きわどいはなし~大統領の「フットボール」
立派な執務室で、かなり年配の男性が書類にサインなどをしている。
トントン
「ランボー国務長官です。よろしいでしょうか?」
「おう、入れ。」
執務室に入る、ランボー国務長官。
「バイバイ大統領……。へめ国に、ぱう国とぺぺ国が宣戦布告したようです。あの、ぷら国も攻撃をするとか。我が国は、へめ国支援の立場ですが……。」
「まった、戦争か。めんどくせーなー。」
ランボー国務長官が目をぱちくりさせる。
「バイバイ大統領、今、なんと……?」
執務の手を止めた、バイバイ大統領が言う。
「だってさー、ぼく今、残務整理してんだよ? 次のヤツに任せればいいじゃん。つぎの大統領に。えーっと、コップをしまう段ボールはどこかな?」
ランボー大統領がわなわなして言う。
「何を言っているんです! あなたは今、この世界の警察官、めけめけ国の大統領なんですぞ! めっけめけ! めっけめけ!」
「まあ、ボケてるって噂は嘘だから(笑)。名前を間違えたのは、ちょっとしたボケだったんだけどなー。ん-、めんどくさいから、フットボールでもしようか?」
バイバイ大統領の部屋の隅にいる、黒いかばんを持った兵士がびくっとする。
こ、この黒いかばんにはあのボタンがある。通称「フットボール」。
まさか、あのへんいったいにドカンと一発、やらかすつもり……。いやいやまさか、そこまでバカで無能ではないだろう。
「はっはっは。バイバイ大統領は冗談もお上手ですな。」
と、かばんを持った、セガール兵士がふるえながら言う。
「だってさー。ゾンビ映画って、あんまりゾンビが増えちゃった都市は、人だけ助けて、ドカン! が、あるあるじゃん? やっぱりあのボタンを押すと、さっぱりすると思うよ、きっと。」
バイバイ大統領が、ふふうと笑う。
「こ、こいつは最後の置き土産にボタンを押すつもりか……?」
とランボー国務長官。
「わが、めけめけ国の立場はどうなる! 第三次世界大戦勃発か? せ、説得しなくては!」
セガール兵士は思う。
そこに、
ドカン!
とドアを開けて、クルーズ工作長官がやってきた。もちろん、秘密の組織の、秘密の長官だ。
「おもしろい! バイバイ大統領! やりましょうか、フットボール!」
「おお、わかってくれたか、クルーズ長官! ではいざ!」
バイバイ大統領は、黒いかばんを取り上げた。
「大統領―――!」
クルーズ長官とバイバイ大統領は、庭でフットボールを始めた。ボールは、あの、あのボタンのかばんだ。
「なんだ、あのかばんでフットボールがしたかっただけか。」
とランボー長官、セガール兵士は思った。
「頑丈にできている。暗証番号がなければボタンが押されることはない。大丈夫だ、大丈夫、あ、楽しそう、はっはっは~。」
気づくと、ランボー長官やセガール兵士も一緒に、黒いかばんのフットボールに混ざった。
2時間経過。
みんな、汗だくだ。
黒いかばんは、びくともしていない。
「やっぱり、丈夫なかばんだ、よかった……。」
セガール国務長官は、こころから思った。
やはり、我が国のテクノロジーはすごい。
「はっはっはー! こんなときは、フットボールを使ったフットボールに限るな!」
とバイバイ大統領が言う。
「ええ、めけめけ国、万歳!」
と、ランボー国務長官。
そのときである。
「今日の暗証番号は、なんだっけ?」
セガール兵士は、びくっとなった。
「は、はい、●✕室に、ふたりで一度に作業して、こうして、ああするとわかりますが……。」
「ちょっと、罰ゲームしようよ!」
バイバイ大統領が言う。
え? 罰ゲーム?
「本物の暗証番号と、偽の暗証番号、全部で4つ持ってきて。」
セザール兵士は、ぞっとする。
罰ゲーム? 本物の暗証番号を入れて、ボタンを押したら、どうなるんだ?
しかし、大統領命令だ。くうー。
セザール兵士は、暗証番号を4つ、持ってきた。もちろん、彼は本物を知っている。
「じゃあ~、4人で一つずつひいて~、じゃんけんで負けたやつの暗証番号、入れてみようぜ! 大丈夫、ボタンは押さないから~。度胸試しだよ、度胸試し(笑)。」
その場が、凍った。
こいつ、
本物の暗証番号を入れて、はずみとかいってボタンを押すつもりだ。
「場所は~、へめ国に、ぱう国とぺぺ国、ぷら国に向けちゃえ!」
ニコニコしながら、目標を定めるバイバイ大統領。
「やばい。これはマジだ。」(ランボー国務長官)
「うわー、すっきりしますねー。あのへん!」(クルーズ工作長官)
「ぼくが、ぼくがなんとか偽物の暗証番号を入れさせなくては……」(セガール兵士)
「さあ、暗証番号をみんなに配ろう!」
と、大統領が言った、そのときである。
「ちょっと! 何やってんのバイバイ大統領!」
おお。バイバイ大統領の代わりに候補者となった、へけら女史である。
「あなた、私物の整理はすんだの? 片付けが全然、終わってないじゃない!」
「あ、ああ。そうだな、コップを入れる段ボールが見つからなくて……。」
「じゃあみんな、手伝ってあげて! しろしろハウスは広いんですから! 11月まであっという間よ! 間に合わないわ!」
「は、はい!!!」
と、全員が直立不動になった。
「まったく、あのかばんで遊ぶなんて、ホントにボケてるんじゃないの……。」
ぶつぶつ言いながら、へけら女史は帰っていった。
「怖いんだよなあ、あの女史。」
「段ボールが足りなかったからいけなかったんですよ。コンテナ持ってきましょうか。」
と、ランボー国務長官、クルーズ工作長官が話しているとき、セガール兵士はこっそりと4枚の紙を丸めて、パクンと飲み込んだのだった。
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