【音楽評】 寒川晶子〈ド音ピアノ〉ド音という停止でも前進でもない多音、そして七里圭作品
七里圭監督が〈音から作る映画〉の一環として製作した『サロメの娘』。
音から作るとは、文字通り、はじめに音があり映像が後にある、という意味だ。
通常ならはじめに映像があり、その後に劇伴が制作される。劇映画に限らず、テレビドラマやドキュメンタリー作品でも、音楽は後にくる。
ところが、七里圭監督はそのことに疑問、いや、疑問というよりも違和感を覚えた。映画にはサイレントからトーキーという歴史があるのだが、いつの間にか音は映像に凭れかかり、その結果として映像に回収されるようになった。