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【読書ノート】『サーカスの夜に』小川糸


書籍情報

出版社:新潮社
刊行日:2017/7/28
ページ数:304ページ

あらすじ

両親の離婚でひとりぼっちになった少年は、13歳の誕生日を迎え、憧れのサーカス団・レインボーサ ーカスに飛び込んだ。ハイヒールで綱の上を歩く元男性の美人綱渡り師、残り物をとびきり美味しい料理に変える名コック、空中ブランコで空を飛ぶ古参ペンギンと、個性豊かな団員達に囲まれて、体の小さな少年は自分の居場所を見つけていく。不自由な世界で自由みちに生きるための、道標となる物語。

Amazonより

感想

2023/9/18(月)読了。

幼い頃に病気の治療で服用していた薬のせいで、見た目は10歳、実年齢は13歳の少年。最後まで少年の名前が明かされないのは、「名前に縛られない」というメッセージだろうか?

少年を見守るサーカス団員が厳しくも優しい。でも、あたたかな世界観の中で、終始どこかもの哀しい雰囲気が感じられていた。サーカスはそういうものなのか、それとも、みんなの過去のせいか。

「自分は、ずっとキグルミを着て生きているような人生なのだ。一生、チビのままで大きくなれない。……脱皮したいこの体から抜け出したい。」

『サーカスの夜に』小川糸 より

人は見た目で判断される。この場面から、少年が自己を受け入れていく過程が良かった。

クリンクラウンのシーン。トロには、クリンクラウンの方が合っているのではないのかな。できない理由があるのかな。

「でも、やっぱりこれ見よがしに自分の小ささを利用するというか、小ささに便乗するのはなんとなく気が進まなかった。」

『サーカスの夜に』小川糸 より

10歳の見た目というキグルミから抜け出して、リトルクラウンではなく綱渡り師を目指すラスト。グランマやおじさん、団長、コックに見守られて、前へ進む結末が素晴らしく、安心した。


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