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建築の展示会場であの人になりきってみた♪

父の影響

父が美術館巡りを好む環境だった為か、幼い頃から色んな美術館を訪れた。
お気に入りの美術館は、何度も訪れたことが、数年分に渡る大量のアルバムの中に見て取れる。
1番幼いのは、私が立って歩き始めた頃のものから。

美術館のあの人

美術館には、展示物と展示物の間、次の空間への順路の途中などに、椅子が設置され、学芸員さんが座っていることもある。
椅子にずぅーっと座って、観覧者が展示物に触れないように見守り、稀に注意することもある。
ほとんどの時間、黙って座っていることが多そうな職業を、子供心に『退屈そうだな』と思ったことがある。

蔦屋書店熊本三年坂で、2月14日〜27日まで、日本を代表する建築家でもあり、熊本大学建築学で教鞭をふるっていらっしゃる、田中智之教授の展覧会(*1)が開催されていた。
縁あって知り合い、建築の【け】の字も知らない私でも、先生が描くパースの凄さは分かる。
建築関係の人なら、耳にしたことがあるかもしれない【タナパー】(*2)と呼ばれる青ペンで描かれたパースが有名だ。

その展示会で、日曜日の数時間、先生が在廊しているという情報があがってきたので、その日に伺うことにした。
熊本では珍しく、午前中は雪が吹雪く寒い日だった。
予定時間より早めに着いたので、先に展示物を眺め、いつも個展を開かれる時に必ずあるノートへメッセージを遺し、会場限定ポストカードも手に入れ、先生の登場を待った。

疑似体験

すぐ隣がカフェだったので、そこで待とうかな?と思ったその時。
展示スペースの1番奥に1脚だけ椅子が置いてあった。
特に係員さんもいなかったので、そこに座って待つことにした。

ブース入口に田中先生の書籍や建築関係の書籍が設けられ、それを色々な人達が見て行く。
高校生位の学生が「スゲー!めっちゃスゲー!!」「ヤバっ!これを機に建築とか目指してみる?」との会話。『うんうん。凄いよね。こういうのがキッカケで進路を考えてみるのもいいよね。』
私の隣には、【新宿駅】のパースを見ながら、「こういうのって、どのくらい下描きするんだろー。ねぇ?絶対下描きしてるよね?」「そりゃ、何枚も描いてるんじゃない?」『やっぱり気になるよね!私も同じパースを見た時に気になって、以前尋ねた事があったけど、「下描きはしないね。」と言ってたんだよねー。飲みの席だったから、ちょっと不確かだけど。』なんて、勝手に会話に参加していた。

姿勢良く、きちんと座って、観覧者のやり取りにこっそり耳を傾け、知っている内容だと会話に混ざりたくなり、道すがら見て行く人達には、「あと少し待てば、ご本人登場しますよ!」と声掛けしたくなったり、うずうずしていた。
これが学芸員さんなら尚更、知識も多く、そういう衝動に駆られるのではないかと思った。
子供心に思った考えは、疑似体験を妄想したら、思っていたのと違い、『楽しい』と感じ、違った方向性が見えた気がした。
そうしたら、次の職にするのもいいなと思えた。

注釈


*1:田中智之の解体新書展[熊本]
*2:タナパーとは田中先生が描くパースのこと
*3:「」内は、話し言葉をそのまま引用してしていますので、熊本弁になっています。

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