2022.07.15 元朝参りの思い出

すごく若い頃の話なんだけど、仕事先で知り合った女の子と仲良くなって毎週のように遊んでて、その年の年越しに元朝参り(年が明けた夜のうちに初詣すること。方言らしい?)に誘った。

当日、彼女は立派な晴着姿で髪もばっちりセットして来た。可愛らしかった。
それで増上寺まで行ってさあお参りしようと門をくぐったんだけど、そこで彼女は止まって「ここで待ってるね」って言ったんだよね。
俺は意味が分からなくて何度か誘ったんだけど彼女は困ったような笑顔をして、それでも頑なに「待ってるから」と言って動かなかった。仕方ないから置いて行った。当時はそういうことに疎かったんだ。

あとから考えるに。
そういう事情がありながら、彼女は何で元朝参りの誘いを受けたんだろう。何で普段着じゃなくて一年に一度の晴着を着てきたんだろう?俺は普段着だったし着物を着てきてなんてリクエストはしてないんだ。彼女の行ける宗教施設に俺が参拝に行くと思ったのだろうか?そういう期待があったのかもしれない。無かったのに晴着を着てきたのなら俺はとても複雑な気持ちだ。
彼女は当時俺のことがとても好きだと言ってくれていた。なんだか胸が苦しくなるような話だ。

彼女はお父さんは子供のころ亡くしてお兄さんは独立して家を出ててお母さんと一緒に実家に暮らしていた。とするとさ、お母さんは娘の晴着姿を見てると思う。お母さんはどういう気持ちだったんだろうか。そこまでは考えたくない。分からないので。

その後も俺たちは仲良くしてた。3年間くらいは一緒によく遊んでいた。
若かったこともあり弱気なことをまったく言わなかった俺があるとき何かで凹んだらしい。甘えたくて弱音を吐いたんだろう。
そしたら彼女は「見て欲しいビデオがある」と言ってきて、俺はそれで初めて思い当って彼女につらく当たって俺たちの関係は終わった。

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