マブチモーター(6592)についてのメモ

四季報ONLINEより。

【特色】車載用軸に小型モーター世界シェア5割以上。中国、ベトナムなど全量海外生産。音響縮小傾向【連結事業】小型モーター自動車電装機器73、同民生・業務機器27【海外】90 <20・12>

全量海外生産で海外売上比率90%か。

4/28発表の1Q決算は非常に良かった。

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対上期進捗率(経常利益)93.8%。昨年は中国がコロナ禍の第1四半期なので伸びるのは当然といえば当然だが、上表を見ると、2期前の19.01-03期と比べても、売上、3利益とも上回っている。決算短信の定性コメントを見てみよう。

21/04/28 12:30 2021年12月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)

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中国市場をはじめとして、各地域市場が回復したらこういう業績になったということで、特殊な大口要因とかそういうのは書かれていない。だが、4/30は大きく売られた。

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長期業績を見てみよう。

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このところ、今期見込みも含めて8期連続営業利益率二桁。ただ、ROE がちょっと低い。また、売上も2017年12月期の1469億を最高としてその後3期減り続け、今期に少し回復するというのが今年の2月に出た会社予想。だが、1Qの数字を見る限り、これは早晩上方修正されるのではと思う。

財務

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自己資本比率が90%以上あり、有利子負債倍率はほぼゼロ。

キャッシュフロー

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前期末で、現金等残高が約1102億弱ある。ちょっと多すぎなんではないだろうか。増配するなり、自社株買いをするなりして、もっと ROE を高めるべきであろう。どのくらい現金を持つべきかは、このエントリーが参考になる。

大越代表取締役社長のインタビューを見つけた。今年の3/21に出たものである。

2001年は音響・映像機器向けが売上の約40%を占めていましたが、2019年は71%が自動車電装機器向けです。

ダイナミックに市場ポートフォリオが変わっていたんだ。

2001年にポーター賞を受賞した際には、小型直流モーターの世界シェア約6割を持っていました。当時の主な市場は、CDプレーヤーなどの音響・映像機器で、2001年の同社売上の42.6%(数量ベース)を占めていました。しかし、記録媒体の主流がCDなどの回るものから、半導体メモリーなどの回らないものに変わったことで、小型モーターの音響・映像機器用途の市場は大幅に縮小しました。「存続の危機」とも言える環境変化に直面したのです。

この状況から危機を脱し、自動車産業向けに活路を開いた。

ポーター賞受賞当時は、モーターメーカーが沢山あったのですが、その後の10年の間に業界の再編がありました。そして、現在は、モーターを含め様々な部品を取り扱う 総合部品メーカーから、モーター専業メーカーへの移行期に入ったと認識しています。その背景には、自動車メーカーが、内部で全てを抱えるのではなく、必要に応じて外部の専門メーカーの部品を使う流れがあります。
自動車電装機器用途における モーターメーカー間の競争では、信頼性が一層重要になってきています。まずは品質問題を起こさないこと。次に、万一、品質問題が起きた時、資金がないと補償することができません。そういう意味で、何かあった際に潰れることなく対応できる会社であることが求められます。当社の強みは、製品の競争力や強固な経営基盤もありますが、やはり品質です。「マブチの品質は良い」とお客様に評価いただいています。

モーターメーカー間の競争を生き延びてきたと。

長年ブラシ付モーターに特化してきて、「他のモーターには取り組まない」と、自ら萎縮していた面がありました。自分の社長就任後から「何でも取り組んで良い、チャレンジしよう」と、開発陣に発破をかけました。最初の1、2年の間は皆、「本当なのかな」と考えていたようですが、「構わない、必要な投資はどんどんおこなっていく」と言い続けたことで、次第に社内の雰囲気が変わっていきました。

大越氏は社内の常識を変えて、ブラシレスモーターにもチャレンジし、一定以上の成功を収めたのか。

当社はブラシレスモーターでは後発なので、何でも手掛けるのではなく、今後の成長が見込まれる用途に絞りました。もう一つは、お客様の側で大きな技術革新が見込まれる用途です。当社内部の収益基準は高く設定しており、製品に競争力があり、適正水準の収益性が担保されない限り、その用途には参入しません。

