泳いでまたは歩いて「Fugu school part one」、制作の追憶「LONDON ILLUSION」
フグ(河豚)から辿る、魚が泳いでまたは人が歩いて起こる文化的な物語。過去のロンドンの情景や匂いを辿る、制作者による制作の追憶。
福岡・美野島のOVERGROUNDさんでは、アートデザイン集団・åbäke(アバケ)さんの展示「åbäke and LPPL “Fugu school part one”」と、コスチュームデザイナー・ARAKI SHIROさんの展示「ARAKI SHIRO “ LONDON ILLUSION”」が開催されていた。
イギリス・ロンドン発で、著名な音楽アーティストや音楽レーベルとも共同で制作活動を行いながら、地域にまつわる文化的な物語からアート制作を行うなどして活躍されているアートデザイン集団のåbäkeさん。
åbäkeさんの展示「Fugu school part one」では、ストリートアートが施されたポスターの展示と、2003年に偶然トルコの海岸で発見された魚のフグ(河豚)を起点に、日本では馴染み深いフグの食文化の歴史、日本のフグを通しての海外とのつながり、さらにはフグが外来種として住み着けるまでに至った海面温度の上昇など環境問題にも焦点をあて、アートと魚を通して歴史や現代の課題などを考える提案がなされていたもの。
有機的なフォルムが特徴で、人が身につけるコスチュームを空間での新たな生命と解釈するスタイルが独創的で、過去には海外の著名な新聞紙にも取り上げられるなどして活躍されているARAKI SHIROさん。
ARAKI SHIROさんの展示「ARAKI SHIRO “ LONDON ILLUSION”」では、2010年のロンドンからご自身の個人的な記憶や幻想から手がかりを得た展示となっていて、ひたむきに創作を続けた日々や、あの頃の街の情景や匂いの思い出を浮かべて、2010年の過去と今の制作が繋がったアート空間となっていた。
日本、特に山口・下関で馴染み深いフグのさっぱりとした美味しい味わい。だがそれは日本の長い歴史から調理されるからこそ、親しまれる生き物(食べ物)であって、一度遠くに泳げば身体に毒を持つやっかいな外来種ともみなされる。一方地上では社会的に見るとモラル、毒々しさで嫌われることがあるが、解釈を加えると街、人に親しまれるモノがあった。フグとストリートアートがリンクするときである。
たくましいいくつかの根に支えられた、吐息が聞こえそうなコスチューム。その生命を囲んでいたドローイングなどのアートには、たくさんの精神が込められていた。