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喫茶モーニングと自粛生活

週末の朝、自転車に乗って喫茶店のモーニングを食べに行くことがいつしか日課になった。

お酒大好き・居酒屋大好きな私たち夫婦にとって、東京を直撃した緊急事態宣言とそれに伴う飲食店の営業時間短縮は、少なからずこれまでの習慣を変えてしまう出来事だった。

毎日飲み歩くわけでは決してないけれど、長い1週間が終わった金曜の夜や、一緒にお出かけした土曜の夕方に冷たいビールや新鮮なお刺身を口に運ぶ瞬間は、きっと人生の1番か2番目くらいに大切な時間だったと思う。

おつまみを作って家で飲むことも好きだし、それはそれで楽しい時間なのだけれど、やっぱり外でご飯を食べることって他のものでは代替できない特別な時間なのだと切実に思う。家とは違う場所で向き合うから話せることもあるし、家の中では味わえない特別感を共有することもできる。

特に私たち夫婦にとっては、今週あった出来事を共有したり、お互いに対して思うことを打ち明けたり、将来のことを語り合ったりするのはもっぱら「外」の方がうまくいった。お酒とおいしいご飯と素敵なお店があったから、夫婦仲を円滑に深めてこれたと言っても差し支えない気がする。

そんな夜の時間を制限された私たちがいつしかたどり着いたのは、夜ではなく、朝だった。夜飲みに行く機会が減ったのに比例して、休日の朝にモーニングを食べに行く機会がぐんと増えた。

朝という時間を選んだのにはいくつかの理由がある。

飲みに行くとついついお酒が入って大声で喋ってしまったり、必要以上に長居をしてしまったりすることがある。今のご時世、それはあまり良くない。けれど朝のモーニングなら他に友だちを呼び寄せることもなく私たちふたりだけだし、静かな喫茶店の中では馬鹿みたいに大声で会話することもない。ゆっくり朝食を食べてコーヒーを飲み、のんびりとするけれど、何時間もダラダラと居座ることもない。

それでも、非日常の空間に出向くことでお互いに向き合う時間はきちんと取れるから、家の中ではつい後回しになってしまう会話もちゃんとすることができる。

朝起きてすぐ行動することで、休日の午前中がより濃密な時間になった。長い週末は、誰だって嬉しいものだと思う。

それに、飲み代と比べてモーニング代はとてもお財布に優しい。折しも絶賛節約中の私たちにとって、浪費の心配なく外食に行けるのは嬉しすぎるおまけだった。

幸い私たちの住む下町エリアには味のある喫茶店が多く、中にはちょっとお洒落なカフェも点在している。冬の東京のからりと晴れ渡る気候のおかげもあり、自転車に乗って、あるいは何駅か電車に乗って、近所の喫茶店を順々に巡るのはとても心が踊る。

そんなことを書いていたら、夜なのにまた喫茶店に行きたくなってきた。

次の週末はどこへ行こう。

厚切りトーストとサンドイッチ、どちらがいいか。

ゆで卵と目玉焼き、どちらがいいか。

緊急事態宣言が明けていつかこれまでの日常が戻ってきたとしても、私たちはこれからもモーニングを食べに早起きをするのだろうと思う。

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