3年ぶりの海外出張記〜涙の完結編16-20日目〜
3年ぶりの海外出張@バンクーバー、コロナ感染による延長戦がついに決着!最後まで波乱続き。
ホテル引っ越し
16日目。2回目のPCRが陰性だったら、この日に帰れるつもりだった。ということでホテルチェックアウト。残念ながら陽性だったので再延長ということでホテルのお引っ越し。繁華街ど真ん中の16階の部屋に収まった。バルコニーから海が見えて景色は最高。調子に乗ってバルコニーに出ると、この前見た刑事ドラマの犯行現場が脳内に再生され、慌てて部屋の中に入った。
映えないフォーがこんなにも美味しい
久しぶりにお腹が空いてちゃんと食べられそうな気がしたので、ホテルの近くのフォーのお店に入った。スモールサイズがあるのがありがたい。そして、これが、本当に美味しかった。大好きなパクチー、レアめの牛肉、病み上がりに優しい薄味、スルスルと食べられる米麺。人生最高のフォーを更新した。
4連続の会議に備える
17日目。日本時間月曜の11時、13時、16時、18時から会議が予定されていた。ということはこちらの日曜の午後だ。張り切って数の限られている使い捨てコンタクトを入れ、シャツに着替えた。ゴロゴロしてる間に14:50になり、満を持して会議に接続しようと世界時計を確認すると、日本はまだ6:50だった。時差の計算が難しい。あと4時間ある。
ベトナム料理の味を占める
気を取り直して遅めのランチへ。フォーの感動が忘れられず、2日連続でベトナム料理のお店に入った。どうしても春巻きが食べたくて、チキンプレートに春巻きが乗ってるメニューをチョイスした。すごい量だったので、半分は夜食用に持ち帰ることにした。1700円くらいしたけど、二食分だと思えば高くはない。何せ今日は夜中まで会議があるのでね。素晴らしい計画性!と、ドヤ顔でホテルに戻った。
詰めが甘い
18:55。世界時計を確認すると日本は10:55。ようやく一つ目の会議が始まる。Zoomに接続すると、普段と違う画面が現れた。
ぬぁぁぁんだって?!慌ててカレンダーを確認すると、こちらはまだ土曜。日本は日曜。日付を間違えていた。今日だと思っていた会議は4つとも、明日だ。コンタクトレンズを無駄に使ってしまった…とがっくりしながら少しだけ仕事をした。
サンセットチャレンジ
ふと外を見ると、まさに日が沈もうとしていた。ずっと曇りが続いていたが、今日は晴れている。ベランダからサンセットを拝もうとしたが、ちょうど日が沈む方角に高い建物があって、脇から漏れる夕焼けしか見えなかった。ビーチに行こうと思い立ち、30秒でホテルの部屋を飛び出した。
早くしないと沈んでしまう。足が自然と走り出した。少し走ってから、「走れるくらい回復したんだなぁ」と感慨深くなった。1週間前は、10分歩いただけで息切れしていた。無事サンセット前にビーチにたどり着くと、見事な眺めだった。この景色を見るために私は今日コンタクトレンズを入れたんだ。そう思うことにした。
もはやワーケーション
18日目。体調がかなり良く、割と仕事が捗った。こうなってくるともはや、ワーケーションだ。バンクーバーの一泊四万のオーシャンビューホテルでワーケーション。なんたる贅沢。4連続の会議も、昨日のドタバタが嘘のように順調にこなした。さすがに、日本時間18時=バンクーバー時間2時の会議は眠かったけど。
ダブルピンチ
19日目。昼前に起きてスマホを見ると、総領事館から念願のレターが届いていた。これがあれば、日本に帰れる!喜び勇んでJALに電話をかけようとしたが、前回、電話に出てもらうまで1時間33分待ち、途中でお手洗いに行きたくなって大変だったことを思い出した。電話の前にお手洗いを済ませ、万全の体制でダイヤルを回す。今回は40分ほどで出てくれた。
電話がつながりホッとしたのも束の間、お姉さんとやりとりをしていた私のお腹が突如悲鳴を上げ始めた。…突然お腹が下ったのだ。ギュルギュルと痛むお腹。噴き出る冷や汗。確認に少々お時間をいただくお姉さん。「お腹が痛いのでかけ直します」と喉まで出かかったその時、さらに追い討ちをかけるようにお姉さんが言った。
「向こう1週間は席が空いてませんね。」
