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マルセル・マルソーの映画

note投稿150日チャレンジ、111日目。

パントマイムの神様と呼ばれたマルセル・マルソーの映画を観てきた。
「沈黙のレジスタンス」
ユダヤ人の孤児を救った芸術家として紹介されていた。
(以降、ネタバレが含みます)

マルソーはフランス人だと思っていたけど、ユダヤ人だったこと。
マルセル・マンジェルという名前から、第二次世界大戦中にフランス人名としてマルセル・マルソーに改名したこと。
ナチスドイツに抵抗するため、レジスタンス運動に参加していたこと。
ドイツから避難してきたユダヤ人の子ども達を助けるために、命がけでフランスを離れてナチスから逃れたこと。
戦時中の混乱の中で、必死にマルソーは仲間たちと生き抜いていた。

この作品は史実を元にした物語ということで、全てが事実ではないようだけど、マルソーの青年時代はとても苦労していたことが分かり驚いた。

映画では、おそらくマルソーは10代後半から20歳頃に体験した話になっている。
マルソーは第二次世界大戦の後、1946年から俳優学校に通い、
現代マイムの創始者エティエンヌ・ドゥクルーからマイムを学んだようなので、作品中に描かれている白塗りのパントマイムのパフォーマンスシーンについては、フィクションとして描かれたものだと思う。

ただ、俳優を志していた青年マルソーは、当時の大スターであったチャップリンに憧れて、小さなキャバレーでパントマイムを演じていたシーンも描かれていた。
改めて当時の俳優チャップリンの存在感は大きいもので、マルソーの才能を開花させたきっかけになっていた事が分かる。
そして、パントマイムという表現を語るうえでも、チャップリンがルーツになっているのは、この映画からでも感じ取ることができた。


2003年。マルソーが80歳で来日した時、舞台を観に行ったことがある。(おそらく日本で最後に公演したとき)そして、ワークショップにも参加して、直接指導を受ける事ができたのは貴重な経験だった。

ワークショップの時に、実演でパントマイムを披露してくださったときは
身体中からエネルギーが溢れていた。眼光は鋭く「ハッ」「フッ」と、呼吸に合わせたシャープな動きに釘付けになった。
これがパントマイムの神様か!と感動した。

私のマイムの師匠、佐々木博康先生からよく話を聞いていたマルソー代表作「青年、壮年、老年、死」の創作について、ワークショップでご本人に質問をさせていただいたことを今でも覚えている。

マルソーは
「君と同じくらいの20代後半に創った作品だよ。当時は全く上手く出来なかった。経験していない年齢を演じる事が難しかったけど、歳を重ねると分かる事があるので、何回も演じ続けて完成度を高めているんだ。」
というようなお話しをしてくださった。

とにかくマルソーはお喋りで、情熱的な人だった。

18年前にお会いした事があるマルソーが映画化されて、どのように描かれるのか楽しみに観た。注目は最後のシーンのパントマイム。
涙が出た。私が観た本物のマルソーと重なった。
あのマルソーが壮絶な時代を過ごしてきたこと、悲劇的な体験をしてきたことが、私が20代の頃に観たマルソーのひとつひとつの表現の中に刻まれていたのかもしれないと思うと胸が苦しくなった。
当時のマルソーの舞台を思い出した。ワークショップで元気な姿で会えた事をとても懐かしく感じた。

最後のエンドロールでは、本物のマルソーのパントマイムを紹介してほしかったな。
素晴らしいパントマイムアーティストですから、本物をぜひ知ってほしいです。

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【今日の #まートレ】
ピンチャマユラーサナ


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