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モビリティ新規事業の創り方/育て方~脱炭素ロードマップに沿ったMaaSのビジネスチャンスとは?~ -セミナーレポート-

こんにちは。MaaSHack編集部です。

2月15日(火)、弊社リブ・コンサルティングおよびパートナー企業の株式会社AMANE様の共催でビジネスセミナー「モビリティ新規事業の創り方/育て方」を実施いたしました。 

今回の「モビリティ新規事業の創り方/育て方」セミナーは「モビリティ領域での事業開発」に焦点をあてた内容であり、特別講演として株式会社JTBコミュニケーションデザインの黒岩様にご登壇をいただきました。

 

【(株)JTBコミュニケーションデザイン 黒岩様プロフィール】

株式会社JTB法人東京(当時)にて旅行営業に携わった後、環境マーケティングにおけるプロデューサーに就任。

2018年より株式会社JTBコミュニケーションデザインにてEVモビリティ観光活性事業やカーボンオフセット事業に携わる。現在は観光分野におけるMaaS開発や情報銀行の社会実装といったデータビジネスを中心に精力的に活動。

JTBグループにおけるMaaS関連事業の第一人者としてMaaSプロジェクトチームを率いている。

 

1. (株)JTBコミュニケーションデザイン黒岩様からのご講演

 

<旅行業界の市況/トレンド>

従来、旅行会社は店舗をチャネルとして、移動・宿泊・コンテンツ等をパッケージ化した旅行商品を「非日常」の体験として提供してきました。

その一方、MaaSでは「日常的」に利用する駅や交通系アプリ等をチャネルに、デジタル上でワンストップのモビリティサービス及び移動目的地の体験価値を提供します。

上記の通り、MaaSの出現によって「日常」の中で観光/旅行へのアクセスがシームレス化してきており、このようなMaaS領域における旅行ビジネスの変化に際し、JTBをはじめとしたプレイヤーは抜本的な変革が求められています。

実際に、観光産業におけるMaaSのビジネスモデルは、下記のようにモビリティサービスと着地サービスを1つのプラットフォームを通じてユーザーに提供する、というサービスへと変化してきました。


<JTBの取組と狙い>

JTBでは現在、観光地と顧客をつなぐTPF(ツーリズム・プラットフォーム)を構築しています。宿泊施設や飲食店などの観光地のコンテンツを提供する事業者のデータをデジタル化し、自治体やDMO、国内外の旅行会社等のセラーに提供しており、そのプラットフォーム上で蓄積された購買や移動データは新たな観光マーケティングに役立てられています。

 


<MaaSによるビジネスチャンス>

旅行のDX化によって、顧客の旅先での消費/移動データの可視化が進んできています。

データによって可視化された顧客の消費・移動状況を分析することで、顧客が旅先で求めているものや地域が抱える課題と機会を導き出すことができるようになってきています。

MaaS単体で利益を上げるのではなく、MaaSによって得られたデータから、地域単位で新たなビジネスを生み出すことがMaaSによるビジネスチャンスだと考えています。 

加えて、国は主要課題として脱酸素を掲げています。観光に携わる重点対策としてはゼロカーボンパーク、ゼロカーボン・ドライブが挙げられます。

自然資源を1つの着地コンテンツとして、そこまでの移動手段であるモビリティの脱炭素化を地方創生に組み込むことで脱炭素の潮流に乗ったビジネス展開が可能となっています。

<環境配慮型MaaS 日光MaaSの取組>

JTBコミュニケーションデザインでは環境に配慮しながら観光を促進していく「環境×観光」の取組を実践しています。

EVカーシェアの設置や、移動や着地コンテンツ等のサービス利用の1ID化により、業務の効率化と多面的なデータ蓄積を行いながら日光地域を低炭素な観光地としてデザインする事業を進めています。

目的は、

・環境にやさしい観光地づくり
・ワンストップサービスによる宿泊増売
・データの蓄積とマーケティングへの活用

であり、スイス政府観光局による公共交通機関と連携したサイクリングやカヌー等の自然を体験する「スイス・モビリティ」を先行事例としています。

 


 

2. パネルディスカッション

 

パネルディスカッションでは、日本で初めての環境配慮型・観光MaaSである「NIKKO MaaS」のプロジェクトについて参加者様からの質問を深堀りする形で、JTBコミュニケーションデザインの黒岩様、AMANEの井上様に語っていただきました。

 

■日光市の最大の課題意識は何だったのか?

黒岩様:人口減少と若年層の流出が課題。また、観光事業が旧態依然の体制をとっており、新たな観光事業の創出に興味関心があった。それに対し、自然を利用した観光コンテンツの作成と電気自動車の普及による解決を狙った。

 井上様:他の自治体では①コロナ禍の中、提携を考える事業者が少ないこと、②予算の確保が難しいことの2点が観光MaaSを進めるうえでの大きな課題。

■ベンチマークとしている国や事例は?

黒岩様:スイスモビリティの公共交通×自然をテーマにしたツーリズムがベンチマーク。

井上様:観光という文脈ではないが、モビリティバジェットへの関心が高い。BtoBの契約を結び、交通にまつわる様々な費用を福利厚生費として支払うシステムがヨーロッパで進んでおり、ビジネス形態が変わってきていることを感じる。

■特にハードルが高かった点は?

黒岩様:ベンチマークとしたスイスと比べ、日本にはステークホルダーが多く意思統一が難しく、時間がかかったこと。

井上様:プロジェクト推進上のポイントとして、地域住民のニーズを外すことなく、行政や自治体に訴えることが重要。

■環境配慮型MaaSというブランディングは集客効果が見込めるのか?

黒岩様:集客力はさほど高くないのではないかと考えている。しかし、環境配慮のようなテーマに共感した顧客が流入するようになることで単価の上昇やリピート率の向上が望めるのではないかと考えている。

■閑散期の維持は課題にならないのか?

黒岩様:閑散期やコロナ禍での維持問題については収集したデータを利活用し、地域住民や長期滞在者向けのサービス拡大により「日常」の利便性向上による解決を目指す。

終わりに


今回は事例を中心にモビリティ新規事業の創り方について黒岩様にご講演いただきました。

実際の取り組みの中心にいらっしゃる方のお話を伺い今後の新規事業の取り組みの参考になったと答えた参加者もたくさんいらっしゃいました。

 

弊社では、この記事で紹介したMaaS領域での「新規事業開発サポート」や「PoC実行サポート」などのコンサルティングを提供しています。

「新規事業開発サポート」と「PoC・概念実証」サービス詳細の資料はリブ・コンサルティングのWebサイトからダウンロードが可能です。

「新規事業開発サポート」サービス詳細資料

「PoC・概念実証」サービス詳細資料


 

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