富士古河E&C(1775)についてのメモ(2)

同社についての将来性について分析・考察する。まずは、同社の公式ホームページを覗いてみよう。トップメッセージ。

富士古河E&Cグループは、2009年に3社が統合し、プラント、内線・建築、空調、送電、情報通信など幅広い事業分野の技術を有するメーカー系総合設備企業として、「お客様の満足を通じて社会に貢献する」を基本理念に掲げて、第一歩を踏み出しました。
当社グループは、DXを含めた製造現場の最適化やエネルギーソリューション、環境改善の提案などに強みを有する電気・空調の複合施工が出来る数少ない会社

公式ホームページの社長挨拶では抽象的だが、昨年のダイヤモンドオンラインの学生向けと思われるパブ記事で日下社長のロングインタビューがありかなり具体的に同社の強みなどを説明している。

 重電メーカーである富士電機は、鉄鋼、機械、化学メーカーなどのプラント設備を担い、当社はその電気設備工事を担当してきました。一方、電力・情報通信ケーブルのメーカーである古河電工が担ってきた電力・通信関連の工事で当社は、電気設備工事やケーブル配線工事などを請け負ってきました。このような施工実績の圧倒的なストックや、技術・ノウハウという無形の資産の蓄積によって、われわれはお客さまと一体となってソリューションを考え、提案することができる。これが当社の一番の強みです。
 それ故に参入障壁が高く、新興企業が入ってくる余地は少ないといえます。また、日本のインフラ設備は総じて老朽化しており、ちょうど更新の時期に来ている。それも事業の安定に寄与

2009年の3社統合後のPMIについては

経営トップを含めて、社内融合を進める仕組みを意識的につくって取り組んできたことが大きいですね。全社の交流イベントを数多く企画し、出身地ごとの交流会もつくりました。出身会社は別でも、故郷の話で交流が深まり結束が固まるんです。夏には全員が集まるビアパーティーを開くのですが、そこには必ず経営陣も参加
統合から10年が経過し、今はさらに新たな企業カルチャーをつくるステージだと考えています。19年には、30代の社員が中心となって今後どういう会社にしていきたいかを議論し、若手主導のブランドステートメントを採択しました。ボトムアップで、新たな自分たちのアイデンティティーを確立することができた

同社の際立った特徴として新卒社員への長い研修投資(1年教育研修 + 2年の見習い期間)がある。それについての日下氏の見解を見てみよう。

1年間の研修ののち、配属先の希望を聞くのですが、最初の2年は見習い期間として設定しています。「まずは向いていると思った現場に行って仕事をしてみましょう」という感じですね。その間、細やかに状況を聞いて、ちょっと思っていたのとは違ったと感じたら、もう一度行き先を決めるチャンスがある。そうやってミスマッチが起きないようにしています。
課題やトラブルに直面したとき、一人で解決しようとせず、どこに何を聞けばいいか、誰を頼ればいいのかを知っているのが優れたプロジェクトリーダーであり、エンジニアです。そのような人材を私たちは育成しています。このために研修や見習い期間で、仕事のリスクとは何で、どこにあるのかを知り、人とのつながりを深めてもらっている
入社してから5年の間に、全員が、小さい現場ではありますが、現場代理人というプロジェクトリーダーを必ず経験できるようにしています。20代後半で、ある程度の権限を持ち、さまざまなことにチャレンジできる。「丁稚奉公で何十年も下積み」という仕事ではありません。30代、40代、50 代とキャリアを積むに従って任される事業規模や、範囲が広がっていきます。まさに「一国一城の主」として、責任と権限を持って仕事をしている
この時代にあえて寮生活をしてもらっているのは、人とのつながりやチームワークの大切さを実体験してもらいたいからです。1年間共同生活する中で培われる同期の絆は、一生続く貴重な財産

