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マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第八部-再会-

 キッキが見覚えのある坂道を登っていると、途中で聡明とさすらいに出会った。キッキは泣きながら聡明とさすらいに駆け寄って「くい坊さんが、人間に連れて行かれましたっ」と叫んだ。聡明はさすらいにキッキをマモ村まで連れて帰るように頼んで、急いで市場の方に走り出した。聡明が市場に到着した頃にはすっかり日が暮れて人間は一人もいなくなっていた。聡明は市場を駆け抜けて、人間たちが住む村まで来た。平家がぽつんぽつんと立ち並んでいて、家の窓からは明かりが灯っている。聡明は一軒一軒窓から覗いてみたがくい坊の姿は見当たらない。そのうち家の明かりも消えて辺りは真っ暗になった。聡明は川沿いの草の中に隠れて日が昇るのを待った。早朝、まだ人間たちが寝静まっている頃、聡明はくい坊探しを再開した。村の端の最後の一軒家の窓を覗いて見ると、部屋の隅っこに檻の中に入って青いタオルに巻かれて眠っているくい坊を見つけた。檻の柵は開けられている。「くい坊さんだっ」聡明は思わず窓を叩いた。何度も叩いているとくい坊が窓にいる聡明に気が付いた。「くい坊さんっ聡明ですっ助けに来ましたっ」くい坊は聡明を見るとすぐに立ち上がって窓のほうへよたよたと近寄ったが、途中で立ち止まって下を向き、部屋の隅に置いてある檻の中に戻っていった。そして、窓に背を向けて青いタオルにくるまった。「くい坊さんっどうしたんですっ」聡明が窓を叩いていると、くい坊の飼い主である男に気付かれた。聡明は窓から離れて川辺まで必死に走った。草むらに隠れながら「くい坊さん、一体どうしてしまったんだろう」聡明はくい坊の身に起こっていることを心配した。そして夜が暮れてからもう一度、くい坊のもとに行くことにした。

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