 
 
(18)
 
 
「そうじゃの~映画館なんかがええかの~、演芸場も温泉旅館もええの~♪」
「それならレジャーセンターが良いんじゃないの?」
「そりゃあ誰もが行きとうなる場所じゃの~(笑)」
 
 
「災害時だけでなく猛暑日なんかも良いんじゃない?」
「どうしてじゃ?」
「猛暑日ってエアコンを使うでしょ?電気を節約するなら家にいるよりレジャーセンターで過ごしたほうが良いって思うよ」
「そりゃあ名案じゃのう(笑)家におるより娯楽施設におったほうが退屈せんでええの~こりゃあええわ(笑)」
「でしょう?(笑)」
「夏のエアコンは要るからの~電気代もバカにならんからの~」
 
 
「ねえお祖父ちゃん」
「なんじゃ?」
「山では太陽光発電所がいっぱい出来ているって聞いたよ。お爺ちゃんの所は作らないの?」
「そうじゃの~。そういう話はあったけど断ったんじゃ」
「何で?」
「先祖から預かった山から木をなくすのは心苦しゅうての~。近所の山やら休耕田には太陽光発電所は出来ちょるぞ」
 
 
 
(19)
 
 
「これから太陽光発電がいっぱい出来ると自然が壊されるのかな~?」
「自然が壊されんのじゃったら大賛成なんじゃがの~。むかし聞いた話じゃがフリーエネルギーというのはどうなったんじゃろう?」
「フリーエネルギー?」
「そうじゃ。パソコンで調べてみ」
「わかった」
「何かわかったか?」
「難しい漢字が多くて読めないよ」
 
 
「そっか~。じゃあわしが知ってることを言(ゆ)うてみようか?」
「お爺ちゃんは知ってるの?」
「友だちからむかし聞いた話じゃがの、フリーエネルギーの発電機を見たって言うんじゃ」
「え~本物を見たの?」
「そうなんじゃ。本物かどうかわからんがの。モーターは電気で回ることはわかるじゃろ?」
「うん、わかるよ。学校でモーターを作ったことがあるよ」
「その回るモーターがコンセントを抜いても回り続けるんじゃ」
「コンセントを抜いたら電機が行かないからモーターは止まるよ」
「それが止まらんのんじゃ」
 
 
 
(20)
 
 
「そんなことあるわけないじゃん」
「それがあるんじゃ(笑)」
「どうして回り続けるの?」
「それがじゃの~、空気中のエネルギーを利用して回るんじゃって。不思議じゃの~」
「空気中のエネルギーがフリーエネルギーのことなの?」
「そうらしいんじゃ、まったくもってわからんの~」
「モーターが回ったら電気を作るんでしょ?」
「そうじゃの~、だから燃料の要らん発電機が出来るっちゅうことじゃの~」
「そんなのがいっぱい出来たら良いね」
「ほかに何かおもしろい物は無いか?」
 
 
「こんなのはどう?」
「なんじゃ?」
「水で車のエンジンを動かすって」
「水は燃える物じゃないじゃろうが?(笑)
「それが燃えるんだって」
「なんでじゃ?」
「水はH2Oでしょ?Hは水素でOは酸素。水素は燃える物で酸素は燃やす物だって」
「そりゃあ知っちょるけど水が燃えることなんてないよの~」
「水を燃やすんじゃなく水を燃料として水を分解すれば良いんじゃないの?」
 
 
 
(21)
 
 
「ようわからんが・・・納得するような・・・ようわからん(笑)」
「何でも良いから環境を壊さないエネルギーが出来たら良いね」
「そうじゃの~それがええけどの~経済活動が邪魔をするからの~」
「お金儲けにならないと出来ないってお爺ちゃんが言ってたこと?」
「そうなんじゃ」
「今は何でもお金が要るからね」
 
 
「全部無料ならええんじゃがの~(笑)」
「お金を稼がなくてもいい社会なら無料ってことだよね(笑)」
「そうなんじゃ。お金がないと何も出来ん社会って不便じゃの~」
「お金を稼がなくてもいい社会って実現できないの?」
「やっぱりその話に行き着くんか?(笑)」
「日本だけやれば良いのに」
「そりゃあ無理じゃ」
「どうして?」
「外国との取引でもお金は要るじゃろうが」
「そうだった(笑)じゃあどうすれば良いんだろう?」
「それはの、世界中で一緒にやらんにゃあ出来んことなんじゃ」
「とんでもないスケールだね」
「取っておきのえ~方法があるんじゃ」
「どんな方法なの?」
 
 
 
(22)
 
