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【コーチング】続・食えるコーチになるには? 【月刊 コーチング 2023年9月号】

人を、暮らしを、観る。丁寧に。



本noteの建て付け

このnoteは、2023/9/20に、宮本さんと対談させて頂いたラジオコンテンツを書き起こしたものです。

適宜、読みやすさを考慮し表現の加除を行なっている旨、ご容赦ください。


【ラジオのURL】
https://stand.fm/episodes/650a6d94a08a0c412c282601

※ stand.fmアプリをダウンロードいただくと、バックグラウンド再生が可能となります。記事と合わせてお聴きになりたい方は、そちらがオススメです。

宮本さんのご紹介

ICF認定資格PCCを保有するコーチ。2010年から、13年間コーチ業を担う。ラーニングファシリテーター、研修講師、組織開発コンサルタント、大学にてプログラム開発等を行なっている。コーチを軸にしながら、「いい未来をつくる場づくり」をしている人。弱冠36歳。

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ひろのさんのご紹介

「月刊 コーチング」の産みの親。パーソナルコーチ。 ビジュアルプラクティス。すでにそこにあるものを大切に、ビジュアライズを用いて個人の内面と組織・社会のつながりを探究中。在るものを描き、全体性を満喫するひと。本稿のタイトルイラスト・挿絵の全てを担当。

ひろのさんのTwitter


月刊 コーチング


先月行った対談「食えるコーチになるには?」の反響を受け、シリーズものとして毎月ラジオ収録をお届けすることにしました。


ー 僕の身近なところでは、この対談をきっかけにコーチングやサービス提供の探求にあたっての「共通言語」が生まれています。目線を合わせながら情報交換・探求をできるようになったのが嬉しいですね。

コーチを業としてやっていくことを考えた時、切り口・要素・やること・考えることが膨大にあって、「正直何をしていいかわからん!」となることも多くて。

前回、体系的に語って頂いたので、コーチたちとお話しする際の目線あわせができるようになりました。

意外とこの「目線合わせ」、ないからね。

今日のお話も、その続編から入っていきます!


1 クライアントさんが欲しい!


Giveとクライアント契約の間の溝

ー クライアントさんと出会うための活動をしていく中で、Giveを意識しながらアウェイでの機会創出をする。でも、そこから「クライアント契約に繋がる」ところには、なかなか辿りつきません。

人のお役に立つ場を作ったり貢献したりすることと、そこから「お客さんになります!」となる状態への橋渡しについてのお悩み相談がありました。

結局、「何人クライアントさんが欲しいんですか?」、さらに言えば「そのクライアントさんからいくら欲しいんですか?」みたいな話。それによって、本当に作戦が変わるなって思うんですよね。

そこ次第だし、けんすうさんの『物語思考』が必要なわけですよ。

コーチとしてTo BかTo Cかもあるし、コーチング業として「何人のクライアントさんでいくら稼ぎたいのか?」だし。

その時に「どんなコーチでいたいのか?」だし、そこから逆算した時に「どんな出会いが物語として適切なんでしょうか?」みたいな。そういう話だと思っていて。

個別具体で「あなたの場合だったら」っていうことを考えるには、我々『月刊 コーチング』的に言うならば「ビジネスモデルキャンバス」「ビジネスモデル YOU」がマストな気がしている。

(キャンバスのフレームワークを用いて)一人一人に応じたビジネスモデルを描き出せると思うし、カスタマージャーニー的な接点作りはできると思う。

それなので、一人一人が「どんなコーチになりたいか?」。その物語によって、作り方は変わるなぁ、と思っています。



青写真の無さ、解像度の低さ


ー 僕がご支援している中でも、「青写真がない・解像度が低い」状態にあることが多いです。「目下のやりたいこと」に飛びついていて、その先「どういう状態になりたいのか」がない・解像度が低い状態で、すごくもがいている人が多い気がします。

「ログポース(漫画『ONE PIECE』の登場する羅針盤。次に行くべき島の方角を指し示す道具)無き中で大海原に出ちゃった」、みたいなね。

「ICF資格を、俺はとる!」と言ってもね、どの島に次に行くか、くらいの青写真は欲しいですよね。


ー 資格を取れたらプラットフォームに登録できて、「さすればクライアントさんと出会えるぞ」という青写真を描いている方も少なくないと思うのですが、(それだけでは)そんなに甘くないなぁという実感があります。


