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続「羽化シーン」のない『モスラ』の話

 先日、こんな話を書いたらそこそこ反響があり、怪獣道の諸先輩方にいろいろ教えていただきました。そのあたりを追記しておきます。

1976年のニュープリントはどこへ?

 1976年末の「日劇・東宝映画傑作選」でも『モスラ』は『ゴジラ』『ラドン』とともにニュープリントされているはずなのに、なぜプリントがその後の各種上映において使われなかったのか、というお話。
 Twitterにおいて「1976年末の『モスラ』ニュープリントには字幕スーパーがなかった」という記憶をご教示いただきました。なるほど、ネルソンたちの出国やロリシカでネルソンが囲まれる場面などは、字幕スーパーがないとよくわかりませんね。

このあたりの字幕がなかった?

 1977年に「日劇・東宝映画傑作選」と同じラインナップが関西で上映されたとき(関西以外の都市にも巡業したのだろうか?)に、『ゴジラ』『ラドン』のニュープリント版は同じだけど『モスラ』だけは1975年のチャンピオンまつり用短縮版が上映された、ということもTwitterでご教示いただきました。
 つまり1976年ニュープリントの『モスラ』は、字幕が入っていなかったために早々に上映用から外され、短くてもいいからきれいなプリントが必要な場合は短縮版、そうでない場合やどうしても長い版が必要だった場合はそれ以前の「羽化シーン」がないボロボロのフィルムが使用されていた、と考えるとつじつまがあいますね。なるほど!

オールナイトでの短縮版上映

 また、オールナイト上映では「羽化シーンなしの全長版」か「羽化シーンのある短縮版」のどちらかが上映された、というお話についても、『モスラ』短縮版がオールナイトなどにかかることはめったになかった、と怪獣道の先輩からご教示いただきました。
 その先輩によると、文芸座や日劇ゴジラ大会や各種オールナイトなどで観たい映画がだいたい見られるようになったのち、「『モスラ』は短縮版が上映されることがあるらしい」という噂を聞いたと。それでそれが観たくてそのあと『モスラ』の上映に何回も行ったけど、その先輩はついに短縮版を観ることはできなかったそうです。
 もちろんすべての上映機会に参加した人などそうそういないでしょうから、運よく『モスラ』短縮版を観ることができた人もいらっしゃるとは思うんですが、やはり短縮班の上映機会は比較的珍しかったんでしょうね。

1982年のニュープリントも?

 しかしそう言われてみると、自分も「字幕のない『モスラ』」って見たことがあるような気がしてきました。もしかしたら『ゴジラ1983』のときも(つまり1982年の「東宝創立50年」のときも)、ニュープリント版の『モスラ』は字幕が焼き込まれていなかったんじゃなかったかなぁ?

 すでに1983年夏の時点で、『モスラ』は東宝ビデオからノーカット・シネスコ版のビデオが発売されていて、それにはちゃんとあの独特の字幕は重ねられていました。ただ自分の場合字幕なしがそこまで印象的でなかったのは、自分が『ゴジラ1983』までにそのビデオを何回も観ていたからじゃないかな、という気もします。「ああ、字幕が入らないのもあるのかな」くらいの軽い気持ちだったのかも。

 東宝ビデオのシネスコ版『モスラ対ゴジラ』『ゴジラの息子』発売が1983年2月、『モスラ』が同年6月発売。東京では新宿ミラノ座ほか全国で上映された復活フェスティバル『ゴジラ1983』は8月6日(土)~21日(月)。
 ただし地元では9月10日(土)~26日(月)までの上映でした。なので6月発売の『モスラ』はもう死ぬほど見たおしてるんじゃないかなあ。
 だからそんな自分が『ゴジラ1983』最終プログラムで『モスラ』を観ても、べつに「意味はわかるからいいや」ぐらいにしか思っていなかった可能性高し。当時からいいかげんだなあ自分。
 ただそれも「そんなような気がする」程度の感じなので。「いや『1983』の『モスラ』は字幕も焼き込まれていた!」という方がいらしたら「ごめんなさい」でしかないですハイ。

 しかしそうすると、字幕が入っていなかったからといって1976年末「日劇・東宝映画傑作選」のときのニュープリントをその後オクラにした意味がなかったんじゃないのか。
 ……いや、そのたった数年の間にオールナイトや名画座での「羽化シーンのない『モスラ』」騒ぎや、映画産業における革命的なできごとである「ビデオソフトの発売」など、時代は変化していったんですよきっと。

 そしてもし「東宝50年」や『ゴジラ1983』のときにも『モスラ』に字幕スーパーが入っていなかったのだとしたら、じつは『午前十時の映画祭11』の『モスラ』は、4K画質、洋上のモスラ殲滅作戦の画面入れ替わり修正、4ch立体音響、序曲復元だけでなく、「劇場上映における、本篇の字幕スーパーもついに再現!」というポイントが加えられるべきものだったのかもしれません。

※この話、さらに続きがあったら3本目は『西へ行く』かなんかになるんだろうか。(宝塚映画製作)

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