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上には上がいる〜パートナーとの話③

仕事後、1時間半の運転を終え、パートナーの元に戻ってきた。
事故渋滞に巻き込まれ、想定外の道の混み具合だった。

車を出た私は人目をはばからず、ドアを開けて大きなあくびをした。
すると運の悪いことに、一台向こうの辺りでおじさんが立っていた。

あ。やばい。あくびのブサイク顔を見られてしまった。

一瞬私は焦ったが、もっと焦ったのはそのおじさんが人差し指の第二関節辺りまで鼻に入れて、鼻の掃除をしていたのを見てしまったからだ。
上品に言ったが、ようは鼻をほじりまくってたのである。

指を奥に入れすぎて、顔が変形している。
あんな顔つきを見れるのは、今日か福笑いの時くらいしかない。

だいぶ、引いた。
控えめに言って、相当引いた。

もちろん長いことは見てられない。
むしろ見なかったふりをしたかったが、その手をまさか私の車につけないだろうか、と内心ヒヤヒヤしまくっていた。

家に帰って即座に、パートナーを呼ぶ。

あれ?どこにいる??
きいてきいて!

リビングには彼が作った美味しそうなトマトソースパスタの跡があった。

おや、寝ていそうだな。

ベッドルームに駆け込むと、彼が気持ちよさそうにスヤスヤ寝ていた。

あれ?寝ちゃったの?

尋ねると、彼の大きい目がわずかに開いた。
その顔はとてつもなくかわいい。

おやおや、お疲れですな。

私は汚い話を彼にしようとしていたことを反省した。
こんな話は彼には向かない。
申し訳なかった。

そう思って、彼の顔を覗き込む。

すると、右の口半分、広範囲が真っ赤だった。
広範囲すぎて、血を流してるのかと思った。
大乱闘の行く末のような血の流し方である。

なにこれ?!

私はここでも焦った。

どうしたの?!

彼の体を仰向けにする。
うっすら笑みを浮かべながら寝る彼。

そっと顔を拭く。

トマトソースだ。

大の大人が、吐血と間違うほどのトマトソースを口につけ、スヤスヤ寝れると誰が想像できただろうか。


私はハナホジおじさんの話をしなくてよかったと思った。

彼を目の前にしたら、大体のことは霞んでしまうのだから。

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