これだけの事前情報があって同社の門を叩いて入社した新卒社員は、帰属意識が高く、離職率も低いと思われる。

17年から全社挙げて2段階で改革に取り組んでいます。まず、それぞれの現場の業務を徹底的に見える化し、残業が偏っているところは全社のリソースを投入して業務を平準化しました。その結果19年には、残業は前年比で15%減り
並行して、3年をめどに抜本的な業務改革も始めています。全ての業務を棚卸しして、削れるものを見極め、IT化できる部分をプラットフォームに載せて一気通貫で効率化する、そのための仕様を詰めている最中

働き方改革も地道に進めてきたと。

盤石な経営基盤をもとに、機会を捉えてここまで右肩上がりで成長してくることができました。ここから先は、ボトムアップで、新しい企業カルチャーを作りながら、さらにもう一段の成長を遂げるステージに入ります。企業を取り巻く環境はデジタル化の進展など変革期にあり、無限にチャンスが広がって

社長自ら「盤石な経営基盤」という言葉が出るとは、同社への株式投資を考える者としては心強い限り。

話は変わって、同社は富士電機・古河電工が大株主であり、富士電機グループ、古河電工グループが新しく工場を建てる時などにその電気通信工事等を請け負うことが容易に想像される。両グループの今年のニュースをいくつか追ってみよう。

電気自動車(EV)の中核部品となるパワー半導体関連の投資計画を1年前倒しする。2022年度までの4年間で山梨県の工場などに1200億円を投じる。これまでは23年度までの5年間を予定していた。世界的なEV普及が見込まれるなか、電力を効率的に管理するパワー半導体の増産体制を整える。
車載用中心の需要急増に伴って投資を1年前倒しして22年度までに実行することにした。23年度以降はまず津軽と松本の既存建屋での設備増強を進めつつ、次の施策を検討する。前工程だけでなく、組み立てなどの後工程も国内外で生産能力を順次増強する。

古河電工

高速通信規格「5G」に使う光通信部品の生産能力を4割増やす。今秋までにタイ工場の設備を拡充する。5G用通信網の整備が世界各地で進み、基地局などで使う関連部品の需要も増える見通し。

うん、事業環境は当面は良さそうだ。

同社は、アクセラレーターを使って、オープンイノベーションにも取り組んでいる。アクセラレーター?オープンイノベーション?なんじゃそりゃ?だったのでちょっと調べた。

オープンイノベーション白書 第三版

これの概要の44ページに Cisco Systems のオープンイノベーションの例がある。

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”効率的なアクセラレーターの活用” ”協業するに適したスタートアップを自社自身で探索して投資を行うことはほとんどなく、アクセラレーターを介して間接的に投資活動を推進” ”イノベーション創出を志向するスタートアップや中小企業、大学・研究機関との協業に注力” とある。実は、これと同じようなことを同社は Creww というアクセラレータを使って昨年から開始している。

『富士古河E&Cアクセラレーター2020』は、富士古河E&Cの経営資源と、スタートアップ企業※2の持つ全く新しいアイデアや斬新なノウハウの双方を活用して、新たなビジネスやサービスの共創を目指すものです。本プログラムの開始に合わせてCreww(クルー)のホームページ内に専用WEBサイトをオープンし、スタートアップ企業のエントリーを開始します。このインターネットを活用した選考プロセスにより、富士古河E&Cとスタートアップ企業は、シナジー確認から協業までの最終ゴールに向けて、簡単で迅速な選考プロセスの下、強力な連携機会の発掘が可能となり
2019年度に研究開発推進の基盤を整備して、新規開発テーマを起案しやすい仕組みを再構築し、事業部からの主体的な起案を目指して来ましたが、社内からはなかなか積極的な声が挙がってきませんでした。というのも、これは建設業界全体の課題とも言えるのですが、東京オリンピック等を含めた好景気の状況によって多忙を極めていたため、新しい取り組みができるのかという不安があったからです。ただ、外注工事取引先も含めて高齢化が進んでいますし、人材不足の課題もあります。そこで、富士古河E&Cでは、業界に先駆けてオープンイノベーションで新規事業を創出し、数多ある社会課題の解決につなげようと判断
社会に必要不可欠なインフラを設計・施工している企業だからこそ、我々には思いつかないスタートアップのアイデアや技術力を組み合わせることで、今後5年、10年先の新しい事業の柱を作っていきたい。社内のリソースだけでは開発テーマが積極的に出てこないため、スタートアップの皆さんからさまざまな意見や提案をいただくことで、会社や業界、社会を変えていく起爆剤にしたい