「Giveからの有償化」の具体論:需要と供給バランス

とはいえ、「Giveからの有償化(の具体的なやり方)が知りたいんだよ・・・」というお声もあると思うので、ちょっと青写真論から離れて具体の話を先にお話しすると。

これはもう、需要と供給バランスの話だと思っていて。

例えば、「無料」とか「5百円」とかで、「コーチングに割ける時間は週5時間です」と決める。その枠が埋まったら、もう(セッション依頼を)受けられないわけじゃないですか。

そのタイミングで「5時間-5百円」の設定で満足して下さっている方がいるかいないかがポイント。

ここで「また紹介したいです」とか、「これ広まったらいいと思います」みたいな声が出てくるんだったら、単価を上げる。

「もう枠はないんですけど、お声かけを頂いているので」ということで、その時のお客様からのお声をもとに集客をかける際、単価を上げるんです。

「供給がMAXなんだから、(それ以上の需要に応えるなら)単価を上げていかないと」っていう話で。単価が上がったら他のお仕事を減らせるから、またそこの枠を作れる。そういうベタな順番だなぁと思っているんですよね。

もちろん、自分が対峙している・お届けしたいマーケットによって、上げられる単価とか、そのマーケットに対しての自分のコーチングの「サービスとしての文脈の置き方」によっても多少は変わってくるとは思うんです。

でも、基本はその繰り返しなんじゃないかな、と思うんですよね。



今までのお客様との世界観・新しい世界観

ー 「単価を上げて次のサイクルに行きます」となった時に、今まで5百円で買って下さってたお客様に「千円」でも欲しい、って言ってもらえるかも重要だと思っていて。

テーマが変わったり、前の価格に対する満足度だったりといったこともあるかもしれないんですけど。

単価を上げたことにより離れていかれるんだったら、サービスの見せ方だったり、提供する価値が変わらないと「自然にはその次の金額で買ってもらえるようにはならないんだな」という気づきにもなる。

届けていきたい相手のお財布・顧客像も合わせて変わっていく。新しく出会う方に新しい価格で、というだけの目線ではなくて、今までご一緒していただいた方にとって新規の価格ってどうなのかっていう目線も大事な気がしました。

そうだよね。それ超大事で。

よく「単価=自分の実力」と紐づけちゃうことがあると思うんですけど、ぶっちゃけそんなことは無いと思っていて。

ほんとに、どこのマーケットに自分を置くかで変わる。「コーチングの実力」を仮に定義して、「クライアントさんに気づきをもたらし、クライアントさん自身の行動を促して、クライアントさんの現実を変えていく」ことが、コーチングのうまさだったとする。

その意味でめっちゃコーチングがうまくても稼いでいない人もいるし、「もうそれってコンサルやん。全然コーチングへたっぴやなぁ」って人でも1セッションでウン十万と稼ぐ人もいるし。まず、そこはイコールじゃないですよ、っていう前提のもとで。

結局、そのお客様とどう出会って、「そのお客様の世界でのコーチング」がどういう位置付けであって、いくら払えるものなのかっていう。その文脈における値付けという話。

新しい単価にした時って、新しい世界になっているはずなんですよ。

「9,000円でやってくれるならマジ超お得」みたいなところからスタートして、「15,000円に値上がりしました。「あ。15,000円、全然払う。」は、クライアントさんにとって「15,000円のコーチングの世界」というところから、特に変わらないので、そのタイミングで値上げが成立すると思うんですけど。

もちろん、9,000円のものが、元々15,000円の価値あるものを感じているコーチングだったらの話です。「やっぱり(自分にとっては)9,000円のコーチングだったわ。安かったから使ってたんだわ。」みたいなところも、ある。

他方で、「コーチングに使えるお金は15,000円です」、という世界にいる人に、20,000円って言った時。新しい20,000円のコーチングの世界を、その人と結べるか、みたいなところがまた別途ある気がしていて。

