知。 -amazarashiの歌詞について-
どうも、まーくんです。変な名前ですね。
ぼくの大好きなバンドamazarashiの新曲が出ました。
タイトルは「1.0」。
amazarashiがこの名前となってデビューしたCDのタイトルが「0.」(のちに全国展開するにあたって「0.6」に変更されました)でした。その全国版に特典として付いてきたDVDには、初の公演、その名も「0.7」が収録されています。
要するに、新曲のタイトルは、ファンにとっても、恐らくamazarashiというバンドにとってもかなり重い意味を持つわけです。
タイアップでそんな節目の曲使っていいの???という思いは、実際にMVを視聴してすぐに杞憂であったと判明しました。
恥ずかしながらタイアップ先の「チ。-地球の運動について-」という作品は未だきちんと読んでいません。本当に大雑把な理解のみです。こちらのファンの方には、タイトルで釣ったこと、それを踏まえた解説ができないことを謹んでお詫び申し上げます。サーセン。
さて、先に述べた通りぼくはamazarashiのファンなので、今からファンによる高尚な遊びを始めたいと思います。
ずばり「歌詞に隠された過去作のイメージを読み解く遊び」です。
YouTubeのコメント欄に着想を得た部分が大きいので、この場を借りてコメ欄の住民にお礼を言っておきたいと思います。ありがとうございます。
上から一つずつ見ていきましょう。もしイメージと違う、別の曲の方が合うという意見があったら教えてください。ただ、今から列挙していくのはあくまで「自分が納得できる一つの解釈」なので、訂正するとは限りませんが。
歌詞を見ていく
・あれから色々あったけど→それはまた別のお話
「あれから僕ら幾星霜」
最初にして最大の紛糾ポイントかもしれません。近年の作品に「色々あった」のワードは頻出で、amazarashiおよび中心の秋田ひろむ氏に、「人生総まとめ」とでも言うべき、気持ちの整理をしている様子が感じ取れます。『未来になれなかったあの夜に』は非常に好きですが、あの一曲で完結している良さがあるとも思います。ここは「あれから」部分の合致と、歌詞とタイトルとの繋がりの良さを踏まえてこれ。
・こちらは変わらずにいます→ライフイズビューティフル
「わいは今も歌っているんだ」
「変わらず」という表現も多く見られるものですが、前向きな「今も変わらず歌っているよ」と、『終わりで始まり』のような「今も変わらずうまく笑えないや」という後ろ向きなものの2パターンあります。
・いつも手紙感謝します→無題
「桜模様の便箋」
amazarashiにおいて手紙といえばこの曲の印象。この後に続く「少なくともあなたは僕にとって1です」という言葉から、『無題』の主人公と「彼女」の関係に近しい、大切な誰かとの繋がりがこの曲にも感じられます。
・窓越し木々からまだらな陽光→さくら
「窓の外にある大きな木」
窓と木と光の要素からこれが一番しっくりきました。「あなた」がいなくとも、木々は美しくそこにあり、窓は光を部屋へと入れます。
・季節はほとほとせっかちで→季節は次々死んでいく
「急いても追いつけず過去になる」
曲の題名・テーマとも一致する部分が大きいので特に語りません。
・酷く焦ってしまうもので→スピードと摩擦
「早く連れてってくれ」
悩みましたが『スピードと摩擦』でしょうか。「焦る」という単語は『アルカホール』などにも登場しますが、あの曲全体から漂う澱んだ雰囲気、濁った視界のようなものは「あなた」への手紙には似つかわしくないと感じます。『スピードと摩擦』も大概暗い歌詞ですが、「命がじりじりと焦げる」ような焦燥感を抑えながら手紙を書いているのかも……という解釈と、曲のアップテンポさから、ここはひとつどうでしょう。(何が?)
