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G22 ベインについて

Pixivで1月に公開したものをこちらにも載せます。ところどころ情報が古いかもしれません。
文献もあってないようなものですが、お問い合わせ頂ければ喜んで掘り出してきます!


このメモはマビノギG22「アポカリプス」のクリアを前提としたものです。未クリアの方はブラウザバックされることを強く推奨いたします。

以下ネタバレ

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G22。まさかこんなあからさまに怪しいキャラが黒幕なわけがない、ミスリードだろうと鼻で笑っていたら、そのまさかだった。

薄い本が厚くなりそうな台詞ばかりを引っさげて登場したベイン。
その正体を推測できる材料、ケルト神話での記述、G23以降の展開予想などをまとめました。

ここまで性癖ドンピシャなキャラに出会えたのは久々で、ほとばしるパッションのままに書きなぐってしまい……読みづらかったら申し訳ありません。


1. 前提: バロールについてのゲーム内情報と元ネタのアイルランド神話

・ポウォール(≒フォモール)族の魔王

・バロール・ベイムネク=Balor Béimnech=強撃のバロール

・7つの覆いに隠された隻眼だったとも、片方の目が邪眼だったとも言い伝えられている。開かれた邪眼は周囲を火の海に変える(Myth, Legend & Romance: An encyclopaedia of the Irish folk tradition より)

・「終わりのない闇と燃え盛る目を持つ」(ゲーム内アイテム『黒き月の黙示録』より)

・G22公式PVでは燃え上がる右目と炎に包まれた胴体が描かれている。頭部には曲がった角、肩には赤く光る突起物

・ゲーム内では、第二次モイトゥラ戦争において人間陣営を率いるルー・ラバダに敗れた(ゲーム内アイテム『モイトゥラの英雄、光の騎士ルー』より)

・アイルランド神話でも同様。一説によると、ルーに射抜かれた邪眼が自軍の方を向いてしまい、フォモール族は壊滅した

・トーリー島に要塞を構えたとされた

・予言者である妻の名はCethlenn。発音はセスリーンもしくはケフレーン

おさらい

これらのキーワードを意識しながら以降のページをお読みください。

・隻眼、燃える目

・7枚の瞼

・曲がった角

・トーリー島


2. 外見上のヒント

バロールとベインが描かれた公式画像を目にした時点で、勘の良いミレシアンなら何かを察してしまうかもしれない。並べたらあかんやつですやんコレ。

・右目が常に覆われている≒隻眼という点がバロールの容貌を連想させる。また、公式PVのバロールの燃える瞳も右目であることから、邪眼を前髪の下に隠している可能性が浮上する

・滑らかな表面の胸当てやガントレットに比べると異質にも見える、ゴツゴツとした肩部分の装飾。バロールの肩の突起物と非常によく似ている上に、高温に熱された鉱物を想起させる

・ゲーム内記述によると、「闇の中に溶け込みそうな漆黒の鎧を身にまとった者」「瞳は静かに燃えている」。バロールのゲーム内設定とも神話上の特徴とも合致する


3. ストーリー中の伏線


・ベイン初登場時のクエスト名が「七つの瞼」。バロールの隻眼を覆う瞼は7枚。別の解釈としては、ピルアン(2)+マルエード(2)+ミレシアン(2)で合計6つ、残るベインは1つ=隻眼?と、いずれにせよバロールとの関連を強く匂わせる

・「花咲くつぼみ」クエストでベインの記憶を追体験する際に渡されるアイテムは、バロールのものとよく似た「曲がった角」(ゲーム内アイテム表記)

・RP「狂笑の夜」内の敵は人間の姿をした兵士と光の騎士ルー・ラバダらしきパラディン。「あのおぞましいもの」とは、ポウォール軍が召喚したクロウクルアフもしくはグラスギブネンを指すと思われる。このミッションはバロールがルーに討たれた第二次モイトゥラ戦争の記憶と見られる

・直後のクエスト「目を閉じられた者」は、力の源である邪眼を失い倒れることとなったバロールを指している?

・そして黙示録の記述通り「大地に散らばった印」が破壊され、「彼の瞼を一つずつ開ける力となる」。エリンの7箇所に点在していた邪眼の石像が砕かれて「七つの瞼」の覆いが取り払われたのちに、バロールの抜け殻は蘇り、ベイムネクの隠された右目が露わになる

・本人曰く、ベルファストに故郷がある(「最後の鬼ごっこ」クエストと、G22クリア後のムービーより)。バロールの住処とされたトーリー島と同じ名を冠した峡谷が、ゲーム内ベルファストに存在する


4. 今後の予想と小ネタ集


・ケフレーン「黙示録の履行という義務はお忘れですか?」、ベイムネク「まだ多くの夜が残っている」

⇒『黒き月の黙示録』に記された出来事は放っておいても勝手に起こるわけではなく、教団員が陰で糸を引かなければならない様子。G23でもベイムネクや他の幹部との対立が予想される


・ケフレーンの「不完全な記憶を忠誠心と規律で埋め合わせようとあがきもがく姿」。幼少時の記憶を覗く「青白い希望」ミッション内では単に「エルフ少年」と呼称されている

⇒「ケフレーン」という名も「バロールに付き従う者」として教団から与えられた偽名で、別の名前が存在する可能性もある?