その価格がついたコーチングサービスというものが、クライアントの生活においてどういう位置付けのものになっていくのだろう?というところに常にアンテナを貼り続ける、「マーケッター思考」みたいなものが大事なのかなとも思いますよね。

コーチングとはまたちょっと別の視点な気もしますけど。


コーチングサービスが機能するまでのグラデーションと価格設定

ー クライアントさんの「慣れ」の影響もあると感じました。「行動と学習」慣れもそうだし、セッション中の「体感覚を用いる」といったことも。

初めてコーチングに触れる人にとってはアドバンスドな関わりも含めて、「最初から全部フルでできたら大きな変化につながる」ので、高い金額でも成り立つのかもしれないけれど・・・。

クライアントとしてビギナーの人にとっては、「最初からそこまでできないのに、その価格なの?」というところもある。クライアントさんの変化力・コーチングを使いこなせる力のようなものによってくる。

価格設計は、クライアントさんとの関係性の築き方も含めて、すごくグラデーションがあり、難しくて、面白いなって思いました。

まさに、グラデーションがあり、難しくて、面白いんですよ。

多分、コーチとしてやっていくんだったら、ここを「面白い」と感じられるかは結構大事だと思っていて。

もちろんコーチとクライアントさんとの間には境界線があるんだけども、例えば「このクライアントさんにとってどうなのか」というところを、常にコーチングセッションの中で見ていく。

哲学的にいうと、環世界みたいなところ。(クライアントさんが)どういう情報に触れていて、どういう風に世界を見ていて、というところを見ていくサービス。

そこの想像力みたいなものは常に持っているといいなと思うし、マーケティングのお仕事をされている方々がコーチに向いている一つの要素として、ポイントな気はしますよね。



そのGiveは「お金を払ってでも欲しい」ものか?

ー クライアントさんご自身とその生活環境にどんな変化が起きていくのかに対して興味を持てるか、ということがとても大切。

セッションだけやって「バイバイ、終わり!」では無いからこそ、適性が必要だなと感じます。

そうですよね。

やっぱり、アウェイでのGiveからその先をどう繋げていくかは、そのGiveが相手にとって、「お金を払ってでもやって欲しいものになっているか」はシンプルに違いとしてあるなぁと思っていて。

「無料だからお願いしている」とか、「だって友達だからお願いしてる」っていう文脈設計の中だと、たぶん有償化には繋がらない。

「よくわかんないですけど、プロとしてやってるんですよね?」みたいな努力も垣間見えていて、「やっぱこれ普通の友達に話しているのとはちゃうわ」みたいな。「でも正直、無料でやってもらえるんだったら超助かる。」「あ、なに?やっぱり結構忙しくなってきた?」「そうだよね、結構お金かかるんでしょ?」「調べてみたけどコーチングを有償で受けるのって結構高いらしいじゃん相場は」「じゃあちょっと次からお金払わせて」みたいな流れがある。

クライアントさん候補にとってそれまでのGiveがいい場になっていて、コーチングの市場がその人にも見えていて、「こんなんやってもらってたんだー!」みたいな気づきが生まれた時、ですよね。

提供側も、「これはGiveでやってるからそれでOKなの。」という線引きなんだったら、ずっとGiveでやり続ける。

他方で、「せやねん。この枠いっぱいやねん。これ以上求められたらGive保たへんねん。」っていうところから、「この金額でこういう感じだったらこれくらいできるんだけどどう?」「もちろん、今までの関係性もあるから、そこは相談のるよ」みたいな感じで繋がっていく。

お互いにとっての「その時間の捉え方」が変わっていく瞬間というものがあるはず。そこでちゃんとそういう話し合いができるか?というのがポイントな気がしますね。


ー 先ほどの「需要と供給」の話もそうなんですけど、コーチはコーチで自分の暮らしがあるわけで。

コーチの暮らしを経済的に成り立たせているリソース(可処分時間・枠)を、「あなたのためにあけて、役立てたい」という提案であり。

クライアントさんとしても「あなたの可処分時間を私のために頂きたい。お金を払ってでも、自分の挑戦に使いたい」と思ってもらえる関係性をつくる。

ここにも、中動態的なものを感じましたね。



「これだけはやっちゃいけないよね!」な関係性

だからやっぱり、関係性を作り続けるということ。

THE COACH的に言えば「パートナーシップ」みたいな話なのだろうし、Co-Active的には「デザインドアライアンス」なんだろうし。

常にそれをやり続けられるか?