・時間は平等と言いますが 平等ほど残酷なものはないですね→クリスマス
「どうしようもない日も積み重なれば 年月となるのは残酷ですね」
ここも被る点が多い箇所です。言い方の違いだけでほぼ同じ意図でしょう。
・ほんとのとこ後悔ばっかりで→穴を掘っている
「後悔までは拭えない」
・今日も眠れない夜が来て→夜の一部始終
「眠れない夜にそれなりの理由」
・悔やんでも悔やみきれず→奇跡
「それをいちいち悔やんだって今更どうにもなりはしない」
この3つは割と歌詞の通りすんなりです。ここから下は、歌詞の通りで内容の少ない部分はまとめたり端折ったりします。
・成仏できない想いが→美しき思い出
「忘れたいこと 忘れたくないこと」
「成仏」というワードから、『幽霊』なども一瞬候補には上がりましたが、「忘れたいのに忘れられない想い」という点を重視すればこっちが適当かもしれません。
・真っ黒な夜に成りすまし→帰ってこいよ
「真っ黒な夜でこそ思い出せ」
・真っ黒に塗りつぶす空に→タクシードライバー
「青い青空が青すぎてもはや黒で」
黒は多く登場する色ですが、夜と空への対応を考えればこうでしょうか。
・一粒の星明りだって→スターライト
「星巡りの旅は続く」
・見当たらない街の底で→積み木
「光が差し込んだこの街の片隅で」
星と言えばスターライトですが、「明かりも見当たらない街の底」には悩みました。「街」を取るなら『この街で生きている』や『街の灯を結ぶ』ですが、前者はそんな街で生きていく希望、後者は「一人一人消えていく街」で生きる不安や閉塞感と、若干ですがズレを感じます。ここでは「光が差し込んだこの街の片隅で」と歌いながらも、「確かに掴んだもの 幾つも無いんだけど」と少しの後ろ向きな思考が残っている『積み木』でどうでしょう。
・それでもしがみ付く光を→ワンルーム叙事詩
「高くそびえたつこの炎 この先照らすかがり火としよう」
燃えろ燃えろ全部燃えろ。『ワンルーム叙事詩』の歌詞に「しがみ付く」イメージは薄いものの、「それでも人生ってやつには負けるわけにはいかない」という前後を鑑みると、「それでも光を」のニュアンスには合います。
・生きていく為の言い訳を→ひろ
「だから僕はこんな歌を歌わなくちゃいけないんだよ」
「他に進むべき道なんてない僕らにはお似合いの言い訳」という歌詞もあり、生きていく言い訳としては『ひろ』を拾いたいです。ギャグでなく。
・死んではいけない理由を→僕が死のうと思ったのは
「死ぬことばかり考えてしまうのはきっと生きることに真面目過ぎるから」
死ぬ理由を歌った歌ですが、死んではいけない理由とは表裏一体だと感じます。「あなたのような人が生きてる世界」という『僕が死のうと~』の最後の歌詞を「死んではいけない理由」とするのはやりすぎでしょうか。
・悲しむ家族の顔とか→エンディングテーマ
「僕が死んだら流れ出すエンドロール」
「お世話になった人たちの名前がずらっと並」んだエンディングテーマ。見送る人の顔が悲しみを湛えていても、エンドロールを見ている本人の中には大事な人の笑顔が浮かんで、ずっと終わらなければいいと思います。
・掴みたかった憧れとか→逃避行
「掴み取るその理想の重さ 僕らの悔し涙と等価」
「憧れ」や手にしたかったというニュアンスから『ひろ』を連想していた人もYouTubeのコメント欄にはいましたが、個人的には(曲の被りを減らしたいというこだわりも含めて)素直にこの歌詞だと考えていい気もしています。
・悲観とは未来にするもので→雨男
「悲観 楽観 交互に積み木崩し」
「悲観」も頻出ワードの一つです。『後期衝動』では蜂の巣にされています。雨男はファン人気投票1位でもあるし、ここでねじ込んでおきたい。
・季節外れの海水浴場にて→自虐家のアリー
「あの海と一つになれたら」