・ケフレーンからベイムネクへの台詞「万が一彼らがフェスピアダの魅惑を超えると(中略)あなたの故郷の封印は解かれる恐れもあります」

⇒テフドゥインの別の入り口と思われるベルファストのトーリー峡谷が新エリアとして実装される?


・黙示録の記述「真の王の帰還を望む魔族たちは霧の道を渡って亡者を生き返らせる…に会って契約を結ぶ」

⇒霧の道はフェスピアダ≒féth fíada=アイルランド神話でトゥアハデダナンが使った姿隠しの魔法の霧。死者を蘇らせる力といえば、それこそウェールズ神話のマビノギオン第二枝に登場するブランウェンと、その魔法の大釜ぐらいだろうか?


・「セーラ様は忠告なさいました」

⇒Sara/Sarah/Cera? ケルト神話で該当する登場人物は見つけられず。ただし、聖書の創世記に登場する預言者アブラハムの妻がセラという名前

⇒追記: 「セーラ」の名を持つ既存NPCは、2016年開催の「サーオィン」イベントに登場したラグリンネの祖父(EDのムービーより)のみ。そもそもサーオィンとは古代ケルトの祭りで、「この世とあの世の境が薄くなり、死者が蘇る」と信じられた日(公式サイト内特設ページより)。イベントでは遥か過去に命を落としたパルホロン族のラグリンネとセーラが、生者を犠牲に一族を復活させようと試みた。また、G1リニューアル以前は土曜日=サーオィンがティルナノイに渡れる唯一の日だった。
先述の「亡者を生き返らせる」方法とは対象をあの世からこの世に連れ戻すことで、魔族の契約相手はフェスピアダの中を自由に行き来できる教団、もしくは死者の国の主あたりだろうか?


・ゲーム内アイテム『作者未詳の歌-上-』には、死者の国について次のような記述がある:
「私と一緒に行こう/サーオィンの夜、あの美しい谷へ/私の故郷、不思議な国へ。」「ティルナノイがいくら美しいといえども/我々の故郷には敵わないだろう。」「皆に賛美されて然るべきこの国は/誰も年を取らない国/死も恐怖も存在しない愛の国。」「懐かしき人たちに逢える/そこは亡者の地。」

⇒ティルナノイと比較される常若の国であることから、正体の候補としては同じアイルランド神話に登場する「喜びの島」マグ・メルや「林檎の島」エウィン・アブラハなどが挙げられる。こちらの主人はフォモール族のTethra≒G9で退場したテフラ、もしくは海神Manannán mac Lir=マナナン・マクリルとされる(Ancient Irish Tales、ならびにThe Encyclopedia of Celtic Mythology and Folkloreより)。
テフラは元からポウォールの指揮官だが、神族のマナナン・マクリルも魔族に与しているのだろうか?


・偶然なのか意図的なものなのか、サーオィンイベントには「フェルマータ」、G22には「影のフェルマータ」というクエストがある。
フェルマータとはイタリア語で「停止」を意味し、音楽では音符/休符の延長、もしくはフレーズ/曲の終止を指示する記号。サーオィンではEDムービーで黒幕が判明して全体のリプレイが可能になり、G22では最後の石像がバロールの復活に十分な力を吸収したと明かされる

⇒亡者であるセーラが「これからはわしが前に出る」と生者の世界への干渉を宣言していることから、黒き月の教団とバロールの蘇生にも関与した可能性がある?
ただ、北米版のクエスト名は”The Lengthening Shadow”=単に「長くなる影」なので、影世界での出来事・存在感を増していくバロール・不穏さの増す空気を影が伸びる様子に喩えただけかもしれない


・影ミッション「キャスリング 」で地下水路を開くのに必要な文字列は「アルドゥ ドゥフカ」= Ardu Doubhca(ミッション内BGMのファイル名より)。
Ardú= アイルランド語でardaighの名詞形= 上昇、天体が空に昇ること。Dubhca= dubhの変化・複合形?= 黒い、暗い。Caは原形の単語を見つけられなかったのだが、イウェカ=Ewecaやラデカ=Ladecaのように「月」のようなものを意味する接尾辞かもしれない。
総合して、曲名の『떠오르는 검은 달, 두흐카』=『昇る黒き月、ドゥフカ』を意味するフレーズだと思われる