そこをやり続けられる特性という意味では、法人営業をやっている人は強いんだろうな、と思うんです。

そのテクニックだし、裏を返すと「これをやっちゃいけないよね!」は…


例えばコーチの人が、その人のマイコーチとのセッションで、「あなたプロとしてやっていくんでしょ!」とラディカルアクト(過激なアクション)の提案を受けたとする。「今いくらでやってるんだっけ?」「千円です」「安すぎる。1万円で提案してきて?」みたいな。

躁状態になったコーチが、「わかりました!1万円でやります私!」みたいになって急に、今まで千円でやってきたクライアントさんに、「あなたのコミットメントを引き出したいの。あなたもこの時間に1万円の価値感じてくれるよね?」みたいなことをやるから、「大丈夫?あいつどうした?」みたいになるっていう。

そういう「躁状態での意思決定」は、ダメだよね。

恋愛だったら。お付き合いを始めた初日に、全然結婚の話とかしてないのに、友人と話していて「お前マジ男気ねぇなぁ、男気見せてプロポーズ明日してこい」みたいな。「ふざけんな俺には男気あるんだ!」みたいな謎の感じから、急にプロポーズをして相手を戸惑わせるみたいな。

それに近いことは、自分も過去痛い経験をしているから今興奮気味に語ってるんですけど、そういう関わりはもはやなくなってほしい、と思っています。

最近は聞かなくなったからいいなと思ってるんですけど、昔は確かにあったので。そういう関わりは絶対にしちゃいけないなと思いますよね。有償化とか値上げみたいなタイミングで。


金額の内実を、相手と一緒につめていける関係性


ー 若干耳が痛いな、と思いつつ(苦笑)。「その金額に変わることの内実」ですよね。

クライアントさんとの関係性の中で、目線合わせをしながら変えていく、という捉え方が必要ですね。

千円ではやり続けられない理由が確かにあってさ。1万円で買って下さる方が現れはじめてからの、コーチ側の変化っていうのもあるじゃないですか。

それを丁寧に相手に対し「こういう事情があって」と説明できるかだし、クライアントさんにおいても「なるほどそういう背景があるんですね。でも私、1万円の予算は出せないんです。千円でできないんだったら、他の人を紹介してもらえませんか?」「他にいいやり方ありませんか?」と出せるスペースを、ちゃんとお渡しできているか、っていう。

その両方なんだろうなって改めて思いますよね。

ー そうですよね。価格が変わるのは新しい提案であって、それに対してお客さんからも逆提案があって。

お互いに歩み寄るスペースがあって然るべきだなと思いました。



「社会においてのサービス」としてのコーチング

ここで一つポイントとして、「社会においてのサービスとしてのコーチング」という自覚を持ってそれができるか、というのがすごい大事だと思っていて。

趣味の延長・自己成長の延長としての単価上げゲームではないんです。

クラアイントさんにとっても、日々の中で1時間いくらのセッションが「その金額でその時間」あることによって、得られていた価値があって、それによって作られていた生活がある、というところに対してどれだけ思いを馳せられるかが大事だと思っていて。

世の中「値上げ」「物価上昇」みたいな話がありますけど、コーチだって同じ文脈なのに「自分のチャレンジのために倍にします!」みたいな、そんな軽い話で許されるのか?みたいな。軽い話にしちゃう人は、売れないコーチなんだろうなって思いますよね。

逆に売れる人は、ご自身にとってもクライアントさんにとっても、「お互いにとって」に想いを馳せられる人。自然と単価を上げていかれるというかね。

イイ関係性を、コーチングの価格というところでも築いていかれるんじゃないかな。


ー 自分の生活環境を整える瞑想アプリみたいな月額サブスクのサービスが、突然「来月から2倍になります!」っていきなりなったら「じゃあやめるわ」ってなりますよね。

今まで続けてきて下さったお客様にとってはそういうインパクト、ありますよね。

今ここで「社会」って言葉も出てきましたけど、

ご自身にとって、クライアントさんにとって、社会にとって「自分自身のコーチングサービスってどんな位置づけなんだろう?」という問を持っていけると、その時々、青写真に応じたご自身にとってのコーチング事業のサイズ感が出てくる。