海が出てくる曲はいくつかありますが、どことなく『アリー』からは乾燥した冬の寒さを感じます。他の有力候補には『ヒガシズム』の「秋の砂浜にビーチサンダル ストーブの中去年の灯油」もありますが、後の歌詞が過去と未来・時間の繋がりを強調している点から、アリーに軍配かなと思います。
・寄せては返す過去と未来→ぼくら対せかい
「過去 未来 ぼくら対せかい」
・出会いと別れ、光と陰→光、再考
「出会いと別れを繰り返して 光と陰を股にかけて」
・そんなものと遠く離れて→ハレルヤ
「希望と挫折交互に足踏みしてここに来たよ」
「そんなものと遠く離れて」が迷うポイントです。「遠く離れて」なら「私が私を語る程に 私から遠く離れてしまうのは何故でしょうか?」を含む『独白』も候補でしょうが、ここの部分で「私から遠く離れて」いるのは「私」自身ではなく、「光と陰」「過去と未来」からなるこの世界である気がします。『ハレルヤ』の「けど別にこれといって何かを成し遂げたわけじゃない」という後に続く歌詞からも、世界の歩調に合わせきれずただ足踏みしている→遠く離れるの解釈がスムーズかなと感じました。
・ただ息をしてたいだけなのに→月曜日
「息苦しいのはここが生きる場所ではないから」
・涙がこぼれそうになって→少年少女
「なんだろう なんだろう 涙が溢れてしょうがないよ」
・もう無理かもなって もう無理かもなって→しらふ
「これで何百回目かの人生の振り出し もう無理かもね」
涙をこぼすシーンも多くありますが、これはもう単に好みで決めました。生き方・生きる場所を自分で決める若者の熱を描く、『チ。』という作品の特性も加味しています。実際に出来てるかはともかく。
・それでも逃げ出せない因果を→虚無病
「輪廻の環状線 抜け出せない因果」
・かつての嘲笑も罵倒も→空に歌えば
「嘲笑も道連れにして」
・後ろ指差されたこととか→風に流離い
「必死な奴に後ろ指差し 嘲笑った奴を見返したい」
・全部帳消しにできるもの→未来づくり
「今までのことなんて帳消しにしたいんだけれど」
『虚無病』はちょっと世界観の独立した曲ですが、表現の一致を見てここに入れました。あとはすんなりと対応関係が決まったので、amazarashiが一貫して言いたかったメッセージがここには多く含まれているのかも。
・嵐でも折れない旗の様に 絶対的に誇れるものが→ジュブナイル
「誇り高き少年少女」
「誇り」一点張りです。『ジュブナイル』は「自信過剰な少年少女」が「曲げぬ自分の意志」と「未だ枯れない表現欲」、そして「無謀さを武器に駆ける」という、非常に『チ。』と相性の良い曲ですね。「嵐でも折れない旗」はパッと思いつかなかったので、過去の曲を見落としているか、あるいは『チ。』の方に近い表現があるのかもしれません。
・友達も学校も 家族も社会も 恋人も→終わりで始まり
「友達のおかげで立ってるんだ 家族のおかげで歩けるんだ」
こうした社会を構成する要素を列挙するのは、amazarashiの得意技と言っていいんじゃないでしょうか。学校は抜けていますが、この後さらに「あなたのおかげで生きてるんだ」と、世界が自分を繋ぎ止めていてくれたという『1.0』後半のニュアンスとマッチした歌詞が出てきます。
・泳ぎきれずに藻掻いている→それを言葉という
「終わったと言われた毎日を あの時確かに泳ぎ切った」
・生きたがりの亡霊たちが→リタ
「君の亡霊だ きっとそうならいいのにな」
泳ぐ・亡霊などそれぞれの単語の一致からです。泳ぎ切れずに藻掻いているだけだと思っていた日々を確かに泳ぎ切った、という解決。君と笑った季節が終わり、時間が過ぎ、「本当は亡霊が生きたがっているのではなく、自分がリタの亡霊を殺したくなかっただけだ」と気付く、という解決。2つの歌詞は、イメージされる曲たちの中で、最終的にこうした解決へ向かいます。『1.0』の歌詞は各曲が始まるより更に前の段階を表している気がしますね。
