金髪にしたこと⑤
ちゃんとした人に見られなくたって、大丈夫だよ。
人目や世間体を気にして、ビクビクしながら浅いところで他人と関わり生きてきた。
実態のない「世間の目」に怯え、「ちゃんとした人」として見られなくてはと、当たり前に我慢を重ねる自分に疲弊しながら。
そんな自分にもう嫌気がさしていた。
こんな自分のままでは、うまくいかなくなっていた。
金髪ひとつでこれほどのコミュニケーションが生まれたり、物事の捉え方に変化があるなんて。
こんなにも心地良く生きられるなんて。
金髪にしたことで、私の中の固く閉ざされていた何かの扉が開いたようなそんな感覚。
とにかく「なんかいい感じ」なのだ。
大切なのは、世間の目じゃなく「自分の心の目」だった。
ちゃんと、自分の心の声を聞いてあげること。
自分の感じる心地よさに、耳を澄ませて。
自分の心に正直な私でいることは、少し勇気のいることだった。
それを金髪が後押ししてくれた。
そんなふうに自分を大切にできるようになってくると、ありきたりな表現だけど、世界がキラキラと輝きはじめた。
そんな35歳の夏。
人生まだまだ、これからが楽しいのかも。
まだまだ捨てたもんじゃないのかも。
この半年間、どうしようもなく消えてしまいたくなることが何度もあった。
子どもたちの不登校。
発達障害。精神疾患。
苦しむ我が子の姿。
私には無理だ。私には子どもたちを救えない。
我が子が苦しむ姿を目の当たりにしては、自分の無力感に押し潰され、このまま消えてしまえたら楽なのにと何度も思った。
でも良かった。向き合い続けて良かった。
決して世間に認められるような、立派な母では無かった。
失敗もたくさんした。子どもを傷つけてしまったこともあった。
そんな自分を責めて責めて責めまくった。
それでもまた、立ち上がることができたのは、きっと私には子どもたちへの大きな愛があったからだ。
それだけが原動力だ。
自分に愛があるのかさえ、分からなくなったときもあったけど。
がむしゃらで体当たりの、不器用で下手くそな愛。
そんな愛には、きっと金髪が似合っている。
金髪にしたこと、完
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