なるほど、ブルーオーシャン化は避けると。

当社では、自動車電装機器、民生・業務機器ともに、ローエンドの製品には取り組まないと決めています。その背景にあるのは、収益性の改善です。これにフォーカスして、既存製品、新製品の全てを分析した上で、選択と集中をおこないました。新製品に関しては、厳しい収益基準になりますが、その基準の中で新製品を出すということを徹底しました。ある一定以上の収益性を確保するためには、新たな付加価値を取り入れて差別化を図るなどがなければ、勝てないのです。
自動車電装機器用途を本格的に拡大するに当たって、標準化の考え方を少し変えました。従来は、民生・業務機器、自動車電装機器を問わず全ての用途に一つの製品で対応することを理想としていましたが、自動車電装の世界ではこうした考え方では限界があるため、用途別標準化という考え方に変更しました。各用途に対して1、2種類の標準モデルを持つということです。用途には市場規模の大小がありますので、市場規模の大きい用途に絞って取り組みました。もちろん、将来の市場規模拡大が見込まれる用途については、現在の規模が小さくても取り組みました。

民生品の成功要因であった標準品にはこだわったものの、自動車電装の世界に参入するにあたっては、用途別標準化という考え方には変えたんだ。変えるべきこと、変えるべきではないことのメリハリが効いているのかな。

自動車業界では、当社は実績が十分ではありませんでした。自動車業界のお客様から「実績が不足している」と言われれば、当社は「大丈夫です、やってみせます」と約束するしかないのですが、それを営業のフロントだけで説明しても効果は限定的なのです。そこで、北米や欧州など地域を問わず、自動車メーカー、一次・二次サプライヤーなど全てに社長自ら足を運びました。お客様を訪問した1年目は「そうだなあ、考えておくよ」、2年目も「まあ、わかるけど...」といったご反応でしたが、3年目には「わかった、そこまで言うのであれば使ってみようか」ということで何とかビジネスをいただくことができ、その結果として「マブチの品質は良いね」と高評価をいただくことができました。そこからは、そのお客様内における当社シェアアップに向けた働きかけを強化しました。もちろん、社長一人でおこなった訳ではありません。営業フロントから、開発、そしてトップまで、全社一丸となって取り組むことが重要だったということです。私は、お客様のもとに伺う際にFace-to-Faceにこだわりました。他の役員も同様に直接お客様に伺い、開発担当役員も営業担当役員も活動量を増やしました。役員構成も大幅に変更しました。頻繁な海外出張など活動のための体力が必要なことから、役員の平均年齢は60歳代半ばから50歳代半ばへと約10歳若返りを図りました。海外経験の豊富な人を登用し、全員で営業する体制を作りました。

なるほど、社長だけでなく、海外を飛び回れる若い役員陣のフットワークで自動車産業に入っていったのか。

当社製品の利点をご理解いただいたお客様の中には、ほぼ完全に当社に任せていただけるケースもありますが、供給不安への備えや、常に競争見積もりをしたいといった購買ポリシーを持たれるお客様もいらっしゃいます。
そこで当社は、自動車電装機器用途を拡大するに当たって、生産体制を「地産地消」へと大きく転換しました。民生・業務機器用途がビジネスの中心だった頃は、アジアで集中的に生産し、世界中に輸出していましたが、現在は、アジアだけではなく米州のメキシコ、欧州のポーランドにも生産拠点を構え、それぞれが、アジア、米州、欧州に供給する地産地消の体制としています。世界の主要な地域市場において、各地域内で部材を調達し、生産、販売する体制へと変えたのです。本社集中型ではなくて分散型で、各地域内で全てを完結できるようにしています。地産地消とともに生産・販売拠点の経営陣の現地化を進めました。本社から出向した日本人ではなく、その国、その地域の人たちに経営を担ってもらう体制へとハイペースで転換していきました。

なるほど、同じものを作れる工場を世界のあちこちに持つことで自動車メーカーのサプライチェーンリスクの心配に対して対応したわけか。

Ullet で大越氏の経歴を調べる。


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おそらく新卒でマブチモーターに入社し、たたき上げで社長にまで上り詰めたのだろう。2013.03から代表取締役社長職なので、彼が年度を通して社長として腕を振るったのは 2014.03 の決算からということになる。そこから連続して営業利益率が二桁に戻っている。日足が下げ止まったら買いでエントリーしたい。

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