・凍える心に声も無く→冬が来る前に
「凍えて僕は待っている 二度と来ないものを待っている」
「凍える心」という文の解釈が大変悩ましいところです。『初雪』の「君の優しさ 風に吹かれて 僕の胸 通り過ぎただけ」などは声も無く静かなイメージに合いますし、『冷凍睡眠』は文字通り冷凍されています。前後の歌詞を見るに、これは暗く重い過去の時代を振り返っているので、「二度と来ない昨日を待っている」という『冬が来る前に』が第一候補になるかなと感じました。
・消えたい願いすら叶わず 死にたいなんてうそぶいたって→バケモノ
「本当は笑って生きたいくせに 嘘を吐いてる」
「うそぶく」という表現を「嘘を吐く」と混同しないようにとは思うんですけど、「死にたいと大げさなことを言う≒嘘」という解釈ならギリギリセーフではないでしょうか。『バケモノ』の主人公は、「消えたい」という自分の心からの願いに嘘を吐き、「本当は死にぞこなった」のに周囲に嘘を吐き、最後まで「本当は笑って生きたいくせに」自分に嘘を吐いています。消えたいという表面の願いも、その後ろにいる死にたいという願いも、最後は「生きたい」という思いに帰ってくるのかもしれません。
・それでも逃げ込める居場所を→とどめを刺して
「僕と逃げよう 地の果てまで」
『ドブネズミ』にも「嵐が来る前に早く帰っておいでよ」「ここが僕らの世界」という歌詞があります。前後の繋がりの薄い「逃げ込める居場所」という一文のみから判断するのは難しいですが、『とどめを刺して』はそこを探して逃げている最中で、『ドブネズミ』は居場所を見つけた上で、そこで「君」≒大事な人と眠りたいというプロポーズだと言えそうです。いずれにしてもイメージには沿うので、ここでどちらがより相応しいかは判断できませんでした。
・あなたを呼び止める声を→初雪
「行かないでくれと呼び止める思い出を」
『初雪』では「呼び止める思い出を振りほどいて」「どこまで行けるのだろう」と、自分を呼び止めてくれるものを、振り払わなければならない・乗り越えねばならない「思い出」であるとして描いています。対照的に『1.0』では、呼び止めてくれるのは世界に繋ぎ止めてくれようとする「声」です。一見すると違うものであり、『そういう人になりたいぜ』の「君」の呼びかけを入れるという見方などが自然にも思えます。しかし、これはあえて「実は自分を呼び止めてくれる声は、いつも同じところから出ている」という解釈をして、『初雪』では未来へ向かうために、それを振りほどかざるを得なかっただけなのだと考えてみました。
・もうここで死んだっていいって 心底思える夜とか→命にふさわしい
「ここで死んでもいいと思える一歩こそ」
『命にふさわしい』は、「裏切られたっていいと道端ひれ伏すような 酩酊の夜明けこそ命にふさわしい」という歌詞もあり、「もうここで死んだって~」という一連の歌詞は『命にふさわしい』を強く意識したのかな?と感じました。
いやー書いた書いた。
ただ、これらは最初に言った通り、「自分が納得できる解釈の一つ」でしかありません。「amazarashiが、秋田ひろむがこういう意図で以て作ったに違いない!」とかの主張は含まれていませんので、そこに注意してください。
ここまで考えてなかったとしても、新しいものを出すたびにファンに深堀りされて、時には神格化までされてしまうわけですから、ミュージシャン始め表現者っていうのはとかく大変だなぁと思いますね。他人事。
以上です、ありがとうございました。
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