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マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第十一部-聡明の決意-

 聡明はくい坊が飼われている家を後にして、マモ村に戻ることにした。悔し涙を腕で拭いつつ長い坂道を登った。坂道を登りきったところの大きな岩にさすらいが待っていた。さすらいは聡明を見つけて駆け寄ってきた。「とても心配してたんだぞっ、とにかく長老のところに行こう。話を聞かせてくれ」聡明は慌てて涙を拭いた。長老の巣穴に行くと、キッキが長老から手当を受けていた。聡明は長老をはじめ、さすらいとキッキにも人間の村での出来事を話した。長老は「聡明くんには、くい坊くんのことで辛い思いをさせてしまったな。人間から食べ物をもらうことを禁止してしまったせいでこのようなことになってしまった。明日からは禁止令を解除する。見張り隊も解散じゃ」と言って長老は背を向けた。この突然の解除命令にキッキとさすらいは反対した。「ということは我々は人間に屈するということですかっ」長老は「これ以上、被害を出さないようにするにはこの方がよい。キッキくんから箱罠の恐ろしさも聞いた。聡明くんから人間とマモ族の力の差も聞いた。残念じゃが我々が敵う相手ではない」それを聞いた聡明は「村に行って人間との力の差を見せつけられました。けれど僕は勇者の血を継ぐ者であると信じています。修行をしてもっと強くなりたいと思っています」と真っ直ぐな瞳で長老を見つめた。長老はヒマラヤ山脈の麓にマーモスという強者がいることを教えてくれた。「彼は人間から剣を盗み、村を離れ、一匹で修行をしておる。剣術には長けておるが少々気性が荒い。過酷な修行になるかもしれんが耐えられるかな」聡明は「きっと立派な勇者になって帰ってきます」と力強く言った。翌朝、聡明は、さすらいやキッキに別れを告げて、一匹ヒマラヤ山脈の麓に旅立っていった。

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