東京特殊電線(5807)についてのメモ

非鉄金属業種に分類される同社の特色を四季報 ONLINE から

【特色】電線中堅。ケーブル、巻線、ヒーター線などが主力。医療用ディスプレーは譲渡。古河電工子会社【連結事業】電線40、ヒータ23、デバイス37【海外】41 <20・3>

同社に注目する理由は、過去5期の収益力がそれ以前から比べると非常によくなっているからである。

株探の業績より。

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ご覧の通り、2013年3月期には 1.84%であった営業利益率が、現在は10%台前半、しかも5期連続で達成見込み、ROE に至っては、過去8期で7期が二桁で着地見込みと、それ以前の業績とは雲泥の違いとなっている。ただ、売上については、最高売り上げを記録したのが 1997年3月期の562億で、その水準から170億まで絞られてきているので、リストラを経て、選択と集中を行った結果、筋肉質で収益性の高い企業に生まれ変わったのではないかという仮定が立つのではないかと思っている。それを調べよう。

財務

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自己資本は、この数年の好業績で、着実に増加している。また、有利子負債倍率も下がってきており、また、自己資本比率は 59.7%と2000年来で最もよい数字となっている。財務的な改善は着実に進んでいるがわかる。

同社の公式サイトに行くと、2017年に策定した中期経営計画がまだ残っている。それに同社の苦しかった時期に何があったのかがさらっと書いてある。

2017年6月8日 中期経営計画策定に関するお知らせ(PDF 105KB)(PDF)
中期経営計画説明資料(PDF 691KB)

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株探の長期業績の数字を眺めても想像できたが、同社はリーマンショックの前後から経営危機に陥っており、2011年に、抜本的な構造改革を行ったことがわかる。売上規模は縮小したものの、黒字体質の企業グループとして再生している。

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ニッチ市場にフォーカスすることで苦境から脱却しようとする方針であった。

そして、同社は、2017年6月に出した中期経営計画を翌年に上方修正する形で再発表した。

2018年6月7日
中期経営計画策定に関するお知らせ(新2020中期経営計画)(PDF 84KB)(PDF)
社長からのメッセージ(2017年度決算及び新2020中期経営計画説明会より)(PDF 711KB)(PDF)
新2020中期経営計画説明資料(PDF 3.5MB)(PDF)

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新中計では、ROE10%と,ROEについても数値目標が設定された。

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プロダクトミックスで高収益品にさらに集中することで利益率をよくするという具体性が前回中期計画と比べ出てきている。

同社は2019年12月に、次世代パワー半導体の高周波トランスに最適な三層絶縁電線を開発 というリリースを出している。まだ、パワー半導体という言葉がそんなに聞かれないころのリリースだ。

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「機器の小型化や発熱の抑制に寄与する三層絶縁電線を開発」とあるが、発熱の抑制は半導体の性能を保つには必須の技術で、冷房用の電気の節約にもつながり、CO2の削減にもなる。

今年の1月に、同社は2021年3月期の業績を上方修正している。コロナ禍で、中期経営計画の達成はならない見込みだが、同下半期の回復は確かなようだ。

2021 年1月29 日 通期業績予想の修正に関するお知らせ

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上記にリンクした、三層絶縁電線などが当初見通しより増加する見込みとなったと発表している。

Ullet で「対処すべき課題」をチェック。

基本方針

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「当社だからできる”特殊”にこだわり」とあるので、ニッチな分野に集中していく方針ということだろう。

事業上の対処すべき課題、より

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ここから読み取れるのは、自動車産業と、半導体産業が元気になれば、同社にとっても追い風だということ。

大株主も見ておこう。

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電線大手の古河電工が50%を超える大株主である。というわけで、代表取締役は古河電工出身者になるのが慣例のようだ。

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ここでリンクした中期経営計画を立てて、実行に移し始めたのは現会長の鈴木義博氏が社長のとき。昨年の6月に川口寛氏に社長交代している。ともに、古河電気工業出身者だ。

株探より年足

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株価は底這いをしているように見えるが、現在の株価は2011年の安値410円からは6倍以上の水準にある。年足だとわかりにくいので月足も見てみよう。

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こんな感じで、現在は上方波動の途上にあるように見える。2020.03期はリンクした中期経営計画の最終年度に当たるので、5/12に予定されている決算発表日に、同中計をどう振り返るのかと、新しい中期経営計画が出てくるのかどうかが注目である。

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