…嘘でしょ?!限界に近いお腹をさすりながら、立ち上がった。もはや立たないと決壊しそうだった。帰れないというショックと、お腹の悲鳴で、頭が真っ白だ。「チケットは返金手続きになります。直行便でなければいくらか空きがありそうなので、新しく予約を取り直してください。」お姉さんにお礼を言って電話を切ると、できる限りお腹に振動を与えないように、しかし最速の動きでトイレに駆け込んだ。ギリギリで、人間としての尊厳が保たれた。
ピンチ脱出
もうひとつのピンチも、すぐに解決した。改めてJALのホームページを見ると、確かに自分の予約した便と同じものは埋まっていたのだが、埋まっているのは国内線だということがわかった。成田までなら、最速で明日帰れる。そこからは陸路で帰れば良い。
サイクリング
明日帰るとなれば、今日1日くらいは遊んでも良かろう。どうしても行きたかったスタンレーパークでサイクリングをすることにした。自転車を借りて出発。快調に走り、途中のベンチで海を眺めて休憩した。カモメが飛んでいる。向こうの海岸の何かの工場を見ていると、9年前に訪ねた尾道の海を思い出した。よく考えると、海そのものは日本も海外も大して変わらない。そう気づいてしまってちょっとテンションが下がった。テンションが下がると、急に寒くなった。サイクリングロードはずっと木陰で、きっともう少し暖かければさぞ気持ちいい道なんだろうけれど、とにかくとても寒かった。
ポテト
一心不乱に自転車を漕ぎ、ビーチについた。陽が当たり暖かかったので、ここで休憩しようと売店へ向かい、フライドポテトとレモネードを頼んだ。海辺に腰掛け、ポテトを食べる。美味しかったが、1/4も食べないうちにお腹いっぱいになった。残りを捨てるのも忍びなく、海を眺めながら傍らに置いたポテトをチマチマとつまんでいた。その時、背後から聞き慣れた声がした。
「かぁ」
真後ろの木に止まっているカラスが、仲間に何かを伝達しているかのようにかぁかぁと鳴いていた。次の瞬間、ベンチがわりにしていた丸太に、1メートルの間合いをとって、奴が降り立った。ジリ、ジリと間合いを詰めてくるカラスが何を狙っているかは、明白だった。私が怯むと、もう2羽飛んできて、私を囲うように着地した。降参だ。私はレモネードとリュックを抱えて逃げ出した。その瞬間、最初のカラスがポテトをいっぺんに2本咥えた。それから瞬く間にバッサバッサと音がして、あちらこちらから無数のカラスが飛んできた。恐怖体験。
10分後、元の場所に戻るとスッカラカンのポテトの容器とケチャップが転がっていた。ゴミを回収し、すっかり意気消沈して、真っ直ぐホテルに帰った。道中現れるカラスの一羽一羽にビビりながら歩いていたら、大型犬に吠えられた。
NBAファイナル
バンクーバー最後の夜はNBAファイナルの日だったので、スポーツバーに行くことにした。バーでNBAを見る!なかなか日本では叶わないシチュエーションに、ウキウキだった。久しぶりにビールも飲んだ。今日の不運を、気持ちの上では全て上書きした。
前半が終わって満足したので、後半はホテルに戻って観ることにした。テレビをつけてベッドに寝転び、ふと気づいた時にはほぼ決着がついた4ピリ残り1分20秒だった。大事なところは夢の中。まぁ今日は、そういう日なんだなと。
さらばんくーばー!
20日目。ついにこの日が来た。チェックアウトして空港へ。10時間ほどのフライトで帰国。昨日が嘘のように、特筆すべきことが何も起こらなかった。よかった。機内ではM-1とインクレディブルファミリーと孤独のグルメを見た。孤独のグルメで皿うどんと春巻きを平らげた五郎さんが、ちゃんぽんを追加で注文したのが不意打ちでツボに入り、しばらく笑えた。
こんな酷い目に遭ったのに
不思議と楽しかったなという気持ちが強い。寝込んでいる最中に次の海外出張の話が来て、「冬のフロリダのビーチ?!最高じゃん」と二つ返事で引き受けた自分は、どこか少しネジが外れているのかもしれない。
この出張記を書き続けたことも良かった。何かあったらメモに残せるようになったし、少々酷い目に遭ってもネタとしてプラスに捉えることができた。雑多なメモを書き散らした文章を読んでいただいた方々、感想や心配のコメントをいただいた方々には感謝しかない。
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