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200822(Sat) UNISON SQUARE GARDEN『LIVE [in the] HOUSE 2』

バンドが生きるためのルーティン

ロックバンドUNISON SQUARE GARDENが、2回目の無観客配信ライブを決行した。“普通のライブなら絶対にできないこと”をふんだんに盛り込んだ初回のそれは、ステージはもちろんグッズに至るまで、この状況を物好きたちと楽しむべく準備の為された素晴らしいライブだった。
そして今回。全体的な感想をまず話しておくと、普段ロックバンドがどう生きているかを知ったということだ。常日頃、バンドとは同じ時代に生きながら絶対に捕らえる事ができない雲の上の存在と考えている。が、今回のキーであろう「様々なシチュエーションで演奏する姿」を目にして、彼らの世界でも夕陽が沈みまた朝陽が昇っているのだと、そんな当たり前の事を思った。変わりゆく日々を確かに音楽と生きるロックバンドを、目撃してほしい。


まず目に飛び込んだのは20:02を示したデジタル時計。耳が音を捕らえるとそこには、トライアングル状に向き合い<マスターボリューム>を演奏する3人が。すぐさまMVさながらのカメラワークに気づき高揚した物好きも多かった。早くも配信ならではの演出が物を言うが、3人はそのカメラに背を向けたままだ。画面の中ではライブがスタートしているが、ステージ上はスタジオで音を出している状態に似て、やや緊張感に包まれている。その様子を静観しつつ、バンドがこちらを振り返るのを待つ。

宏介さん(Vo&Gt)「UNISON SQUARE GARDENです。今日もMCなし!」と放ち、ついにバンドはスタジオから飛び出す。その1曲目<フライデイノベルス>田淵さん(Ba)がみるみるにんまり顔になるものだから、こちらもほころぶ。【待ってる時間は辛くないけれど 冷静さは保ってらんない】。バンドもデカい音を共有するのを楽しみにしてくれているのだと、しみじみ実感。
さて、前回の投票式セットリストの続編となる2回目の楽曲たちは、ランキング31位~70位の結果が反映されており実に新旧入り乱れたラインナップ。『CIDER ROAD』を人に借りたきっかけで出会っているため<like coffeeのおまじない>にて「おー!」と声が上がる。<サンポサキマイライフ>も当時の自分に「また!?」と言いたくなるほどリピートしていたので、このエリアはとっておきだった。<23:25>では冒頭に顔を出したデジタル時計が「23:25」表示で映し出され、画面端のリアルタイムを思わず確認してしまう。配信側の思惑にまんまとかかり「おぅ…」と声がもれる。


そんなイタズラも含みながらひとしきり暴れた後、会場は暗転しライブタイトル『LIVE [in the] HOUSE』を感じられる展開へと進む。宏介さんはアコギを手にし、あろうことか田淵さんも着席。いつの間に灯されたキャンドルは静かに揺れ、ルームライトのよう。先ほどまでライブハウスにいた3人が、急にリビングに現れたような錯覚に陥る。かつてないほどしっとりとしたムードの中、<ぼくたちのしっぱい>がすべての人々に寄り添うようで沁みた。この瞬間ばかりは画面の向こうではなく同じ空間にいてくれた気がした。「家で生きること」は大切なルーティン。同時にバンド・音楽の在る世界が、自分にとって心強いという事実を改めて思い知った。


バンドが活きる場所はどこだ

宏介さんがルームライトを吹き消すと、貴雄さん(Dr)のドラムソロからアグレッシブなセッションになだれ込み、瞬く間にライブハウスへ舞い戻る。<何かが変わりそう>~<Catch up, latency>まで、斜に構えていた配信ライブという世界に希望を見出し、喜々として騒ぎ散らかす姿が輝かしい。特に田淵さんが床に寝そべった<crazy birthday>である。初回のラストで宏介さんが高音を思うように発せず、「次はもっとかっこいいUNISON SQUARE GARDENを!」と話したのを憶えているだろうか。それを貫いてここまで必死に歌ってきた彼を本気で笑わせにいったあの絵面が、不本意ながらいちばん記憶に残ってしまった笑。


本編ラストは<オーケストラを観にいこう>。UNISON SQUARE GARDENは生きているし、今後も盛大にやるぞ!という意気込みを感じるファンファーレの直後、画面上に次回配信ライブ『fun time HOLIDAY ONLINE』の発表がされた。オーケストラではなく、これを観に来いということか!情報を咀嚼している途中「おまけ!」の一言が飛び<Phantom Joke>イントロが流れる。うれしいお知らせの反面、これほどまでに重い曲を選んだ理由を考える。

『fun time HOLIDAY』は、ワンマンライブとは違ったロックバンドの楽しみ方を提唱するために彼らが行っている対バンイベントだ。現時点では詳細未定だが、無観客とは言え今より多くの人が動くことを考えると、対策がより厳重になることも予想される。特に東京では第2波と称する報道が未だに続いている。そんな中でこのイベントを発表・決行することは正解か否か。しかしやらねば進めぬ。バンドは、やはりステージで息をしてこそ生活が成り立つ。ロックバンドの楽しさを全身全霊かけて体現してきた3人が、次回は強力な仲間を携えてこの禍をロックで制しに行く。【悲しくちゃ 終われない】。演奏からあふれ出る気迫に、バンドの大いなる決意を見た。

■ライブタイトル『LIVE [in the] HOUSE 2』
■日時:2020年8月22日(土)
■会場:in the HOUSE
■SET LIST
1.マスターボリューム
2.MIDNIGHT JUNGLE
3.fake town baby
4.フライデイノベルス
5.ライトフライト
6.サンポサキマイライフ
7.like coffeeのおまじない
8.23:25
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~アコースティックリビングスタイル~
9.ぼくたちのしっぱい
10.チャイルドフットスーパーノヴァ
11.未完成デイジー
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12.マイノリティ・リポート
13.何かが変わりそう
14.10% roll, 10% romance
15.Catch up, latency
16.crazy birthday
17.オーケストラを観にいこう
―おまけ―
1. Phantom Joke


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