そこに向けたアクションが出てきて、スーって動けるようになっていくんじゃないかなって思いますよね。


ー Giveの質、というところで「クライアントさんがお金を出してでも欲しい」ようなGiveを届けられているんだろうか?と自問することも大切だなと感じています。

ともすれば、「こんなにGiveしているのに、なぜ返ってこない・・・」という独りよがりな状況に陥ることもあるなぁと思っていて。

自分はその金額で買うだろうか?あるいは金額から逆算したときに、その金額を支払って買うものは何か、得ようと思っている便益は何か、「お金を出す側の視点に立ち返る」ことも重要だなと感じました。


お客様一人一人の文脈に応じた価格

僕も価格を提示して、コーチングをやらせて頂いていて、ありがたいなぁと思っています。

同時に、コーチングスキルを活かした時間でお金をいただかずに、コーチングライクな時間を過ごしていることもあるわけですよ。で、その時間って僕にとってはまさにプライスレスで。

その枠を無尽蔵にはできないという前提で、お金を頂いている方のおかげで経済的な生活が送れている・・・という前置きを付け加えた上で語ると。

僕自身も、すごく人生がタフな時期に、コーチの先輩から「ただ話を聴くよ」というGiveをして頂いた時期があって。そのときに頂いたものがまだたくさん残っている感覚がある。

それを、たまたまそういう文脈で、経済事情も含めて「有償コーチングを続けられません」となったときに、「そのとき頂いたものをここで送るときだな」という感覚があって。とあるご事情のある方に、お金をいただかずにコーチングライクな時間を提供させて頂いていたりするんです。

企業文脈で言えばCSRというのかもしれないけれど、そういう形が先にあって内実を作る・・・ではなく、内実が先にある。

その方も僕がプロとして活動していることを知っているからこそ「申し訳ない。でもそこはありがたく受け取ります」と仰って下さって。

お歳暮にビールを頂いたんですよ。そのビールめっちゃうまいっすよね。そのビールのうまさは格別なんですよ。

それも一つの関係性の作り方だなって思いますね。

コーチングを学んで、それを活かして新しい関係性を作っていこうとされている皆々様に向けていうと、そんな事例もありますよだし、お一人お一人との関係の中のグラデーションでテーラーメイド・カスタムメイドで用意することは難しいかもしれないけれど、それもありますよと伝えたい。


ー 僕も去年、適応障害になり休職を余儀なくされた中で、ただ話をできる・聴いてもらえる場からもらってきたものが大きかったです。今はその恩送りをする場を持ち続けている感覚、あるなぁって思いました。

一つだけ付け加えておかなきゃならないなって思うのは、コーチ側もお金頂くか頂かないかは選べる。でも、クライアントさんから見ると、「あの人からはお金もらってないのに私からはもらうんだ?同じテーマのはずなのに?」みたいなことも出てくる可能性もあると思うんですよ。

でもそれは、そのときどきの文脈に応じた関係性なのであって、これは見せ方をWEBサイトなどオフィシャルの入り口でコーチ側が仕分けるべきだと思います。

一人一人との関係性の作り方に応じてのものなので、コーチ側もクライアント側も、自分にとって不本意な跳ね返りがあったとしても、個人的に受け取らないというのは、すごく大事かなって思いますね。

と、いうのを付け加えておかないと、この放送を聴いて「そんなこと宮本さんしてたんだ!」と知って傷つかれる方がもしいると申し訳ないな、と思ったので。

ー 大胆に見せていても実は繊細な宮本さんの繊細さが現れてますね!

