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パフォーマンス・音楽・アートの扉_culture

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身体という物質性、知覚の直接性に興味があります。 目と耳、そして皮膚感覚。 それら刺激に満ちた世界。
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#美術批評

【美術評】 マヤ・ワタナベ 《Suspended States 滞留》 Part.2 『停滞』

本稿は マヤ・ワタナベ『Suspended States 滞留』Part.1『崩壊』の続編です。 マヤ・ワタナベ『停滞』9分ループ(2018) Covid19による都市閉鎖、自主隔離、自由な往来の制限といった行動抑制は、二項対立〈生存/非生存〉における二者択一という選択である。その状況においてわたしたちは、行動抑制による〈生存〉を選択したのだ。生存という生の持続のためのある種の選択の要請。戦後、とりわけ日本において、このような生の選択を迫られることがあっただろうか。 こ

【美術評】 ダグ・エイケン『 i am in you』金沢21世紀美術館

ダグ・エイケン『i am in you』(2000年) 中央に1つ、周辺に4つのスクリーンで構成された映像インスタレーションである。 アメリカ郊外の日常的な風景が映し出されている。タイトル『 i am in you』は英語的に日常的な表現なのか、それとも詩のような表現なのか、わたしの英語知識では判然としない。 「わたしはいる、あなたの中に」 わたしという存在はあなたの中に本当に在るのだろうか。そして、在るとすればどのように在るのだろうか。物語の登場人物は少女のみ。そのほか

【美術評】 エリプシス|フィオナ・タン『セブン Seven』(金沢21世紀美術館)

金沢21世紀美術館で開催された フィオナ・タン Fiona Tan《エリプシス ELLIPSIS》展 《エリプシス ELLIPSIS》が開催されたのは2013年8月3日〜11月10日。 フィオナ・タンの映像作品に興味を覚えるわたしは、金沢まで見に行くことにした。 本題に入る前に展覧会カタログについて。 わたしは気に入った展覧会のカタログは購入することにしているのだが、その時はどういうわけか買い忘れてしまった。それからしばらく経ち再び金沢を訪れたのだが、カタログはすでに完売

【美術評】 エリプシス|フィオナ・タン『リンネの花時計Linnaeus’ Flower Clock』を想う(金沢21世紀美術館)

花の時間は朝5時に始まり午後6時に終る。 花の明確な時間の流れと記憶。 花は忘却することがあるのだろうか。花は未来を想うことがあるのだろうか。そして過去を想うことも。 花はなにを憶えているのだろうか。 花は30年後もいまの自分を憶えているだろうか。そして30年後も憶えているであろう自分を思い浮かべることはあるのだろうか。 記憶と忘却は〈対義語=二項対立〉なのではないのではないだろうか。 世界は記憶と忘却との織物のようなものであり、記憶と忘却は時間の地形図のように幾重にも