隠された十字架 法隆寺論 を読んだ

隠された十字架 法隆寺論(ISBN 4-10-124401-4)
という、昭和47年に出版された本を読んだ。
文庫サイズだが厚さがかなり(約600ページ)ある。

概要

法隆寺は聖徳太子に祟られないようにするために建てられた、という話。
キリスト教が裏に、という話ではない。
罪の意識、「十字架を背負う」の十字架の話。

神社と仏閣は敗者を祀る

この視点、とても納得できた。
確かに、負けた側を祀っている神社や仏閣がある。
敗者側から祟られないように祀るという感覚、たしかに理解できる。
そんな事例を並べた上で、聖徳太子のための法隆寺という意味が書かれる。

陰謀論

聖徳太子はなぜ祟るような存在になったのか?
力があったため、恨みを持っていれば祟り神になると思われていた。
では、何を恨むのか?
聖徳太子の子孫は蘇我入鹿によって滅ぼされている。
蘇我入鹿は藤原氏の始祖によって討伐されている。
入鹿を誑かして聖徳太子の系統を滅ぼし、入鹿も滅ぼす。
蘇我を弱体化し、聖徳太子の敵討ちという箔をつけて、有力者になった者が居る、という話。

陰謀論の補強

法隆寺を建てるだけの力は誰が持っているのか。
法隆寺への寄付等は誰がしているのか。
病に倒れるなどの不幸が藤原氏に起きると、法隆寺への寄付がされたという事例を並べている。

霊を閉じ込める

法隆寺の間取りは偶数が基準となっている。
法隆寺は修学旅行を含めて2回しか行ってないので、気づかなかった。
いや、そんな視点で見ないよね…
偶数だと、入り口を真ん中に作れない。
柱と柱の間に壁を設置する構造の場合、壁4枚なら柱が5本。
中央に柱が来る。
法隆寺の中門の幅は4間、左右に仁王像で内側2つが通路。
このため、真ん中に柱がある門となっている。
東大寺の南大門は5間で左右に仁王像で内側3つが通路。
これも柱で通路が区切られているが、中央は通れる。
外に出ていかないように意識した間取りで作られている、らしい。

特殊な仏像

法隆寺の仏像は内刳りで、光背を止めるために頭に釘を刺していたらしい。
仏像としては珍しい構成なんだとか。
特に、頭に釘を打つなんてとんでもない。
仏像の中身を空にする、頭に釘を打つ、これらには悪意が込められている、のような事が書かれていた。
そんな仏像をまともな精神状態で作れるのか?
というところからの著者の考えも共感できた。

私は、異常にすぐれた芸術は、やはり異常な精神によってしかつくられないと思う。

隠された十字架 法隆寺論 541ページ

専門外からの視点

著者は専門家ではないから別の視点からも見れる、というような表現もあった。
例えば、美術の専門家が見ると仏像の美術的な価値のみを見てしまいがちで、人型の頭に釘を打つのは当時の常識的にどうなのかという視点が出てこない。
そういえば「キリンの斑論争と寺田寅彦」という、物理学者からの論文に生物学者が反論して論争になった事例について書かれた本もある。
今は分子発生学という新しい分野に進んでいるとかなんとか。
案外、外からの視点の方が新しい事を見つけれるのかもしれない。

感想

気分転換に読むには分量が少しきつかった。
資料の引用部分などは結構斜め読みで進めた。
(当時、聖徳太子の時代の資料=古文なので読むのが辛い)
暇になったらもう一度読み直してみよう。
説得力を出すための資料の提示、それをどう受け取るのか、という文章の書き方は、日常的に使えそう。
学校で習った古文はかなり忘れてしまっているなと思いつつも、気合を入れれば読めなくはない、気がした。

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