 
「それはの、世界が一つの家族のような関係を作るんじゃ」
「なぜ家族のようになればいいの?」
「家族じゃったらお金のやり取りなんかせんじゃろうが」
「そういうことか(笑)」
「お前なんか家の中で勝手に冷蔵庫の中のジュースを飲むじゃろうが」
「うん。お金なんか払わないよ(笑)」
「それが出来ればええんじゃがの~」
「簡単には出来そうもないよ」
 
 
「じゃあこのように考えて見るのはどうじゃ」
「どう考えるの?」
「地球が一つの家なんじゃ。一つの家族じゃからの。それぞれの国は部屋と考える」
「なるほど。部屋の壁が国境ってことだね?」
「そうじゃ。それぞれの部屋には資源が多い所とか技術の優れた住人もいればその反対もある」
「あ!わかった。みんなで困っている人を助けるの?」
「それは今でも国連や平和団体がやりょうるじゃろう。そうじゃのうて困る人がおらん社会を作るんじゃ」
「困る人がいない社会って?」
 
 
 
(23)
 
 
「ミノルの家の中を思い出してみ。衣食住が満たされちょるじゃろうが」
「あ~世界中の人が家の中で安心して暮らせる社会ってことなの?」
「そうじゃ」
 
 
「そんなこと簡単に出来るの?」
「それはの~。無理と思えば実現せんのんじゃ」
「どうして?」
「無理と思えば実現するための行動は起こさんじゃろうが」
「そうだね。出来もしないことは最初から何もしないよね」
「そうなんじゃ。出来るかもしれんと思えば出来るように知恵を出すんじゃ」
「そっか~。出来る方法を考えて行動するから実現するんだね」
「ようわかったの~(笑)」
 
 
「学校の授業で世界平和は難しいって習ったよ」
「どうして難しいか聞いたか?」
「考え方も宗教も習慣も違う人達が一つにはなれないって」
「そりゃあ昔から言われちょる話じゃからの~」
「でしょう?」
「それでも出来る方法は習わんかったか?」
「みんなが交流を深めたら良いって習ったよ」
「ええとこ突いちょるの~」
「それが良いの?」
 
 
 
(24)
 
 
「互いが仲良しじゃったら戦争なんか起きんじゃろうが」
「そうだね」
「仲良しだけじゃのうて、互いが必要とし合う関係がもっとええんじゃ」
「互いが必要とし合う関係って?」
 
 
「社会の中の関係とよう似ちょるんじゃ」
「なんだか話が違うような(笑)」
「同じじゃ。ええか?電気を作る人たち、服を作る人たち、靴を作る人たち、野菜を作る人たち」
「わかった!いろんな人たちがいるから社会が成り立つって言いたいの?」
「そうじゃ、ようわかったの。日本は資源が少ない国じゃ、外国の資源に頼らんにゃあいけん」
「そっか~互いの国が頼ったり頼れられたりする関係と言うことなんだね?」
「さすがにわしの孫じゃ(笑)」
 
 
「今はお金さえ払えば何でも買うことが出来るけどお金のない人や国は何も手に入らないから困っている人や国がいるってことなんだね」
「そういうことなんじゃ。じゃからお金のやり取りをせんでもみんなが衣食住が満たされる社会を作ればええんじゃ」
「それが出来れば言うことなしだね」
 
 
 
(25)
 
 
「ところで腹が減ったの~」
「久しぶりにいっぱい話したからだよ(笑)」
「お母さんはどうした?」
「同窓会があるからって夕方まで帰らないよ」
「なんか食べるものは無いんか?」
「大きな鍋にカレーが作ってあるから勝手に食べてって」
「そっか~そりゃあええの~」
「じゃあ僕が皿に入れてくるね」
「じゃあ頼もうか」
 
 
「お待たせ~♪」
「お~美味そうじゃの~」
「いただきま~す」
「こりゃあええの~」
「お爺ちゃんは今年は田植えをしなかったって聞いたよ」
「それなんじゃがの~去年の米が虫にやられての~参ったんじゃ」
「それでやめたの?」
「そうなんじゃ。一回やめてみようかと思っての」
「じゃあ今年のお米はスーパーで買わなきゃいけないんだね?」
「悪いの~」
「お爺ちゃんのお米は美味しいのにね。残念だな~」
 
 
「そりゃあそうと食料不足になるかもしれんぞ」
「どうして?」
「田んぼがどんどん無くなって行きようるんじゃ」
「どうして無くなるの?」
 
 
 
(26)
 
 
「平地じゃあ家が建ったり工場とかスーパーが出来ようるんじゃ」
「知ってる知ってる安売りのスーパーが出来たってお母さんが喜んでたよ」
「それくらいならええんじゃがの。山の方じゃあ田んぼが荒れ地になっちょるんじゃ」
「どうして田んぼが荒れ地になるの?」
 