・テフドゥイン=Tech Duinnとは「ドンの家」を意味し、アイルランド神話における死の神ドンの住処。死者の魂はここを訪れてからあの世へ旅立つとされた(Dictionary of Celtic Myth and Legend、ならびにThe Druidsより)。
アイルランドのベアラ半島南西部に実在するBull Rockという小島と同一視される(Pagan Portals - Gods and Goddesses of Ireland: A Guide to Irish Deitiesより)。このBull Rockにはトンネル状の穴が開いており、海水はこれを通じて門をくぐるように海へと流れ出す。テフドゥインゲートはこの小島の形状をモデルにしたのかもしれない


・G22シナリオ内でピルアンが言及する『月と霧の国』という童話は書店で購入可能。その中に、次のような文章がある:

妖精の女王の力によって作られた白い霧の名はフェスピアダで、この霧の力で行きたい場所に行ける」
「『悪い人がこれを利用するのを女王様が許すわけがないからね!特別な魔法をかけといたのよ。フェスピアダは気まぐれで時々全然違うところに連れて行ったりするから。テフドゥイン、霧が作り出した幻想的で虚しい空間。みんなが自分の見たい虚像だけを見てしまい、永遠に道に迷ってしまう!』」

⇒フェスピアダは移動手段で、テフドゥインは空間の名称。妖精の女王といえばdaoine sídhe≒妖精ディナシーのウーナか、コハナト(≒未実装のコナフタ大陸?)を治めたマブ/メイヴ?シェイクスピア繋がりで『真夏の夜の夢』のティターニアという線もある。

「『ここは全ての魂が集まる終着地の冥界じゃない!夜と闇を司る、恐ろしい死の王が治める場所なんだよ!』」
「『君のお母さんを生き返らせるために来たのかってお聞きになっているじゃない!』」

⇒ピルアン曰く、「童話の物語の中で魔法の霧の力によってたどり着いた場所は…『テフドゥイン』という…地下の世界でした」。
よって、童話の内容が真実ならば、テフドゥインゲートの向こうは「霧が作り出した幻想的で虚しい空間」=「終着地の冥界」=「死の王が治める場所」ということになる。
アイルランド神話で死を司る者といえば前出のドン。死者の魂が集う場所を治めるという特徴も合致する。童話の中では主人公を亡き母親の魂と再会させたようだが、亡者を生き返らせる力も持つのだろうか?


・「消えた神剣を見つけるとか」

⇒マビノギで消えた神剣といえば、ルー・ラバダがかつて振るったフラガラッハ?エレモンによると、G16の戦闘以来行方不明らしい。かつて光の騎士に振るわれた剣がミレシアンの手に渡り、再びバロールを討つことになるとすれば、なんとも因果なものである

⇒追記: バロールとの戦闘後にマルエードが「フラガラッハ…(中略)あの神剣が消えたことも何か関係があるのでしょうか」と述べていることから、イコールで結びつけて問題ないと思われる。
このフラガラッハ、アイルランド神話ではもともとマナナン・マクリルの持つ宝物のひとつで、後に養子ルーに与えられた(The Fate of the Children of Tureenより)。少々強引ではあるが、フラガラッハの元所有者かつ冥土の主人であるマナナンの登場に向けての伏線とも解釈できる


・最後に、主要NPCの名前に関する小ネタをひとつ。こちらはネットでざっと検索した程度の眉唾物ですが、興味深い解釈ができたので載せておきます。
日本のオンタイムイベントで配布されたG22風船のアイテム説明によると、NPC名の綴りはピルアン=Pirran、マルエード=Mared、ケフレーン=Cethlenn、ベイン=Bein

PirranはPiranの表記揺れだとするとコーンウォールの守護聖人の名前で、「暗い髪の子」を意味するゲール語Ciaránの異形綴りでもある。ピルアンが「僕の家族はみんな濃い銀色の髪です。僕だけ違う色だから小さい時はよくからかわれました」と語っていることから、髪色にちなんで名付けられたのかもしれない。
MaredはMargaretのウェールズ語版。Margaretの花言葉は「恋占い」「真実の愛」「信頼」などで、語源はギリシャ語の「真珠」。
Cethlennは古アイルランド語の綴りそのままで、神話ではバロールの妻。ゲーム内でもバロールの敗北を予言したりするのだろうか?
Beinだけ「脚」や「骨」などを意味するドイツ語で語派仲間外れに見えるが、Balor Béimnechから文字を拾ったと考えれば合点が行く。

なお、北米版ではマルエードとベインがMarleidVayneと綴られており、語源も込められた意味も微妙に異なるものと思われる

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