そういう細やかな配慮が、人を惹きつける一つの要素だな、と感じました。



2 メンタルヘルスとコーチング


ー コーチングとセラピーの領分をどう分けて学習していけばイイんだろうか?不用意に足を突っ込んじゃうの怖いなぁ、という話をいただきました。感情を扱うシーンで、本来は医療的な専門家の治療が必要な領域に踏み込んでしまう可能性もある。

そういう、メンタルヘルスとコーチングのオーバーラップするところの危険性について、お話を伺っていきたいと思います。


これはまず、「今まーさんが話した視点」をもてていたらオッケーなんじゃない?という、超楽観的な宮本もいます。

コーチングは万能じゃないし、コーチングとカウンセリングは分けなきゃいけないし、じゃあそれってどのタイミングなんだろう?っていう。その問さえ持てていれば、基本はイイんじゃないかって。

具体的にいうと、躁鬱の躁状態で、既存の人間関係を0-100で著しく変えてしまうような行動をいきなりとっちゃうとか。

同じネガティブな話をずーっと繰り返しちゃって、アクションの話をしようとするとストップしちゃう。思考停止しちゃうみたいな鬱状態とか。

この2つは、コーチャブルな状態じゃないんです。

もう少し突っ込んで言うと…

躁状態でいうと、感情の起伏がめっちゃ激しい。急に笑っちゃう・起こり出しちゃう・泣き出しちゃう。プロセスコーチングが機能しているのではない。涙が止まらない。これはもうメンタル疾患の兆候です。

そんな風に感情がアクションに出やすい躁状態と、同じ話をループしちゃう・ネクストアクションが出てこない・沈黙が長くなりすぎる、という鬱状態は、コーチャブルではない。

その状態に気づいたらそれを反映して、「ご飯食べてる?寝られている?」を確認する。もしそうじゃないのだとしたら、「一旦診てもらいましょうか、心療内科へ行ってみましょうか。」と提案する。

「もはやコーチングの領域ではなさそうだし、お薬を併用して治す必要があるかもしれないし、それは私からはなんとも言えません。一旦、専門家に診てもらった方がいいと思います。」と伝えていく。

以上。これなんじゃないかなって思っているんだけど、どう?

ー 僕がやっている時もそれだなって思うところがあります。というのも、表情を見ていればいつもと違うしんどそうな状態がわかることもあるし、「そもそも寝られていますか?」とか、「体調不良じゃないですか?」みたいな問を、確認として入れることが結構あって。

「今すぐ寝た方がいいんじゃない?」と、セッションをそこで終わらせたこともあります。そういうところの、身体にきている不調・疾病的なところを「あるんだ」とわかっていないといけないというか。

「トンカチ持ったら全部が釘に見える」みたいな、「これもコーチング的に解決できる問題なんだ!」という捉え方を全部しちゃうみたいな。そういう危険性に対するアンテナを持っていなきゃいけないよな、と感じますね。


メンタルヘルスとグレーゾーン

そうですね。一旦は、そこな気がしますね。

とはいえ、このラジオのリスナーの皆さんは、勝手ながらに「その一歩先」のことを考えられたりするのかなぁって思うんですけど。

その一歩先が何かというと。

実際にあった、「メンタルヘルスとグレーゾーン」の話をします。

コーチングを続けていたら、完了まで至らずにクライアントさんのドタキャンで終わっちゃったことがある。蓋を開けてみたら「ちょっと苦しかったです」ということが、回り巡って聞こえてきた。初回のコーチングから3回目までは、それっぽく機能しているように僕からは見えていました、みたいな話。

これについては、メンタルヘルスという見方で切るのと、「コーチがへたっぴ」という見方で切るのと、二つの切り方がある。

もうちょっと具体をお話ししてみると、「いいですね!いいですね!やってみます!」という、そういうテンポ感で3回目まできて、4回目となったときに来なくて、そのまま消滅、みたいな流れでした。それで、たまたまその人の本音が周囲を巡って聞こえてくるタイミングがあって「ちょっと合わなかった」と。

コーチングをしていると、こういうのってちょくちょくあるなって思っていて。

あえてこれをメンタルヘルス的にいうなら、クライアントさんが「過剰適応」してしまっていたと。コーチ側が過剰適応することもあるんだけど、ことクライアントさんが「コーチ側のリクエストに答えなければならない」、となってしまう。「実はその質問違和感あるんだけど…」とか、クライアントさんの世界の中での「コーチング」では、「この文脈ではポジティブなことを言わなきゃいけない、みたいなことが起こっている。