 
「農家じゃあ若い者がサラリーマンをしちょるんじゃ。米作りだけじゃあ生活費が足りんけえの~」
「米作りって儲からないの?」
「田植え機とか耕運機は高すぎて買えんけ~の~。田をすいたり田植えをしたり稲を刈ったりは自分じゃあ出来んからお金を出してやってもらうんじゃ」
「けっこうお金が要るんだね」
 
 
「それだけじゃあないど。種モミや肥料を買ったり消毒もお金を出してやってもらうんじゃ」
「大変なんだね」
「大変なのはもっと違うことがあるんじゃ」
「何?」
「水の管理なんじゃ」
「水の管理って?」
 
 
「田んぼの中の水はいつも入れちょくわけにはいかんのんじゃ」
「どうして?」
 
 
 
(27)
 
 
「稲を元気に育てるためには根を張らせんにゃあいけんのんじゃ」
「どうして?」
「根を張ると栄養が根からいっぱい入るじゃろ?」
「うん」
「それと台風が来ても稲がしっかり立ってもらわんと困るんじゃ」
「聞いたことがあるよ。むかし台風で稲が倒れてお米がだめになったって」
「よう覚えちょるの~(笑)」
「あの時はショックじゃったの~(笑)」
 
 
「お米も野菜も自然任せなんだね」
「そうなんじゃ。台風だけじゃのうて大雨や洪水でせっかく作った野菜も全部ダメになってしまうんじゃ」
「ヤフーニュースでも見たよ」
「どんなニュースなんじゃ?」
「温暖化で水不足になって飲水も畑の水も無くなるんだって」
「大雨で洪水になる所もあるのにの~。どっちにせよ食料不足は来るじゃろうの~」
「僕たちが大人になるまでなんとかならないの?」
「まずは日本の食糧生産をあげることじゃ、それと世界中の国の人と仲良くしておくことじゃの~」
「外国から輸入できなくなったら困るから?」
 
 
 
(28)
 
 
「そうじゃ。お金さえあれば何でも買えると思うちょったら大間違いで」
「そうだね。自分の国の人たちの食料しかなかったら日本には売れないよね」
「そうなんじゃ、今のうちに外国の食料生産を上げることにも協力したほうが良い」
「それで必要とし合う関係を作ったほうが良いってことなんだね」
「そういうことじゃ(笑)」
「やっぱり世界平和が良いんだね?」
「それとお金に頼らん社会にしちょかんとの~」
 
 
「お金がいくらあっても食べ物がなくなったら困るんだね」
「そういう社会を作るのが大人の責任じゃの~」
「いまの大人達はそれを知っているのにどうして何もしないの?」
「人間って本当に困らんと何もせんのんじゃ」
「本当に困ったときって遅すぎるんじゃないの?」
「それが一番気がかりなことなんじゃ」
 
 
「政府の人たちはこういうこと知っているの?」
「知らんことはないじゃろう、頭の中は経済を成長させることにいっぱいじゃろう」
 
 
 
(29)
 
 
「経済っていつまで成長するの?」
「そりゃあわからん(笑)」
「僕たちは成長して大人になるのにね」
「経済が成長するとお金の要らん経済になるとええんじゃがの~」
 
 
「お金の要らない経済ってあるの?」
「インターネットで経済を検索してみ」
「わかった。調べてみるね」」
「なんかわかったか?」
「うん。経国済民または経世済民の略で、国を治め民を救済することだって」
「そうなんじゃ。国民が健康で楽しく暮らせる政治をすることなんじゃ」
「すごくわかりやすいね(笑)健康だけでいいの?」
「この健康が大切なんじゃ」
「病気しなけりゃ良いんでしょ?」
 
 
「健康と言うのはの、健体康心のことを言うんじゃ」
「けんたいこうしん?」
「健やかな体に康らかな心のことを言うんじゃ」
「なんだか難しいね」
「元気な体と安心の心なんじゃ」
「簡単に聞こえるけど何だか難しそう」
「元気な体はわかるじゃろう?」
「うん」
 
 
 
(30)
 
 
「安心の心と言うのはの、いつも楽しい生活が出来るということなんじゃ」
「そっか~毎日元気で楽しく生活できるってことなんだね」
「簡単に言うとそう言うことじゃの(笑)」
 
 
「で?経済って何だっけ?(笑)」
「さっき読んでわかったことはお金は関係ないじゃろうが」
「そういえばお金のことが書いてなかったね」
「人間は昔から物々交換というシステムを使っておるんじゃ」
「それは違うよ、学校で習ったよ。お金のお陰で物々交換しなくなったって」
「物と物との交換は無くなったんじゃがの、お金を使って物々交換が便利になったんじゃ」
「あ~そういうことか。交換システムはなくならないってことなんだね」
「そういうことじゃのう」
「だからお金の要る経済が続いているんだね」
 
