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カワイイのはクチでした #7 ヒツジのクチ

 青い空、流れ行く雲、そして、ああ、素晴らしきかなヒツジのωよ。
 動物のωすなわちクチとその周辺の可愛らしさや素晴らしさを紹介する本連載。今回はヒツジのクチについてお話をいたしましょう。
 そもそもヒツジとは野生の動物(原種)を人間が家畜化したものでして、その原種のひとつと考えられているのがムフロンです。立派な角を持ったムフロンは、各地の動物園で見ることができますので、彼女や彼氏またはお子さんに「このムフロンというのはね、ヒツジさんのご先祖様なんだよ」と蘊蓄を語ってあげてください。「ふーん」と軽く返されるだけかもしれませんけれど。
 家畜化されたヒツジは、肉/乳/毛など目的にあわせて細かく改良され、現在では1000もの品種があるとのこと。すごい数ですね。それだけ人間の生活と密接に結びついた動物だと言えましょう。さて、そのヒツジのクチはといいますと、上唇が左右に完全に分かれており、それぞれを独立して器用に動かすことができます。じっと観察していると、反芻動物らしく下顎をアガアガと左右に動かす様子なども見られ、その動きにはなかなか味わい深いものがあります。
 この写真は、千葉県のマザー牧場で撮影したヒツジのクチです。可愛げと可笑しげが見事に融合した素晴らしい形ですね。そしてこの何ともいえない丸みはどうでしょう。牧場で売っているペレット(固形エサ)を手のひらに置いて見せたところ、イソイソとすり寄ってきたヒツジがハムハムとクチを押し付けてまいりまして、その唇の柔らかさに、私はもう大興奮であります。はい。

このnoteは、2013年に新聞で配信したコラム(全12回)です。