それっぽい、そのコーチに「いいね!」って言われる、ポジティブな回答をする。でも、それをお持ち帰りしてもアクションは取れない。嘘じゃないんだけど、コーチにいい顔を見せて合わせてしまっている、みたいなことがある。

いよいよそれもめんどくさいし、これにお金払うのもなんだなぁ、みたいなところで関係が突然終わるんですね。

クライアントさんはコーチ側に過剰適応しているんだけど、クライアントさんはそれに気づかず、コーチもまたそれに乗っかって。どんどんいい感じの答えをくれるからどんどん気分良く乗っかってっちゃって。

でも、内実本音のところでは、「何にも変わらないんだけど」と思われていた、みたいな。

この状況をはたからみると「いやいや、質問響いてないならそう言ってよ」とか、「自分はこう思ってるけどって言ってあげてよ、じゃないとコーチ可哀想だよ」みたいなことってある。メンタルヘルス的にみると、こういうことが起きています。



他方で、コーチング側文脈でいくと。

テンポが良すぎる話の流れとか、「言葉としては綺麗に聞こえるんだけど」リアリティ・実感を感じないとか。そういうちょっとした些細なシグナルや、違和感のある表情があったとかで感じ取る。

そこを突っ込めるかだし、そもそものところで、「ほんと違和感あったら言ってね」という関係性づくりも必要。

「無理に僕に合わせて、コーチの顔色を窺わなくていいっすよ」みたいな。「一般回答をしているように聞こえるんだけど、どうですか?」というのを、相手を傷つけないように、相手に気づいて頂くように伝える。これはすごい高等テクニックなんですけど、やれると、「気づきました?」みたいなところからクライアントさんの本音が始まっていくことがある。

今みたいな例は、コーチングでは起こりやすいです。

メンタルヘルス文脈では、「クライアントさん側の過剰適応」って言葉で切れるし、コーチング文脈でいうとコーチ側が一線を越えて違和感に気づき、そこに対しての確認を入れていったりする余地がある。

クライアントさん側からコーチ側にリクエストを出せる関係性を築く。コーチ側の高くなりがちなランクを、うまく調整して相手から引き出せる、みたいな超高等テクをやれると、そういうクライアントさんともやれるようになっていくし、陰で「コーチングまじ機能しなかったっすわ」と言われることも減っていくんじゃないかな。


「コーチングの使い方」を学ぶ機会がある社会


ー ありますね。過剰適応は特に、そういうタイプのクライアントさんもいらっしゃるから。最初の握りで伝えていたとしても、大いに起こりうる。「Co-Activeな関係だから、言ってね」と伝えてあったとて、「言えるかどうか」は別。

高等テク的な関わりをセッションの都度、コーチ側からも気づき、出し、グランドルールとして「ちゃんと安心なんだ」というところのアウェアネスを高めて頂くような関わりが、とても丁寧に発揮される必要があるなと感じました。

やっぱり第三者が「コーチングの使い方」を教育する機会や、ユーザー体験をクライアント側がシェアするみたいな場を作っていかないと、難しいと思います。

今の言い方だと、「じゃあそのクライアントさんはメンタルヘルス病んでるんですか?」みたいな聞こえ方をしちゃう気がするんですけど、それってその限りじゃないというか。

「自分でお金払ってるサービスなんだから、過剰適応する必要ないんですよ」という言い方でメンタルヘルスですね、みたいな言い方もできなくはないんだけど、でもそういう話ではなくて。

コーチングの使い方教育という文脈でコーチとしては捉え直した方が良い。でも、そのためにコーチができる限界もある。

クライアントさんのユーザー体験が語られたり、相談できたりする場をある一定作っていかないとならないんだろうな、キャズムを超えないんだろうな。

昨日か一昨日くらいに、こばかなさんのところに質問が寄せられていましたね(※)。(クライアントさんは)あぁいう話「本当はしたい」んだけど、密室空間で、コーチに悪いからそんなこと言えないわけですよ。初めてのコーチングの時に、そんなん言えんやん。

「こんな感じで終わったけど、効果感じませんでした」って言えんやん?

