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文学の扉_literature

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文学について書くとは文字テクストによる文学テキストへの返礼。 なんて無謀な行為なんだ。
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【エッセイ】 ノンシャラン〜円卓袱台と漆とかぶれ

地に足がつかず、不意にどこかに行ってしまいそうになったり、どこかに吹き飛ばされてしまいそうになったり、それでいてここではないどこかに行くわけでもない、そんな状態をどのように表現すればいいのだろう。 たとえば、フランス語のノンシャラン(nonchalant)というのはどうだろう。不意にそんなふうに思った。 「nonchalant」の例文を辞書(「新スタンダード仏和辞典」大修館書店)から拾ってみると、 tempérament nonchalant    のんびりした性格 élè

【エッセイ】 映画主義宣言日と川上弘美『なんとなくの日々』『此処彼処(ここかしこ)』

(写真は下鴨神社「古本市」) 首都圏の生活を締めくくり京都に戻ってから何年経つのだろうか。 京都に戻り半年ほどで、荷物だけでなく気持ちの整理もつき、なんとなく日記をつけるようになった。 とりあえず京都日記と名づけた。 日記といっても、これまで気まぐれに生きてきたわたしにとり、日課と義務づけても続くはずない。そこで、思いついたら書く、というユルイ気持ちで始めた。 ところが、日課とまではいかなくても、思いもよらず真面目な日記になっていることに気づいた。しかもいつの間にかガチの