 
「ミノルはお母さんからお駄賃をもらったことはあるか?」
「おだちん?なにそれ?」
「お駄賃を知らんか(笑)お手伝いをしたお礼にお金をもらうことなんじゃ」
 
 
 
(31)
 
 
「あ~そういうこと。時々お風呂掃除とかしてお小遣いをもらうよ」
「それが働いたらお金をもらうシステムの練習なんじゃ」
「あ~なんとなくわかったよ、働いて給料をもらうということなんだね」
「それも交換システムなんじゃ」
「どうして?」
「働くことで自分の自由な時間とお金を交換しちょるんじゃ」
「お金がないと生活が出来ないから働いてお金を稼ぐってことなんだね」
「そういうこと。お金がないと健康が守れんということなんじゃ」
 
 
「さっき読んだ経済の中にお金を入れることが今の社会っていうこと?」
「そうなんじゃ。本当はお金を入れて欲しくはないんじゃがの~」
「それでお金を稼がなくてもいい社会が良いんだね?」
「そりゃあそうとミノルはよう食べるの~(笑)」
「僕は二杯目だけどお爺ちゃんは食べるのが遅いんだよ」
「よう噛まんにゃあ腹を壊すど」
「お爺ちゃんは噛む回数が多いよね」
「一口50回は噛むど」
 
 
 
(32)
 
 
「僕は10回も噛まないよ」
「一口100回噛んだことがあるんじゃ」
「そりゃあすごいね」
「肉を一口100回噛んでみ。すごいことになるど」
「どんなことになるの?」
「肉を飲み込むことが出来んのんじゃ」
「どうして?」
「これを体に入れて良いものか悩むんじゃ(笑)」
「どうして悩むの?」
 
 
「なんかの~体に良くない物じゃないかって(笑)」
「肉は体に必要な物だと思うよ」
「そうなんじゃがの~。頭じゃあわかっちょるんじゃがの(笑)」
「牛のような筋肉を作るためにも要るんじゃないの?」
「よう考えてみ。牛は草しか食べんでも大きいじゃろうが」
「そうだね(笑)」
「米や野菜しか食べんでも大きゅうになれるんじゃないか?」
「そうかもしれないね(笑)」
 
 
「最近ベジタリアンが増えたって聞いたことがあるけどの」
「肉を食べない人たちのことでしょ?」
「そうなんじゃ。牛を育てると温暖化が加速するって聞いたことがあるけどの」
「人間の食生活も変えなきゃいけなんだね」
「色々難しいの~。さて食べ終わったど。ご馳走様」
 
 
 
(33)
 
 
「お母さんには美味しかったと言うちょってくれ」
「うんわかった」
「そろそろ帰るからの。またゆっくり話そう」
「うん、お爺ちゃんと話すと楽しいからまた来てね」
「嬉しいの~♪今度来るまでいろいろ考えてみ」
「何を?」
「年寄りにしかわからんことはいっぱいあるからの」
「うん。お爺ちゃんも若い者しかわからないことは僕が教えてあげるね(笑)」
「こりゃあ一本やられたの~(笑)」
「パソコンがあればなんでも調べることが出来るからね」
「便利になったもんじゃの~(笑)」
 
 
「お爺ちゃんは帰ったら何をするの?」
「米は作らんかったけど草だけは伸びるからの~」
「あ~草刈りね」
「畑の草引きもあるけどの」
「僕は勉強を頑張るよ」
「時々でええからテレビのニュースやらインターネットでニュースを見ちょけよ」
「どうして?」
「身近なことだけでのうて日本のこととか世界のことを知っちょったほうがええけえの」
「僕はまだ小学生だよ(笑)」
 
 
 
(34)
 
 
「これからは18歳で選挙権があるんじゃ。あと6年じゃろうが、いろんなことを知っちょったほうが自分の意見がはっきり言えるんじゃ」
「わかった。わからないことがあったら会った時に聞くね」
「それがええの、メモにしちょくとええの」
 
 
「それから、お手伝いをやったらご褒美をもらう話をしたじゃろう?」
「働いて給料をもらう練習ね?」
「お願いがあるんじゃがの、褒美をもらわんでもお手伝いをして欲しいんじゃ」
「どうして?」
「ボランティア精神を身に付けて欲しんじゃ」
「どうして?」
「それが未来型の働き方じゃけ~の」
「わかった、お金を稼がない社会の練習だね」
「ようわかったの~(笑)今の社会はお金をもらわんと何もせん人が多いんじゃ」
「人や社会のために働くことが良いんだね」
「まずはお父さんやお母さんが喜んでくれることを身に付けておくことがお前のためなんじゃ」
「わかったよ」
「じゃあまた来るけ~の。元気での」
「うん。お爺ちゃんも元気でまた来てね」
 
 
  
「爺ちゃんとミノル」の会話(2)に続く


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