過剰適応とも言えるけど、過剰適応じゃないじゃん、という話もあって。

※ 参考


ー 普通にある話ですよね。普通にある気遣いというか、わざわざ言わないよね、というのが大多数だと思います。

大多数だと思う。

それが、お金払っても2回、3回、4回と続いちゃっていると、「そんなに合わせんでもえぇですよ」みたいな過剰適応、が指す状態に繋がると思うんですけど、一回目だったら「普通の気遣い」としてあるやん、みたいな。


ー そういう機会の創出にすごく興味が湧いてきました。


mentoさんなんかは、毎月声をとってるみたいですね。

各マッチングサービスさんが、ユーザーコミュニティを作っていってもらえたら、コーチ業界にとって良いんじゃないかな、と改めて思いますね。


ー すごく広がりのあるお話ですね。かつ、コーチとしても「クライアントさんの教育をする」ところも、選ばれるサービスとして必要なことかもしれないけれど、もっと(社会として)出来ることがありそうな可能性を感じました。


いいね。この、コーチング業界の未来を座して終えていく、月刊コーチング9月号。


今月のおすすめ本

今回の収録の内容に役立つ本を、宮本さんにおすすめして頂きました。

(1)物語思考

「なりたい状態」から逆算して今日の行動を選んでいくメソッド。「何をしていいかわからない」状態から脱する足掛かりに。


(2)自尊感情の心理学

今回取り扱ってきた「過剰適応」の話や、ポジティブ心理学からくるウェルビーイングについても触れられています。


(3)ビジネスモデル YOU

自身の「コーチングサービス」を整理するのにとても役立つフレームワーク。考えること・やることを俯瞰できるので施策迷子になりづらくなる。



収録を終えて



参考note

コーチング・コーチングサービスにおける、スジのいい努力とは?という問が湧いてきました。


終わりに


月刊コーチング 9月号。いかがでしたでしょうか?

コーチとしてどう生きていきたいかの青写真、クライアントさんのリアルな暮らしに対する想像力、対峙している目の前の違和感に気づくこと。


抽象度の高い俯瞰的な話から全体像を捉えつつ、個別具体的なお困りごと・シーンにおける着目点も掘り下げながらお届けさせて頂きました。


ぜひ、お読みになった感想・ご意見・ご質問等、メッセージを頂けると嬉しいです。

また、収録テーマも随時募集しておりますので、お気軽にリクエスト下さい。



それではまた、10月号でお会いしましょう!



付録(仮)

note版をご覧頂いた方向けに、有料コンテンツを追加する構想を検討中です。「読んだ!参考になった!」で終えてしまうのはあまりにも勿体無い。


具体的なアクションや、プランを思い描いてみたい・それを僕達や他のコーチにシェアしてみたい。


そんな「具体実践」を分かち合うコミュニティや企画はどうだろうか、と思案しています。ぜひここにご興味があるようでしたら、その旨メッセージを頂けますと幸いです。


反響



ここまでお読み頂き、ありがとうございました!


どこか「仕方ない」と自分の生を諦めていた僕が、人生を取り戻したのは、自分の願いを知り、これを指針に生きることを選び、行動を重ねてくることができたからだなと実感します。

コーチングを学んだことで、僕の変容は加速しました。
労働観が変わり、人生観が変わり、生きる質感が変わった。その感動を届けたくて、コーチの仕事をしています。


そんな僕の挑戦の原点にある想いを綴ったnoteはこちら。


コーチングに触れて、ガラリと人生が動いた話はこちら。

「居場所で人を自由にしたい」想いをインタビュー頂いた動画はこちら


🔸サービス紹介

ご自身の価値観を整理したり、居場所を探していくための構想を、「喋りながら考えてみたい」という方向けに、頭の整理にお付き合いするサービスを提供しています。


🔸コーチングセッション
現在はご紹介のみで承っておりますが、ご興味のある方はお問い合わせいただけますと幸いです(公式LINE)。

🔸公式LINE
また、直接まーと喋ってみたいぜ、という方は、気軽にLINEで話しかけてもらえたら嬉しいです(公式LINE)。今は平日10時~14時くらいの時間に話せることが多いです。

「あなたの物語に共に出会う嬉しいその瞬間」を、今から僕も心待ちにしております。


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