私の聖域

ノクターン、というバンドがいる。

わたしと彼らとの出会いは、少し不思議。

大好きな、アマアシというバンドを見に行く日の前日、深夜。眠れずに、普段はほとんど見ないツイッターのタイムラインを、何の気なしに眺めていた。そうしたら、知らないアカウントのツイートに、アマアシの文字。わたしのフォロワーにアマアシを知っている人は、ほとんどいない。それに、見覚えのないアカウント。この人、誰だ?なんでわたしフォローしているんだ?

よくよく読むと、どうやら次の日のアマアシの対バン相手らしい。ノクターン。知らない名前。普段は絶対にしないけど、なんでかどうにも気になって、YouTubeで調べてみた。

それがわたしと、ノクターンの音楽との出会い。

一瞬で、耳が奪われた。儚く、強く、透き通って、ざらついた、なんともいえない声。叩いているのが本当に女の子なのかどうか疑わしいぐらい、パワフルなドラム。変拍子を多用した、へんてこで、でも美しい音楽。衝撃だった。どれぐらい衝撃だったかって、その日のライブは仕事終わりに遅れて行ったから、ノクターンの演奏は見られなかったのに、既発のCD全部買い占めたぐらいには。

ライブ会場でお話してみて、さらにびっくり。ドラムのねねちゃんは、サカナクションつながりで、5年も前から相互フォロワーだった。名前が変わっていたから、気がつかなかっただけだった。まさか、そんな昔からのフォロワーさんが、自分の推しバンドと対バンする日がくるなんて。考えもしなかった。

それが今年の2月のこと。

7月にやっとライブが見られて、それからたった3回しかライブに行けていないのに、気がつけばすっかり彼らの音楽の虜になっていた。彼らは、ツーピースバンドになっていて、それがまたどうにもこうにもかっこよくて。

ライブは3回しか見に行けていないのに、他のライブ会場でお互いお客さんとして2回遭遇していたりして。そのときもとても優しく、楽しく、たくさんおしゃべりしてくれて。昔からずっと一緒にいたかのような、居心地のよさ。会いに行くたびに、心に日だまりをくれるふたり。

そんなふたりが、今日、ワンマンライブを行った。

あまりに素敵な舞台だった。冷たくて、柔らかくて、激しくて、静かで、優しくて。本当に、美しかった。

ノクターンの音楽は、水中のようで、冬の夜のようで。碧くて、凛として、静か。あれだけ轟音が鳴っていても、驚くほど静か。ひとりでいることを、許してくれる。

じょぶずさんは、「僕らの音楽は、一般ウケしない。それはわかっている。それでも、こんな音楽も必要だって、言い続けていきたい」と言った。

一般ウケって、なんだろう。手を挙げて?ジャンプして?みんなで歌って?ぐるぐる回って?ダイブして?それが売れる条件?

そんなの、糞食らえだ。

ノクターンの音楽は、「一般」になれないわたしを、決して置き去りにしない。いつも、そばにいてくれる。息苦しい毎日を、みっともなく足掻いてなんとか生き抜いているわたしに、うまく息ができる場所を与えてくれる。

良い音楽の条件なんて、「心が震えるか」、ただそれだけでしょ?

「僕たちの音楽を好きだと言ってくれる人は、心のどこかに傷を負っている人だと思う。僕たちは、前に立ってひっぱることはできないけど、同じ目線で、『苦しいね』って言い合いながら、一緒に生きていきたい」と彼は言ったけど、「この世界で 僕を見つけてくれて どうもありがとう」と彼は歌うけど、傷を負ったことでノクターンを見つけることができたのなら、傷だらけの身体も悪くないなぁって、思えるんだよ。ノクターンの音楽が、一緒に生きてくれるなら、もう少し生きてみてもいいかなって、思えるんだよ。

「ライブ中すごく笑顔だから、見ると泣きそうになる。その顔に、いつも救われてる」なんて言ってくれたけど、それはこっちの台詞。わたしがどれだけふたりに助けられているかなんて、きっとこれっぽっちもわかってない。わたしがどのぐらい救われているか、ちゃんとふたりが理解してくれるまで、何万回でも感謝を、愛を、伝えに行くから、覚悟してよね。

ワンマンおめでとう。いつもありがとう。これからもよろしく。

わたしを見つけてくれて、どうもありがとう。