この Creww というアクセラレーターを使った募集の結果、最終的に3社が同社に対してプレゼンをすることになった。

その3社とはユニロボット、シナモン、そして、DataMesh である。

ユニロボットは、コミュニケーションサービスを豊かにするソフトウェア(AI含む)及びハードウェアを 開発・製造・販売まで一気通貫で事業運営をしているスタートアップです。「モノと心を通わせる」を当たり前にする。を経営理念に掲げ、「コミュニケーションテクノロジーに心を、あたたかさを宿す。」ことをビジョンに、「いつかあたり前の日常」を提案し続ける総合会社を目指しています。
シナモンは、豊かな経営経験と若いエネルギーを融合し、高い技術力でビジネス展開をしているスタートアップです。シナモンAI には AIリサーチャーが100名以上と多数在籍しており、AIに関するプロダクト開発・コンサルティング・受託開発をしています。
DataMeshはMixed Reality(複合現実)技術を活用したソリューションの提供でシアトルで創業しました。現在はグローバルで80名ほどの従業員を抱え、働き方改革の支援やDX支援など現場の業務生産性を支援しています DataMeshが提供する、DataMesh DirectorはスピーディーにMRコンテンツが作成できます。すぐに実装が可能かつ、プログラミング不要でコンテンツ作成ができ、誰でも簡単に・マルチデバイスで再生することができます。

まだ海のものとも山のものともつかないが、何かが起きそうではある。

また、同社は社外取締役として、昨年6月に伊藤久美氏を迎えている。この方がどうもただのお飾りの社外取締役ではなさそうなのが好感度高い。

伊藤:安保様からお話をいただいた際、失礼ながら社名を存じ上げないくらい、私はこの業界に疎かったんです。自分でいいのだろうかという思いもありましたが、ご担当者や日下社長ととてもお話が弾むので、バックグラウンドがあまりに違うからこそ、逆に素朴な質問をすることでお役に立てるのではないかと感じたことも後押しになりました。全くの異分野だったからこそ、私自身も世界を大きく広げる機会をいただいたと感じています。

日下:現在、伊藤様には毎月の取締役会にご参加いただき、その他ICT、人材、広報関連、新たなビジネスモデルの開発やスタートアップ企業への投資まで、プロジェクトで悩んだ際にご相談させていただいています。伊藤様の率直なご意見には多くの気づきがあり、会社の成長にうまく活用させていただきたいと考えています。また子会社ならではの悩みなのですが、弊社は対外向けのアピ―ルが苦手な体質がありました。そういった面でも、自ら考えて動くためのアドバイスをいただき、現場の意識も変わってきた

伊藤久美効果でぜひ同社の IR ももう少し積極的にうまく対外発信するように変えていってほしい。はっきりいって、今まで見てきたこの会社の内容で時価総額が売上の1/3以下なんてことはあり得ないぞ。第3位株主が、自社社員持株会なのだが、従業員の経済的幸福を考えるなら、IR の充実は急務と考える次第。

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あれ、第5位株主に光通信の名前が、、、。しかも持ち株比率が上がっている↑マークがついている。買い増しをしているのか。ちょっと履歴を調べよう。

2018.09 では光通信の同社持ち株比率は 0.84% であった。

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2019.09、0.96%

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2020.03、1.13%。

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ほう、毎年買い増しているではないか。わかっているねえ、光通信。

メモ(2)が長くなってしまった。同社は資金に余裕があるなら長期投資で拾うべきであろうというのが結論である。

同社についての過去エントリー


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